委員長の日記
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2002年07月30日(火) あとむのみなさんに会ってきました!

怒涛のように過ぎた総会…やっと無事に(?)終わったと思ったらもう巷では夏休み、今年も恒例の大阪行きの時期がやってきました。
恒例…といっても皆さんにはお分かりにならないでしょうが、4年前に42歳で亡くなった友人のご主人(彼はアマチュアとはいえ、プロも一目おくほどの素晴らしいギタリストだったのです)の追悼コンサートを毎年親しかった音楽仲間が開いていて、私も奥さんであるピアニストの友人と連弾をするために毎回参加させてもらっているのです。
そんなわけで、この3年間、私の夏休みはいつも、大阪行きで始まります。
昨年は、早朝広島を発ち、私の運転する小さな軽自動車に二人の息子を乗せて、えんやこら6時間かけて到着するとすぐにリハーサル、続いて本番…というハードスケジュールだったため、思うような演奏ができなかったので、今年は前日から大阪に入り、ちゃんと練習してから本番に臨むことにしました。
そんな大阪行きを2日後に控えて、いつものように事務所に顔を出した私に、「劇団あとむ」からのお便りが目に入りました。
5月の「あとむのお話コンサート」のお礼状とともに、劇団の広報誌「風の便り」が同封されており、7月8月の劇団のスケジュールも掲載されていました。
なにげなくその日程を見ていると『7月27日(土)笠置児童館』という予定があることに気がついたのです。
笠置…といってもあまりご存知の方はいないでしょうが、京都府の南の端、奈良県との県境に近く、三重県にも近いという山の中で、いわゆる京都というイメージではなく、はっきりいって田舎なのですが、(笠木の皆さんごめんなさい)大阪で育った私にとっては、父親の職場が近くにあり、何度も川遊びや山登りに出かけたことのある、思いで深い地名だったのです。
27日といえば大阪に行こうと思っていた日です、思わず東京のあとむの事務所に電話して、『何時からですか?会場近くの地図はありますか?』と問い合わせていました。
電話に出てくださった秋山京子さんは「絶対絶対来てくださいね、みんな大喜びしますから!」と言ってくださり、わざわざ会場付近の地図をファクスしてくださったのです。
開演は13:30、大阪まで約5時間、そこから生駒山を越えて1時間…朝7時に出発すれば間に合うかな…と、笠置行きを決めたのでした。
ただ、今回は、10日前に免許を取ったばかりの長男のこれまた2日前に届いたばかりの車での大阪行き…
ちょっぴり不安を抱えながらの出発です。
『私が運転するから…』というのに『僕が運転する』と張り切る息子に押し切られ、はらはらドキドキしながらも何とか無事に大阪へ到着、高速を降りてからは、交代しようね。と言っていたのに、結局最後まで息子がハンドルを握り、途中思わぬ渋滞に巻き込まれ、笠置に着いてからも会場の場所が良くわからずに、間に合わないかも!とあきらめかけたのですが、開演10分前に滑り込みセーフ。
小さな小さな児童館の入り口で待ち構えていてくれた劇団の方に秋山さんの言葉どおり大歓迎で迎えられ、
でもゆっくりお話をする暇もなく、開演。
「今日はゆっくり見て行ってくださいね」と、会場に案内される。「今日はどこからでも良く見えますよ。」と言われたとおり、会場のホール(といっても公民館の研修室くらいのスペース)にこしらえてある、こじんまりとした客席には20人くらいの子どもたちとお母さんが待っていました。
「え〜っ!これだけ?」と内心驚いたのですが、後から聞くと今回の公演は、厚生省の企画で全国の児童館を巡回して回るというものなので、会場によって、子どもたちの人数もさまざまだということ、中には乳幼児ばかり300人近く…というすごい会場もあったそうで、劇団のみなさんも「毎回状況把握ができないんです。」と笑っていました。
さて、公演は…というと、あとむが長年取り組んできた「あとむの時間はアンデルセン」を児童館向けに少し短くして途中に遊びバージョンを組み込んだ「あとむの遊びはアンデルセン」という演目。
さすがに練り上げられている作品だけに、危なげない滑り出し…なのですが、観客の反応がいまいちはっきりしない、開演後もぱらぱらと入ってこられた人も含めて30人近くにはなったのですが、集中して一生懸命見ているわりには、拍手のタイミングや、あとむのみなさんからの声かけに対する子どもたちの反応が、可部では考えられないくらいに物足りない。
「これは、普段、生の舞台に触れていないな…」という私の想像通り、後から聞くと、ほとんどの子どもたちが今回初めて生の舞台に出会ったとのこと、「やっぱりね。」と妙に納得した私でした。
そんなこんなで、最初はお客さんとしてゆっくり見せてもらおう…と思って座っていたのですが、どうしても子どもたちの反応や会場運営が気になり、また、硬いお客様の前ですご〜くテンションをあげて熱演している劇団の皆さんの様子に、思わず身内のような気持ちになってしまい、可部で見るよりももっと肩に力が入ってしまった1時間20分でした。
これから京都・兵庫と7月8月を児童館を巡演されるという劇団のみなさんに、心から「がんばって!」とエールを送って、笠置を後にしたのでした。
そして、普段は劇場主催の舞台にばかり触れていたわたしにとっては、今回の出会いは「すべての子どもたちに生の舞台を届けたい!」という思いで児童演劇に取り組んでこられた「あとむ」のみなさんの原点を改めて感じることができ、また、分かりきっていたはずの、私たちの活動のミッションについても改めて考えることのできた貴重な時間になりました。
そうです、待っている子どもたちは、絶対にいるのです、私たちのできることは限られているかもしれないけれど、一人でもたくさんの子どもたちに、この感動を味わってもらうことができるようにがんばらなくちゃ!


