2008年02月29日(金)
 


わたしはまた
泣くんだろう





↑エンピツ投票ボタン
2008年02月27日(水)
 

わたしからぽとりと影が落ちる
その影は途方もなく深く
大きいもののように思うけれど

それは空を覆う雲より遥かに狭く
何もかも飲み込むような深海より
ずっとずっと浅い

こんなちっぽけな影に飲み込まれて
わたしは息もできなくなるような
そんな錯覚ばかりしている

暗い影の中は自分を守るのにちょうどいい温度で
目の前にいる君が泣いていることにすら
気付かずに





↑エンピツ投票ボタン
2008年02月20日(水)
 



トイレの隅で
小さいクモが丸まっていた
外はまだ寒い
そんなに急がず
眠っておいで

急がずとも
地面の奥深く
小さく呼吸をしながら
自分の出番を待っている

次の命をめいっぱい抱いて
春はもうすぐやってくる





↑エンピツ投票ボタン
2008年02月18日(月)
 

ホクホクのじゃがいもを潰して
マヨネーズとクレソンを混ぜて
こんがり焼けたデニッシュと一緒に
美味しくご飯を食べられる幸せ

食卓の上で
パンと一緒に夢は膨らむ
甘くなりすぎたら
苦めの珈琲で目を覚ます

お休み前の深夜は
DVDをレンタルして
少しくらい夜更かしをしよう
朝寝坊をしたって
怒るのはお水待ちの鉢植えくらい

ベッドの上で
睡魔と一緒に夢は膨らむ
きみと一緒だから夢が膨らむ
明日の朝食のことと
DVDの返却期限のことを考えながら
なんでもない一日を抱っこして眠る幸せ

今日はいっしょに
おやすみなさい





↑エンピツ投票ボタン
2008年02月12日(火) くるみ
 

自分を守るための殻が
いつの間にか分厚くなりすぎて
何をするにも息苦しい

両手を伸ばしたくても
握りこぶしを作っただけで
息切れする

胡桃みたいに
誰かが割ってくれるわけでもなく
つま先と指先をほんの少しずつ押し上げて
隙間から入ってくる空気を吸う

外の世界は
冷たくて
悲しくて
痛くて
たぶん、わたしはまた泣くだろうけど

少しずつ全身を広げていく
体中の関節が痛くて
ギシリと軋むそこに冬の風がしみこんだ
やっぱり、わたしは泣く
産声のように何度でも





↑エンピツ投票ボタン
2008年02月11日(月)
 

きみが口ずさむと
ただの鼻歌も
体中に響くメロディーになる

まるで魔法のようだよ

きみが好きだと言うのなら
雨も嵐も雷も
めいわくな風だって
心の中に落ちていく

まるで魔法のようだよ

七色に光る指先でかけられた魔法は
タネも仕掛けもなく
ある日ふつりと有効期限を終える

あの日々は
きみがくれた
魔法のようだった





↑エンピツ投票ボタン
2008年02月10日(日)
 

冷たいガラスに頬をくっつけて
白く染まっていくいつもの景色を
眺めている

大粒の雪は
アスファルトに落ちて
す、と消える

ふと雪の降る音を想像してみる
ふわふわでもなく
さらさらでもない
ぽてりぽてりがいい感じ

寒い朝に
ぽてりぽてり
雪が降る
昼には屋根を打つ音が雨になった

ニュースでそちらにも雪が降ったと聞きました
明日はきっと晴れるよ





↑エンピツ投票ボタン
2008年02月09日(土)
 

自分を残して世界が早送りをはじめる
テレビのなかのニュースを読み上げるアナウンサーの口調も
ご飯の用意をするお母さんも
黒板の内容を書き写す鉛筆の音も
わたしの手の動きも
いつもより少しだけ早い

世界がわたしの意識だけ置き去りにして
早送りをはじめる
時計の音も
雨の音も
そしてふつりと途切れて
いつの間にか元の早さへともどっている

早送りされる瞬間は少なくなり
元の早さに戻るまでの時間も少なくなって

いつからか
世界は早送りをされなくなった
いつもと同じはやさで
なにもかもが正確に進んでいく

あの早送りはなんだったんだろうとふと思う
小さいころのわたしの妄想が激しかった所為なのか
それともわたしは成長することが怖かったのか


いつからか誰にも早送りされることなく
いつだって正確に時間は進んでいく
わたしを連れて容赦なく





↑エンピツ投票ボタン
2008年02月07日(木)
 

小さいころ
暗闇の中には何かがいるようで
電気を消すと暗闇を見ないように慌てて目を閉じた

まぶたの向こう側で
濃くまったりとした闇が
わたしを触っていく
目を開こうとまぶたの上でまどろむ

怖くなって
布団の中で目を開けた
大きく何度か息を吸って
ふたたび目を閉じて
ようやく眠りがわたしの手を引いていく


夜、寝る前にぼんやりと天井を眺める
もうあのどろりと濁った闇は存在しない
わたしはどんどん鈍くなっていく
身体中すべてに触れるものに鈍くなって
おとなになっていく





↑エンピツ投票ボタン

my追加
いつも読みに来てくれてありがとう。
※マイエンピツは告知しないに設定しています。