NORI-☆
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不自由な自由 -自由研究への道- (2)
「テーマ自由」と言われて、 じゃあ何でもいいんじゃん、ラッキー♪ と考えられる人は幸せである。 実際に提出したときの見てくれや評価を考えると、そうそうは自由になれないのが「自由研究」の不自由である。 そこにさらに「独創性」と「独自性」を求めつつ、実現可能な技術レベルということを考え合わせると、悩みは一層深くなる。 …悩んでいるのは、宿題主体のサトシでは、もちろんない。 要するにママが見栄っ張りで目立ちたがりやなだけなのだが。 良識ある自然体人間パパは、 「サトシが心をこめて1枚絵を描いて、それを額縁みたいにきれいに作ってあげたらいいんじゃない?」 と、サトシの画力を大きく評価して泰然としている。 しかし、絵なら絵日記を各人2枚ずつ提出するわけだから、それ以外に「自由研究」として絵を提出するとなれば、例えば面白い画材を使うとか、テーマに添った連作であるとか、調べ物と連動しているとか、動くとか何か仕掛けがあるとか、ついつい+α、奇をてらったことを、ママは考える。 すると、アイディアは面白いがスキルが及ばなくなる。 夏休み後半のママの頭の中は、この堂堂巡りだった。 サトシらしさとは何か? サトシならではとは何か? サトシが他の子供より勝っているものは何か? それはもちろん、「のりもの博士」であること。 どう考えてもそれしかない。 だとすれば、それをどう作品に反映させるか? 今年の夏休み旅行が、3年前に行った「立山・黒部アルペンルートとトロッコ列車の旅」だったなら、中央線特急「あずさ」から始まって、バス-トロリーバス-ケーブルカー-ロープウェイ-高原バス、黒部峡谷トロッコ列車と7種類の乗り物の乗り継ぎと黒部ダムのことだけで、立派な旅日記になっただろう。 のりもの博士の作品として実に申し分なかったのに! 小学校に上がってから行けばよかったと思っても後の祭りだ。 一方、今年の北海道旅行は、往復飛行機で当地での長い移動は観光バスのみ、気球と馬と遊覧船には乗ったけれど、天候いまいちで写真の映りもよくないし、本人的にも乗り物としての入れ込み度はいまいちだ。 うーむ…材料不足。。。 夏休み期間に開催されていた「大恐竜博」に行って、最大の恐竜・セイスモサウルスを見てきたので、直後には結構親子してにわか恐竜ファンになったけれど、とうてい恐竜をテーマにできるほどの知識も思い入れもない。 詳しい子はほんとに詳しいものね。 サトシが電車の型式を諳んじるのと同じ感じで、なんとかザウルスはジュラ紀後期で大きさはなになにザウルスより大きい…とかスラスラ出てくる子はざらにいるし。 それと張り合ってにわか恐竜ファンにできることはあまりない。 …ン?では、乗り物に恐竜を引っかけたらどうだろう? セイスモサウルスの首と大型はしご車はどっちが高くに届く? ステゴザウルスとオフロードダンプトラックはどっちが大きい? プテラノドンとセスナ機はどっちが速い? これって、面白いかも知れない!…と思っ立って、まずはお手軽にネット検索で恐竜のデータを調べてみたりする。 すると意外や、恐竜については分類や名称、推定サイズ等、いろいろな考え方があって、一口に「最大の恐竜」といっても、何を指すのか、体長何メートルなのか、簡単には決められないのである! うーーむ。さすがに地球40億年の歴史は奥が深い。 とてもにわかファン(しかも動機が不純)には立ち入れない世界だ。 そんなわけで、泣く泣く(というか這う這うの体で)恐竜テーマはあきらめたものの、そのとき思い描いた作品スタイルに、ちょっとひらめくものがあった。 ママの「恐竜VS乗り物」研究の作品構想とは、代表的な恐竜たちを立体で作って、同縮尺で作った電車や車や飛行機の模型と並べて比較したらどうよ? というものだったのである。 …模型を作る。 並べて飾る… つまりジオラマである。 そうだ、ジオラマだっ!! なぜそれを思いつかなかったんだろう。 今、サトシが一番夢中になっているもの、 わざわざ調べなくても、サトシが一番よく知っているもの。 ママが手伝わなくても、サトシが楽しみながら作れるもの。 そして、多分他の子供はあまり選ばないだろうテーマ。。。 「サト、自由研究、空港作ろうか?」 「くうこう?」 「そう。大きな箱で滑走路とスポット作って、模型の飛行機を並べるの」 「うん、つくるつくるっ!」 丁度パパの元に新しいPCが届いたばかりで、大型の空き箱や発泡スチロールなど、工作材料はふんだんにある。 平たい箱をグレーに塗って、滑走路と駐機スポットを作り、その上に、紙粘土で作った飛行機を並べて飾る。 管制塔などの建物も箱で作れれば完璧だ! 母子は勇んで買い物にでかけ、駅前の文房具やで紙粘土とアクリル絵の具セットと筆を買い込んだ。 折りしも夏休み最後の1週間、慌てて自由研究に取り掛かる仲間たち(とほほ)のために、各種の工作キットや材料を集めたコーナーができていた。 工作用紙と色紙を手に行きつ戻りつしているお母さん、貯金箱作りキットをためつすがめつしている親子、追い込み仲間のみんな、がんばろねっ! 紙粘土は、売り切れ寸前、間に合ってよかった〜 さて、ともあれ材料は手に入った。 ここまでくれば、もう勝ったも同然(何に勝つんだ?) やるぜ、ベイビィ♪ ≪まだつづく≫
2002年08月25日(日)
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不自由な自由 -自由研究への道- (1)
サトシ@一年生のはじめての夏休みの宿題は、 ○ 絵日記 … 二日分 ○ 朝顔の観察 … 画用紙1枚の観察記録用紙に、 「全体のようす」と「花」「実」「種」の それぞれの観察を文や絵で自由に書く ○ 読書カード … 本を読み題名と5行程度のコメントを書く(5冊以上) ○ 自由研究 ○ 夏休みのまとめ … 夏休みのはじめに「やりたいこと」「がんばること」 などの目標を終わりに「こんなことができた、 がんばった」などまとめを書く 夏休みの思い出ベスト3(10センチ角程度に絵や文で) 親からのコメント等。 それぞれの記述欄が1枚の画用紙の裏表に印刷されている。 この内容を楽勝とみるか、困難とみるかは意見の分かれるところだが、とりあえず最低こなさなければならない作業量としては、多くはない。 少なくとも、絵日記は、絵の得意なサトシとしては楽勝。 朝顔の観察も、毎日記録するのではなく、ポイント記録なのでよし。 読書…は、ちょっと気をつけて仕向けないとかな…でもまあ、40日で5冊なら(最低ラインだけど)大丈夫かな。 夏休みのまとめは、要するにまとめだから、最初と最後の日に親子で話し合って、まとめればいいよね。 ということで、だいたい見当をつけた。 問題は「自由研究」である。 「自由」研究なのだから、基本的には何をやっても「自由」、何か一つテーマを決めて自分なりに取り組めばいいということなのだが、自由ってやつは実はとても不自由なものである。 学校でもらってきた「自由研究のヒント」を見ると空き箱を利用した箱庭や空き瓶と紙粘土で作る鉛筆立て、押し花や昆虫採集、旅先で集めた石の標本など、いろいろな作品例が、具体的な材料や加工の仕方、親が手伝うポイントまで紹介されている。 読み書きを習い始めたばかりの一年生では、調べものをしてレポートを書くようなスキルはまだないので、「研究」というけれど、実質は「工作」なのである。 その製作過程で、工夫したり気付いたりすることがあれば、それで立派な「研究」になるということなのだろう。 (自然採集系は、たとえば親の郷里(いなかってやつだ)に半月も滞在して山や林で遊ぶような夏休みなら可能だろうが、東京生まれの共働き両親の家庭では無理なので却下) そんなわけで、工作作品、である。 