きまぐれをジェット気流に乗せて。...菱安

 

 

空に還る - 2002年02月24日(日)

何故そんなことを言い出したのか
その真意を掴み損ねて
混乱している
かの人はかのひと
もしかしたら空に還りたいのだろうか
ほんとうに泣きたいのはさ
表面張力ギリギリで何とか踏みとどまる
感情はときに空気を伝染するのです
いつでも笑うしかなかった
笑う術しか知らなかったから
でも、真摯な何かは決して笑いなんかじゃない
瞳の中に翳りが降りて
その声に身を委ねて
可能な限りの自己の時間を雪ぎ込む
別れ際、やっぱり俺は笑った
泣き笑いではあったけど
だって空に還るでしょう?
誰ひとりとなく。


...

この夜を抜けたら - 2002年02月18日(月)

まったく頭にくるぜ
その臭い息で俺の一線を超えさせる気かアンタ
一目でそれとわかるその抜け落ちた歯で
いちまい噛んでるおまえもおれも
大差無い 屑野郎だとしてもだ
おまえらと括られるのはごめんこうむりたいさ
遅咲きの春と狂乱視する白い雪が舞う
人気の絶えたガードの下で
チラシ山積みで片付ける気など失せた
机を椅子ごと蹴倒す
知ったことか!ボケ
飽き足らずメットを叩きつける、そしてバイザーが弾け飛ぶ。
お陰で帰りは寒さで眼を開けてられない。
追いかけてくる猟奇も気概もない
屍の群れ踏み潰し、しかし酷いもんだ、まったくよぅ
なんて素敵な今日だろう!すばらしい!!
埠頭を抜けて 朝日を見に行こう
この夜を抜けたら
いったい何がこの俺を縛るだろう
この先はいったいどうなってるんだろうとか
今はどうでもいい
追いすがるすべてを無に還すべきなのか
下がればきっとそこには自分の影を踏むしかないから
真紅に煌く、ざわめく心そのままに
振り絞れ



...

悲しみの恋人たち - 2002年02月16日(土)

街路樹の下でうずくまる
白い塊を眼の端で捉えた夕べに
吐く息は紫で
もげかけた腕でパンを握り締めていた男と
視線があった
霧の深いこの街で湿渡る空気とガスが
すべての光りを呑み込み
冷たいアスファルトに座りこむのは
しかし一瞬の躊躇いの後
俺はそうしていた
「この街は好きかい?」俺は彼に話しかけた。
2人視線は彼方で宙を泳ぐも何故か同じに思える。
微かに男の唇が動く気配がしたが
結局の所、どうすることも叶わぬ事を知るだけだった。
好きだっただろうよ。少なくとも彼女が生きていた頃は。
暫くして重い腰をあげてふたりにさよならを告げる。
死んでこの世界を恨むのだろうか?
僕らのつくりあげたこの世界を。
ふと残されたのは、実は取り残されたのは僕のほうだったのだろうかと。
身震いをして振り払う孤独の影、消えることなく。
眩暈のように細い太陽はきっと
何も答えてはくれないし、
探すのに疲れても、歩くしかない。
何処にも無いものを
この手でここに創りあげるために。
そして限りなく残酷になるのさ。
優しい手は本当はいつもその裏側にあるのだから。
断って置くが唯一のスペシャルのためだけに、だ。
僕の”イエス”は、思うほどに広くはなく、
狭窄と混沌に満ちているのだから。
気まぐれほどには、恐らく不確実だよ。





...

円を描く時 - 2002年02月05日(火)

瞳の奥に揺らめく深淵に
気付いちまった
おまえは誰だって言われた気がした
いつだってケツを捲くれるぜ
そう嘯いて来たけど
今度ばかりはそう言う訳にも行かない
高く、高く、舞い上がって
綺麗な円を描きながら
壊れた君の心に
雪の様に降り立つ
いつだって本当は
ただ降り積もればいいって
子供みたいに無邪気に
真紅に染まった庭で佇んでいたいのに
今、目の前に広がるのは
口一杯に広がったこの想いと共にある
遥かなる時の放浪者の群れ
ねぇ俺の姿は
どう映ってるの?
笑ってないで教えてくれよ


...



 

 

 

 

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