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終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2001年01月31日(水)

渡会宗一郎


いつか見つけた頭蓋骨がまだあるかと思って、樹海に行った。
予想できたことだけれど……迷った。



方角だけ確認して歩いていたら、道に出た。
堀くんと人がちょうどいた。人は車だった。
で、突然僕がヤブから出てきたので、驚かせてしまったらしい。
人の開いた扉が堀くんを跳ね飛ばして、ひどいことになった。
もっとも、堀くんはいつもケガをしているから、
ただでもひどいことになっているのだけれど。



堀くんのケガを見ようとしたのだが、
仕返し、とばかり堀くんが車のフロントガラスに石を投げ、
見事ぐしゃぐしゃにしてしまった。
で、怒った人が堀くんに蹴り返した石が僕の肩にあたった。
骨は折れなかったが……かなりひどい打撲だ。
まあ、思いっきり蹴った石だから、仕方ない。



堀くんは結局、傷をみせずに帰ってしまった。
僕はしばし、どうして自分はこうドジなんだろうと悩んだ。
堀くんは……いつも、怪我をせずにはいられないようだ。
どうしてかはわからないけれど、そうなのだ。
傷を通してしか、誰かと触れあうことができないのだろうか。



フロントガラスのない車に乗って、家に帰った。
……僕は、人といると、すぐに泣く子供のようだ。



(手帳の罫線だけの欄。かりこりと。最後の段落は、やや字が小さめ)




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- 2001年01月30日(火)

渡会 宗一郎


買い物の用事があったので、地下鉄で町に立ち寄った。
電車が込んでいたのか、下りたところで突き飛ばされて
突き飛ばされた拍子にうっかり切符を落として、
落ちた切符を拾おうと体を屈めたところを後ろから押されて、
……こけた。



たまたま叶さんが居合わせたので、
気恥ずかしい思いをした。
が、僕に悪戯できるくらい元気になっていたので、よかった。
渡瀬くんもいた。靴磨きをしていた。
彼がほんとうに、強く元気になってくれることを、
僕は願わずにはいられない。


にしても、眼鏡を買い変えなくては。



(手帳の罫線だけの欄。短いメモ)




ジブリール


どうしても外出すると言い張ったら、
侍従長が妙に機嫌よく許可を出した。
が、最近物騒なので、これを着ていけと、
ピンクのクマのきぐるみを渡された。
仕方がないので着て歩いていたら、妙に子供になつかれた。



樹海で、おろちに会った。
うっかり本当のクマだと思われてナイフを食らった。
が、着ぐるみに刺さっただけで平気だった。
おろちは……悩みが、多い。
錯綜する自らの悩みの中、願いの中、堂堂巡りを繰り返すおろちに
俺に贈ることができたのは、ただ、「おまえは人だ」という
その言葉だけだ。
……俺は滅多に、贈り物はせんのだが。



帰る段になって、侍従長が「帰るとき便利なぼたん」と
言っていたのを押してみた。クマの鼻の先だ。
…………と、着ぐるみの足から火が吹いて、
いきなり、飛んだ。しかも、何やら装置がついていて、
大使館に誘導、直行……直撃した。
二階の窓から、ちょうど侍従長の寝室だったのが、
天罰だったのだろう、と思った。
どうしてうちの連中は。目立たないようにということができんのだ?



ちなみに、俺は怪我一つしなかった。




(日本語練習用のノート。「ち」が「さ」になっている。赤ペンで補正済)



ジブリール


植物園に行った。
普通に……歩いてだ。
緑が見たくなって、温室に入った。
いん、という男がいた。……下の名前はむつかしかった。
いん、は、願いをかなえたのだと言った。
その願いの成就を、壊さぬために、保つために、いるのだと言った。
そのような情熱を水底に燃やした、静謐を持っていた。
守りたいのは、その身を半身とするものなのだとも。
……そのようであるがよい。



剣を交えた。
いんは双剣を使った。
よい腕だった。が、怪我をしていた。
途中でおひらきになった。
俺は脇腹に薄く怪我をしたが、なに、かすり傷だ。
また刃を交わしたいものだ。



(日本語練習ノート。アラブ流に右から左に書いてある。赤ペン、コメントナシ)




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- 2001年01月29日(月)

ジブリール


ほりの見舞いに行こうと思い立った。
……のが、ヘリの中だった。
ヘリを下ろすのも面倒だったので、パラシュートで下りた。
大分ずれて、木にひっかかった。
どうにかしようとあれこれしていたら、落ちた。



うっかり地面に激突するところだったが、
下にいたげいるなる人物のおかげで助かった。
ほりもいた。あと二人、仲のいいのもいた。
パラシュートをやりたいとほりが言うから、やめろと言った。
げいるにはいつか恩を返さねばならん。
仲のいい二人組みは、骨を入れていた。
いろいろ話していると、帰れの合図がきた。



帰ろうというところに、迎えがきた。
目立つなと言っておいたせいか、地下からだった。
…………後始末は、誰がするのだ?



