心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

ホーム > 日々雑記 「たったひとつの冴えないやりかた」

たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
もくじ過去へ未来へ


2014年12月11日(木) 人に属する

関東に越してきて、こちらのAAミーティングに多少なりとも顔を出しています。いろいろ忙しくてたくさんのミーティングには出席できていないのが残念です。それでもいくつかの会場を覗いてみて、数年前とは雰囲気やミーティングの進め方が変わっているところが多いことに気づかされました。

変化が起きたグループは、数年前とはメンバーががらりと入れ替わったか、古いメンバーが残っていたとしてもグループの運営が(ソーバーの長さが)若いメンバーに任されています。グループの雰囲気やミーティングの指向性は、運営を主に担っているメンバーの意向が反映されるものです。個人のリーダーシップに任せずいろいろなことを皆で話し合って決めていくのがAAですが、現場で運営に当たっている人間次第の要素もあります。

考えてみれば、僕も長野で3つAAグループを立ち上げましたが、どれも僕がグループを離れると、僕がいた頃とは違った考え方、やり方を取るようになりました。それについて、僕は干渉して元に戻そうとは思いませんでした。その理由は、アルコホーリックは人から干渉を受けることを好まない、ってこともありますが、むしろ、責任を負っていない人間の勝手な発言は現場に迷惑だというのがメインです。AAグループを存続させていく責任は、そのグループのメンバー以外には背負えないからです。

僕はあくまで僕自身のために一日一日、より素面になろうと生きてきたに過ぎません。何らかのパワー(例えば人への影響力とか)を身につける事を目的にしてきたわけではありません。しかし、どこの団体でもそうでしょうが、一つの団体の中で10年、20年と過ごしていくと、経験の長さがその人の言葉に何らかの重みを与えるようになります。それはAAとて例外ではなく、無責任なことは言えなくなってくるものです。(そのことに無自覚な人もいるし、自分の言葉に影響力がないのを恨む人もいるけどね)。

同じグループに長く留まりながら、新しい人たちにグループの運営を任せ、やり方が変わって行くのを口出しせず、静かに見守っていられる人はたいしたものだと思います。それができないのなら、別のグループに移るべきだとも思うんですけどね。

ともあれ、現実面でのやり方や方向性は、運営している人間次第ということです。そういったものは「人に属している」というわけだ。だから、人が入れ替われば、どんどん変化していって当然です。

AAは変化することが良いのでしょう。人が入れ替わっても、変化させずにとどめようとすれば、自然な変化を押しとどめるための強制力が必要になる。その強制力を「規則」を作ることによってもたらそうとすれば、AAは妙なことになってしまうでしょう。

だからといって、どんな変化が起きていっても良いわけではなく、AAがAAであるために必要な原理は受け継がれていかなければなりません。人から人へと手渡していく、述べ伝えていく、というやり方はうまく働きません。伝言ゲームと同じことが起きるだけです。だから、AAはビッグブックのようなテキストを用意し、一人ひとりがそのテキストから学ぶことで、原理が変わらずに受け継いでいけるようにしているわけです。

どんなにAAを愛する人であっても、いつかはAAを離れねばなりません。自分がAAを離れた後も、自分の考え方ややり方を受け継いでいって欲しい、と思うのは単なる利己主義でしょう。であるものの、AAがAAであるための原理は受け継がれていって欲しいものです。人は必ず滅ぶし、人の集まりであるAAグループもまたしかり。でも、AAという共同体は未来へと続いていって欲しいと願っているのです。共同体にも、テキスト本にも同じ「AA」という名前を付けたのは、そんな意図が込められているのかもしれませんね。


もくじ過去へ未来へ

by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


My追加