心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

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たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
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2010年02月13日(土) 前向きに見捨てる

第7章の文章に疑問があります。

日本語版だとp.139、英語版ならp.96。

One of our Fellowship failed entirely with his first half dozen prospects.
「私たちの仲間の一人は、かかわりをもった最初の六人全員に見事に失敗した」

この人物とはビル・Wその人なのだそうです。

He often says that if he had continued to work on them, he might have deprived many others, who have since recovered, of their chance.
「彼は、もし自分がそのまま彼らにかかりっきりになっていたら、ほかの多くの人たちの回復のチャンスを奪ってしまっていたかもしれないと言う。幸い、彼らはその後回復している」

この文章だと、最初の六人もその後には回復したとも読めてしまいます。そうなると、すぐに回復する見込みがなさそうだからといって、苦しんでいるアルコホーリクを見捨ててはいけない、という教訓になってしまいます。

けれど、原文の意味は、最初の六人を追いかけ回して時間を無駄にせず、彼らを見捨てたからこそ、他の人たちを助ける余裕が生まれたと言っているわけです。

日本語版初版(P神父の訳)ではこうなっています。
「もしも彼がこの人たちへの働きかけを続けていたら、それ以後回復したたくさんの他の人たちから、チャンスを奪うことになったろう、と彼はしばしば語っている」

それが単なる「時間の無駄」なら、被害を被るのは助けようとした自分だけです。けれど、自分の持っているエネルギーや時間には限りがあるのですから、それを無駄にすることは、他の仲間の回復のチャンスを減らしてしまうことになります。

前向きな反応の見られない人は積極的に見捨てていくことが必要なのでしょう。「一人にしておけば、そのうち一人では回復できないことを納得するはずだ」というのが真理なのですから。

結局最初の六人がその後助かったのかどうかはビッグブックの文章からはわかりません。きっと助からなかったのだろうな、とは思うのですけれど。


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by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


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