(日本語練習用ノート。「し」の字の向きは直っている)。




佐谷充彦



起きた。
紗羅がいた。
……どうして、おれがまだいる。


――どうして、おれが、まだ、いる?



(なにかの紙片)





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- 2001年01月28日(日)

ジブリール


植物園で例によって羽を伸ばしていたら、
ゆめじという子供が来た。
発明が好きとみえて、時計にいろいろついていた。
独り、なのだと言った。
友人が陰口をきいていたのだとも。
……ならば、聞けばよいのだ。
俺には、簡単なことなのだが、な。
そうでもない人間もいるのだということは、知っているが。


そうこうしているうちに、またヘリで迎えが来た。
目立つからやめいと言うのだ。



(日本語練習用ノート。「し」が反対方向に跳ね、赤ペンで直されてる)




佐谷充彦


酒場、で、起きた。
紗羅がいた。……酒、かけられた。
ポッキー、鼻の穴に突っ込まれた。
しかもその現場を、ヘンなヤツに盗撮された。
トンカチで殴ってやろうと、追いかけたら、紗羅が邪魔した。
俺が、怯えている、と、言う。そんなこと、知らない。
殺してくれと言ったのに、殺してくれなかった。
生きることなんて、知らない。



(学生手帳の、端っこ。誰も読まないようにと、小さな字)




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- 2001年01月27日(土)

渡会 宗一郎


酒場に行くと、古庄さんと広瀬くんと
いつか会った関西弁の少年がいた。
古庄さんはすぐに用事とかで出て行った。
風邪を引いているので体にいいという生姜を
コーヒーに入れて飲んでいたら、関西弁の少年が
一口というのでカップを渡した。
が、どうも、まずかったらしい。
背中に哀愁を漂わせて出て行ってしまった。
……悪いことをしただろうか。



ケチャップをトッピングしたタコヤキを食べつつ
しばらく広瀬くんと話していると、
スキンヘッドの少年が入ってきた。
なんだかよくわからないうちに鳩尾に膝蹴りを
もらってしまったが、どうも、憎めない少年だった。
もし人間が天国を見つけたら、どうすることも
できず、呆然と見つめるものなのかもしれない。
そんなふうに、なにかを、遠くから見ているように、思えた。
僕は彼に、問いを一つ、
「どうしたいのですか」という問いを一つ、贈り。



それから、『果てしない物語』の話をした。
僕の贈る問いは、いつもあまりにも抽象的なものだから、
その物語をすることで、少しでも伝わるだろうかと。
その意味を、少しでも伝えたいと、思ったので。
人間が、本当に望めることは、少ないのだと。――そう。
望みを持つことでしか、人間は自由になれない。
一つのものを選び取ることでしか、全ては手に入らない。
――出口は、見つからない。

僕の言葉は、伝わっただろうか。



(手帳の罫線だけの欄に、走り書き。電車の揺れのせいで、字、所々乱れ)




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- 2001年01月26日(金)

ジブリール


大使館を抜け出して植物園に羽を伸ばしに行って来た。
久々に思う存分剣を振るっていたら、
なつみ、という八尋を思わせる男と会った。
目が悪いようだった。体の具合も悪いようだった。
どうしてかわからないのに砂漠を懐かしいと言うのはなぜなのか。
あらゆる言葉の端々に不安と後悔が滲んで見えるのはなぜなのか。
……さあれ、欠けることなき真実は、神のみぞ知り給う。



そうこうしているうちに、まき、という少年が来た。
俺がおばきゅう、に似ているというからどんなだと聞いたら、
白くて毛が三本でタラコ唇なのだと言った。
でも、よく聞いたら、やっぱり似ていないと言った。
……俺もそう思う。
とのさまことばというのがわからなくてあれこれ聞いた。
面白いと言われた……ところで、迎えが来た。
なにも輸送用のヘリで町の上空を低空飛行してまで
すっ飛んで来なくてもいいものを……。
仕方がないので戻る。以上。



(日本語練習用のノートに書いてある。いささか漢字に怪しいとこあり)




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