サトシといえば、空き箱工作など日常的に作って始末に困るほどなので、楽勝といえば楽勝なのだが、そこはやはり「夏休みの自由研究」である。 普段思いつきでパッパと作るような、切りっぱなし、セロテープベタベタ、空き箱の絵柄そのままだけど形だけはそれらしい「見立て」ものではなく、(いや、それはそれでひらめきに満ちた立派な作品ではあるが)それなりに「作品」として完成度や達成感のあるものでなければ、と母は思うのだった。 では、何を作るか? 自慢じゃないが、私は工作も手芸もけっこう得意なので、このヒント集に載っているようなものを指導してサトシに作らせるのは、さほど難しいことではないような気がする。 ……しかし!それではつまらない。 ここに載ってるものそのまま作ってもしょうがないじゃない? まあ、1年生の工作スキルには限りがあるので、方向性としてはこのヒント集のどれかに拠っても構わないけど、まんまじゃ面白くないよね。 ヒント集のどれかをベースにして、ひとひねりした企画で、見る人をあっと言わせたい。 せっかくなら「サトシならでは」のものを作って欲しい。 普段サトシが興味を持っている事柄の中から、工作作品に昇華できるテーマをみつけ、具体化する。。。 …なんか仕事の企画を考えているような気分になってくる。 そのとき、サトシが学校から持ち帰った一枚の印刷物。 『夏休みに作って応募してみよう -作品募集一覧-』企業や団体が募集するキャンペーンポスターやら標語やら「夢の○○」アイディアコンテストやらの募集要件をリストアップしたものが10件くらい並んでいる。 「ママ、これ作りたい!『アイディア貯金箱』」 「どんな貯金箱作りたいの?」 「トラック貯金箱。お金入れると走るの、おもしろいでしょ?」 「なるほど…」 トラック型ということは、タイヤをつけた箱がベースで、お金を入れると走るということは、モーターと電池を入れて、お金を入れたときにスイッチが入るメカを考えればいいのかな…コインが入るたびに走るならシーソーみたいな受け皿とスイッチ、いっぱい貯まったとき、コインの重さに反応してスイッチが入るなら、底を二重にしてスプリングで支えて……… ざっと基本的なしくみを考えてみて、いけそうなら、パパに電気系の実制作をやってもらって、(パパはMYハンダゴテを持っている電気系工作の達人である)トラックの外側をサトとママが作ればいいかな。 いいじゃんいいじゃん♪乗り物テーマはいかにもサトだし。 よし、それ作ろう! ママの企画はすっかりサトシの初期発想からは乖離していたのだが、 この時点ではお互いにそのことに気付いていなかった。 しかし、この発想レベルの食い違いが尾を引いて、 自由研究制作は、のちに泥沼の展開となるのだった。。。。 サトシは思いついたらすぐにも作りたいと言う。 しかし、そんなメカを内蔵するならそれなりに、設計図を引いて、作業手順を考えて、じっくりやらなきゃ。 モーターだの銅線だのバルサ板だの、材料を調達しなければ! しかし、サトシは単に「トラック型の貯金箱」という思いつきをその場ですぐ形にしてみたかっただけで、材料も空き箱かなんかでよかったわけだし、 お金を入れると走るというのも、自分が手で押して走らせるくらいのことで満足だったみたいである。 さらにいえば、コンテストに応募するだの夏休みの自由研究にするだの、そういう打算も何もなかったのである。 ……… 結局、ママのメカ構想は、パパの 「そんな複雑なもの、サトシの工作には向かないよ」 という一言で敢えなく却下され、 サトシの一瞬のひらめきも、すぐ形にすることを阻まれたために、いつしか忙しい頭から抜け落ちてしまったようだった。 ≪つづく≫
2002年08月20日(火)
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