2002年07月20日(土) 2002年(第1年度)通常総会が終了しました!

2002年7月20日(土) 安佐北区民文化センター中会議室において、第1年度通常総会を開催しました。
昨年の発足総会以来、事務局の体制が弱く(事務局長と事務局スタッフの2人体制)…派遣職員のうーぽんに全面的に助けてもらいながら、、決算・予算はもちろん、事業報告などを掲載する総会資料(討議資料)作りも、やっと思いで間に合いました。
詳しい決議事項については、議事録ができあがり次第、お知らせしますが、今日は総会でのエピソードや、劇団えるむの代表、佐藤嘉一さんをお招きして午後から開催した、9月の第5回鑑賞事業「ベッカンコおに」の事前座談会についてお知らせします。

午前9時過ぎから会場準備に集まり、「たくさんの正会員のみなさんが参加してくれますように」という願いをこめて、余分に椅子や机を用意し、前半の司会を受けてくれた亀山のHさんと打ち合わせ。9時30分から受付開始。
まもなく可部南のYさんNさんがやってくる。「おはよう!今日はよろしくね。」「ごめんね、今日は家の用事があってどうしても出席できないので委任状を届けに来たの。」「えっ〜!出席してくれないの?」…とはいえ、委任状を提出していない正会員さんに比べれば、わざわざ会場まで顔を出してくれた二人に感謝。
しばらくすると、劇団えるむの佐藤さんが到着。緊張しながら事務局長のFさんがお客様の席にご案内…と、こんどは支援会員のMさんがわざわざ府中町からオブザーバーとして参加してくださった。
あとは県センターの事務局長がお客様としてきてくれるからね…と林さんに言っていたら、なんと市議会議員のIさんとWさんも来て下さった!
「すご〜い!今日は男性が5人もいるよ。」いつも、女ばかりの総会が今日はちょっと様子が違う。
「お客様の席が足りなくなってしまいました!」「困ったね、仕方がないから県センターの事務局のMさんには、私たちと同じ席に座ってもらおう。」
会員さんの出足はいつものように(?)可部時間…「早く来てよ…、参加者よりもお客様のほうが多くなってしまったらどうするの?」と、内心ドキドキ
ともあれ、予定を約10分過ぎて、総会が開始された。
今回は、今後のことについての話し込みをするために夜と昼に分けて総会を行ったり、決算処理に手間取ったりしたため、前日にやっと会計監査を終了するという、綱渡りのような総会。・
この1週間、何度も「総会延期できませんか?」と、半分べそをかきそうな顔で事務局の二人が訴えるのを「だめ!!間に合うようにみんなで努力するの!」とはっぱをかけながら、本当は自分自身も内心「間に合うのかしら?」と不安になっていた。
が、しかし、人間死ぬ気になったら何でもできる!…じゃないけれど、総会前日にやっと決算の監査がまにあった(ホッ)

議長に飯室のYさん議事録署名人に亀山のUさん・三入のAさんを選出していよいよ総会が始まった。
途中、なかなかみんなの意見が出ないので、お客様の3人に、一言ずつ感想なりご意見なりを述べてもらう。
市議会議員のIさんWさんは以前から“空”の取り組みのときに必ずご連絡を送らせていただいていたので、今回も討議資料を添えてお招きしたところお二方とも出席してくださったのだ。
これまで、劇場は特定の思想宗教や、政治団体に属さないという原則を守るために、ある意味ではかたくなに政治との関わりを避けてきた傾向がある、また、NPO促進法でも、特定の政治団体などを支持することを目的としないという条項があるが、それはあくまでも活動の目的としないということであって、私たちの活動のミッションを理解して下さる人たちを増やしていくためには、これからはさまざまな形での情報発信を試みなければいけないと思う。
また議事の途中で、思わず議長を無視して参加者同士で議論を進めてしまったときに、オブザーバーとして出席してくださった支援会員のMさんから、「これではフリートークですよ、議長がいるのだからきちんと議事を進行していかないと…」というご指摘も頂き、思わずわれに返るという場面もあった。いつも身内ばかりで行っている総会とは違い、いろいろな意味で学ぶことの多かった総会だったと思う。
すべての議事が承認され、9月の「ベッカンコおに」以降の鑑賞事業の成功に向けての決意を新たにしたところで閉会。
続いて、この6ヶ月間、派遣職員として事務局をサポートしてくれたうーぽんに、事務局の二人から感謝の気持ちを込めて花束の贈呈(彼女も言ってくれたが、今後は正会員として、また委員として活動の中でサポートを続けてくれるので、決してお別れの花束ではないのですよ!)
ここで午前の部が終了。


