ねっとりとまとわりつくような水分を多く含んだ熱風が 灼熱の太陽の日差しと一緒に私の体を包む。
流れ落ちる汗が熱くなった肌にひんやりと感じ、 肌より冷たい汗を不思議に思う。
今年もまた暑い夏がきた。 あの人のいない2回目の夏。
外からはミンミンゼミの大合唱が聞こえてくる。 暑くてぼんやりとした頭の中にわんわんと響く。 学校から戻ると床にひいたゴザの冷たさを追い求め ごろごろと転がり位置を変える。 あまりにも暑くて暑くて目を開けているのもいやになり目を閉じると せみの声がより大きくぐわんぐわんと頭に響いてくる。
ふと冷たい風を感じて目を覚ますと 外から聞こえるのはいつの間にかヒグラシの鳴き声に変わっていた。
「起きた?あっちーねー」 洗濯物をたたみながら汗だくのあの人が笑顔で私を見る。 「あっちーー」そう答えてだらだらと体を起こす。 「ほら見て。滝のように流れる汗」首から胸に流れる汗を見せて、 「あっちーねーあっちーねー!」楽しそうに笑う。
あの時のせみの声も、においも、風の音も、あの人の気配も、 この夏のそれと何も変わらないのに、あの人はいない。 あの人のいない世界は空虚すぎる。
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