心の家路 たったひとつの冴えないやりかた

ホーム > 日々雑記 「たったひとつの冴えないやりかた」

たったひとつの冴えないやりかた
飲まないアルコール中毒者のドライドランクな日常
もくじ過去へ未来へ


2009年07月25日(土) 非定型うつ病についての素人考え(その3)

曇りときどき晴れ。

非定型うつ病の話の続き。

昨日のまとめ。従来型のうつ病の場合には何よりも休養が大切ですが、非定型うつ病の場合には生活のリズムを維持することが大切で、そのために多少辛くても休まないほうが良いとされます。

うつ病であれば「とりあえず休養を勧める」という紋切り型の対応では、非定型の人には逆効果になりかねません。

あと、うつの人を「励ます」「(目標を持たせて)がんばらせる」ことは症状を悪化させるため禁忌だとされます。しかし、非定型の場合には多少励ました方がよく、毎日目標を持って生きることは大事なので、対応も違ってきます。徹頭徹尾優しくソフトに接するべきだという対応も、非定型に対しては「言葉は優しく、心中厳しく」が基本と変わります。

非定型うつ病の人の特徴としては、「相手の言葉や行動を、悪意に受け取る」という傾向があります。

例えば上司から「あの仕事はどうなっている?」と聞かれたとします。上司は単純に仕事の進捗具合を確かめたかっただけなのに、本人は仕事の遅れを責められていると感じて、遅れてもいない仕事の言い訳を始めるとか。復職を拒まれれば「会社は俺を嫌っているんだ」と感じ、気を遣って軽減勤務にしてもらっているのに「期待されていない」と不満を持ったりします。

奥さんに「あなたの病気が早く良くなればいいのに」と言われると、「あなたと結婚して私は不幸になった」と言われているように感じたりするわけです。

結果として、本人の心の中に、馬鹿にされている・軽んじられている・責められている・上から目線で見られているなどという感情が生まれ、対人関係がギクシャクする原因となります。

実はこういう「なにげない相手の態度を悪意に感じる」のは、精神科の病気のうちで器質因の病気にありがちな症状です。アルコール依存症も器質因の病気で、実際脳の萎縮が見られます。脳萎縮がCT画像で見つかるかどうかは無関係に、大なり小なりすべてのアル中さんに見られる傾向で、断酒後も続きます。

ただ、アルコールによる脳の器質変化は決して不可逆ではないと言われ、長期間の断酒によって、この「扱いづらい性格」も徐々に矯正されていくことは数多の例によって実証されています。

話を非定型うつ病に戻します。ある精神科医のブログでは、非定型うつ病という新ジャンルを作ることを良しとせず、あえて当てはめるならば「器質性うつ病性障害」という既にある病名を挙げていました。従来のうつ病は内因の病気ですから、非定型は病気の仕組みが違うともとれます。

精神が健康な人相手でも「何気ない自分の一言が相手の気分を害してしまう」ことはあることです。しかし、器質性の精神病の人を相手にする場合には、かなり気を使わないと、相手のこの症状に巻き込まれて苦労することになります。
これはアルコール病棟でも自助グループでも言えることです。

でも一番難しく厳しいのはネットなのかも知れません。個人的な意見としては、断酒板(断酒の掲示板)とか断酒系のブログ(他の依存とか摂食障害とかACとかも含む)のなかでも、「自分はうつだ」と言い添えている人たちを相手にするときは、一番気を使う必要があると思います。

「そもそもネットに出てくること自体が<うつ>らしくない」ということは、昨日、一昨日の雑記を読んでいただけたらお分かりと思います。ネットであれば比較的自分に好意的な人たちのコミュニティも見つけやすい(職場や自助会ではそうはいかない)ですから、非定型うつの人にとってネットは良い道具でしょう。

親切心から掲示板に投稿したり、ブログにコメントを書いたら、いきなり機嫌が悪そうな返答が出てきて驚いたことはありませんか?

元気そうに見えても病気は重い、ということなのか。非定型うつの人への対応で、(心は鬼にしたとしても)言葉や態度はあくまで優しくする、というのはここらへんのことかも、と思ったのでした。


もくじ過去へ未来へ

by アル中のひいらぎ |MAILHomePage


My追加