「ベッカンコおに」事前座談会
午後からは、劇団えるむの佐藤嘉一さんを囲んでの事前座談会。
50年という長い間児童演劇に携わってこられた佐藤さんのお話は、演劇へのこだわりと子どもたちへの思いにあふれ、参加者はみんな心を熱くしながらお話を伺った。
まずは、「えるむ」という劇団名の由来から…北海道出身の佐藤さんは若いころから演劇の世界に携わり、東京で活動をされるようになってからも、北海道のアマチュアの人たちの指導に尽力されていたとのことで、そのときのアマチュア出身の人たちが、プロとして演劇を目指していこうと、劇団を立ち上げたのだそうだ。
そのときに、考えた劇団名が「えるむ」…意味は英語でELM=楡の木という意味だそうだ。
北海道出身の若者たちが、自分たちが慣れ親しんだ木の名前をつけよう…と考えたあげくについた名前だそうだが、あえてひらがなで表記したためにこの劇団名が広く浸透するまでには随分時間がかかったそうだ。
余談だが、可部にゆかりの深い人形劇団クラルテさんはフランス語、また“空”でお世話になった劇団コーロさんはエスペラント語…というように、どうも可部は、一度聞いただけでは意味のわからない名前の劇団とご縁があるらしい(?)
続いて、劇団が今年、日中韓合作で取り組まれた「海を渡る妖怪たち」という作品の紹介や、23年間ずっと取り組んでいる「ベッカンコおに」を初めて超えた作品です、と言われる「みすず凛りん」のお話のあと、いよいよ本題の「ベッカンコおに」の話題へ移る。
この作品の舞台美術を担当された、朝倉摂さんが、能・狂言の舞台をイメージさせる、正方形のもシンプルな舞台を作られた理由として、場面場面を具象化してあらわしてしまうと、見る人の中に固定されたイメージができてしまう、よりシンプルな舞台にすることによって、一人一人の中により豊かなイメージが膨らみ、想像することによって創造力が養われていく…というお話は、バーチャルな世界に囲まれ実際は存在しないものをあたかも存在するかのように感じている、今の子どもたちにこそ、この舞台を見て、何もない世界からより豊かな世界を場面を想像して欲しいという私たちの思いに通じるところがあり興味深かった。
 
また、当初は小学生を対象に作品を作っていたのだが、公演を見られた中学の先生から「ぜひ、うちの学校に来て欲しい…」と以来を受け、初めて行った中学校公演で、他の生徒から離れて、木刀を持った先生方に引率され最後に入ってきたツッパリグループの子どもたちが車座になって後ろに座り、最初はまったく関心を示さなかったのに、芝居が進むに連れ、身を乗り出すようにして舞台に集中し、見終わった後には、番長らしき少年が小さな声で「おじさん、おもしろかったよ…」と言ってくれたというエピソードには、私自身も中学校で演奏をしたときに、子どもたちはその子なりの感じ方で、ちゃんと聞いてくれているのに、「態度が悪い!」といきなり怒り出した先生に「子どもたちはちゃんと聞いていました!」と思わずくってかかったことを思い出し、身につまされてしまった。
その後、中学校から高校へ、また大人対象の鑑賞活動でも取り上げられるようになり、佐藤さんの言葉を借りれば「作品がどんどん成長していったのです。」とのこと。つまり、この作品は小学生が見れば小学生なりの中学生は中学生なりの、それぞれの年齢や、自分のおかれている状況によって、さまざまな感じ方や捉え方ができる作品だと言うことだと思う。
また、この作品のテーマが、愛と差別なので、「この世界から、愛と差別がなくなるまでは、この作品を上演し続けていこう。」を合言葉にこれまでの23年間取り組んでこられたことなどを話していただいた。
佐藤さんもおっしゃっていたが、映画と違い、芝居は生ものなので、同じキャストが演じても、毎回決して同じ舞台にはならない
ましてや、作品の質を落とさずに、23年間上演し続けるというのは並大抵の努力ではないことは、誰が考えても分かることだと思う。その間には、小学生のときに「ベッカンコおに」を見て、、大きくなってから芝居がやりたい…と「えるむ」に入団したという
人もいるそうだし、劇場の例会でこの作品を見た子どもが、自分の高校でぜひみんなに見せて欲しいと、先生に掛け合ったというエピソードも聞かせていただいた。
そんなお話を伺ったあと、参加者一人一人が感想や質問を出していったのだが、佐藤さんのお話を伺って、この作品は子どもだけに見てもらうのではなく、地域の多くの大人の人にも見て欲しいというのが、みんなの一致した気持ちになった。
決して面白おかしい舞台ではないけれども、見終わった後に、一人一人の胸に必ず何かが残る作品。そしてそれは子どもたちの成長とともに熟成されていく何かだと思う。
これからの約1ヵ月半、一人でもたくさんの人たちにこの作品に触れてもらえるために、一人一人の声かけはもちろん、さまざまなメディアを利用することも視野に入れながら取り組んでいこう!


委員長