心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2010年03月16日(火) スティグマのある病気の告知

統合失調症(精神分裂病)の告知を受けていない患者さんは意外と多そうです。医者は治療上のメリットがなければ、告知をしないのかもしれません。家族は告知を受けているけれど、本人はご存じないというケースもありました。

AAに来る人の中には、当然統合失調の人もいます。AAはアルコールの問題だけを扱っているので、統合失調か否かは問題じゃありませんが、しかし気になってしまう時もあります。例えば幻覚・幻聴の内容です。

昔の精神科は入院が必要になるような重度のアル中ばかりを診ていました。そんな時代でも、幻覚(幻視)・幻聴を体験する患者は半分以下だったそうです。それでも僕がAAにつながった十数年前には、幻視・幻聴体験を話す人は珍しくありませんでした。その後、健康日本21のような国策のおかげでアルコール依存症の二次予防が進み、比較的軽症のうちに治療を開始する人が増えた結果、幻視・幻聴体験を持つ人の比率はさらに下がっている印象を受けます。

だからAAのミーティングで幻視・幻覚の話が出るだけで少々珍しいことなのですが、その内容がちょっと気になってしまったりするのです。アル中の人の妄想はたいてい被害的で、例えば声の幻聴が聞こえる場合にはたいてい非難する内容で、幻聴が褒めてくれるということはまずありません。しかし聞いていると、それはアル中の幻視・幻聴ではなく、統合失調のさせられ体験や被害妄想ではないかと思えてくるケースもあります(この違いは言葉では説明しにくい)。実際に、後になって治療上の必要から告知を受けたという告白を受けたことがありました。

医者が告知しない理由は、統合失調症にスティグマがまとわりついているからでしょう。本人の悩みを増やすだけなら告知の意味がありません。陰性症状(感情鈍麻・思考困難・意欲低下など)主体で妄想がほとんどない人もいますし、若い頃は陽性症状が目立ったけれど今は陰性の残遺症状があるだけの人もいます。その若い頃に酒を飲んでいたなら、急性症状もアル中の症状の一つにされちゃっているかもしれません。あるいは本人はそれを妄想だと思っておらず、実際にあったことだと信じていても、話を聞いてみると、いろいろつじつまが合わなかったりとか。

酒をやめた後も生き辛さが残ってしまい、それはアル中以外の何らかの病気があるからではないか、と考える人は珍しくありません。例えば雑記に発達障害の話を書けば、「私は発達障害でしょうか?」というメールが舞い込みます。ところが統合失調の話を書いても、同様のメールの数はほとんどきません。それは、「生まれつき」のほうが統合失調より社会のスティグマが少ないからだと想像しています。

自分は何かの病気ではないかと考えて、それを調べてみる。そういう「自分探し」は決して悪いことばかりではありません。時にはそれによって解決に向かうこともあるでしょう。けれど、どんな真実が出てこようともそれを受け入れる覚悟がないのなら、自分探しはやめるべきです。医者が「うつ」と言っているのなら、そういうことにしておけば良いと思うのです。

統合失調と境界性人格障害(ボーダー)の境、統合失調と広汎性発達障害(アスペルガー)の境、統合失調と非定型うつ病の境、どれにも明確に区別できない曖昧な部分があるようです。はたしてそこで正確な診断が必要なのでしょうか。医者は病名に対してではなく、症状に対して薬を処方してくれます。病名は便宜的なものです。正確な診断があってもなくても、治療(例えばカウンセリングに行く)が同じなら、診断にどれだけ意味があるのでしょうか。

医者が告知しないのには理由があり、それを信じれば良いと思います。明らかに未治療である場合を除いて、第三者が首を突っ込むべきでない問題だと感じています。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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