心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2011年06月14日(火) 依存症になった原因は重要ではない

統合失調症は「破瓜の病」とも呼ばれました。破瓜(はか)とは思春期を示す言葉で、そのころに発病する人が多いからこう呼ばれます。

息子や娘が精神病になると、親は悩みうろたえ、病気になった原因を探そうとします。そして受験や就職の失敗、失恋などが原因だったに違いないという考えになることがあります。その原因を取り除けば子供の病気が治るのではないかと期待します。そこでもっと易しい別の大学に入学させたり、別れた恋人によりを戻してくれるように(親が)頼むケースもあるのだそうです。

もちろんそれで病気は治りません(そもそも因果関係が逆で、病気の発症が先に起こり、症状が原因で受験失敗や失恋が起きていているわけです)。

なぜこのような話を取り上げるかというと、どんな病気であれ、病気になったときに人はその原因を考え、見つけた原因を取り除くことで病気を治そうとするものらしいのです。それは不条理に対抗しようとする人の心の動きなのでしょう。

東北の大震災がなぜこうも辛いかと言えば、それが不条理だからです。なぜ東北の人たちが大切なものを失って苦しまなければならないか、その合理的な理由がないからです。もし東北の人が悪人で、悪事を働いた結果罰が当たったのなら、それは因果応報と諦めることも可能かもしれません。しかし、そこにいるのは無辜の人々です。

病気も同じように不条理なものです(もし悪人だけが病気になるのなら、病院と刑務所の区別がつかなくなります)。だから人は病気の原因を探そうとするのでしょう。原因つまり因果がわかれば、不条理を条理にすることができるからです。

だから当然、依存症の人は「私はなぜ依存症になってしまったのか」という問いを発することになります。

アルコール依存症ならば、酒を飲んだのが原因でしょう。しかし、同じように飲んでも依存症になる人もならない人もいます。その違いはおそらく(遺伝的な)体質でしょう。ではなぜ自分がその体質に生まれてきたか(遺伝だというのならなぜ別の親から生まれなかったか)、それに対する答えは得られません。

酒を飲んだ理由も人それぞれです。親がアル中でアルコールに親和性があったという人もあれば、仕事の疲れを癒すために、うつの自己治療で酒を飲み過ぎたという人もいるでしょう。

実のところ原因探しは役に立ちません。

確かに、依存症になる人・ならない人がいる以上、なった人には特異的な原因があるに違いありません。しかし、その原因は依存症の本質でもなければ、回復に役立つものでもありません。たとえば、ビッグブックでは原因論には立ち入っていません。12ステップという回復の道具は、依存症になった原因を扱わないのです。

アルコール依存症ならぬ「アルコール以前症」という言葉を使う人がいます。アルコールを飲み出す前から自分はどこか変だったと感じている人が、「だから自分はアル中になった」という理由を説明するための俗語です。でもそれは回復が難しい理由にはなりません。依存症は原疾患であって合併症ではありません。依存症の元になった病(あるいは原因)を探しても無駄なことです。

アル中の中には親もアル中という人もいます。ご自身はAC(アダルト・チルドレン)かつアル中という立場です。この場合、AAのプログラムとACのプログラムとどっちを先に取り組んだら良いか、と言えば「当然AA」です。ACのケアもする必要があるでしょうが、酒を飲みながら、あるいはいつ酒を飲み出すか分からない不安定な状態でACのことをやっても効果が上がるはずがありません。だから、しっかりと酒をやめることが重要であり、AAの12のステップを先にやるのは当然です。(ギャンブルの場合も同様ね)。

ACの人は傷ついているから、AAの12のステップに取り組めないのではないか、という心配をする人もいますが、まったく心配は要りません。いままでのスポンシーのなかには親がアル中という人もいましたが、彼らの

AC性がAAの12のステップに取り組む障害になることはまったくなかった

と断言できます。(むしろ問題になるのは発達障害のほうですがそれはまた別の話)。

もちろん身体的にひどい虐待を受けたケースでは話が別で、そんな場合には自助グループでなんとかしようとせず専門家のケア(カウンセリングなど)を受けてください。そういった重篤なケースを除けば、AAで十分回復してからACのことに取り組むという方針でオッケーでしょう。AC性を12ステップに取り組まない言い訳に使っている人は少なくありません。それによって一番不利益を被っているのはその人なんですけどね。

僕はACや共依存や○○ノンのミーティングにはほとんど行ったことがありませんが、そちらには(回復していない)依存症の本人が混じってしまっていて、物事を余計にややこしくしていると話に聞きます。むべなるかな、です。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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