New Year resolution - 2003年01月01日(水) ジャックんちのニューイヤーズ・イヴ・パーティに、マジェッドを誘った。 会社の人たちとパーティに行くかもしれないって言ってたけど、「ジェニーも来るんだよ」って言ったら「それじゃあ話は別だ」って言って、来てくれた。マジェッドはまだジェニーのことが好きで、今でも時々ジェニーのことをわたしに聞く。ジェニーには全くマジェッドにその気がなくて、っていうより、ジェニーは誰にもその気がないんだけど。無責任に「頑張りなよ」なんて言っちゃったけど、ジェニーの気を引けるかもしれないし、ダメかもしれないし、マジェッド次第だからホントに頑張れって思う。人に言われたって、好きな気持ちは止められない。いやになるほど、わたしには分かる。 でも、パーティに誘ったのは、マジェッドがいると楽しいから。 クラシックしか持ってないなんて言ったのは嘘で、ジャックはオールディーズをたくさん持ってた。ヒップホップもラテンもトランスも踊れないって、わたしが持ってった CD かけてる間ワイン片手にアームチェアに座ってオッサンみたいに目を細めて人が踊るの見てたくせに、いきなりコレにしようって「ディスコ・ミュージック」なんてすごいタイトルの CD かけて、くにゃくにゃくにゃくにゃ踊り出す。涙が出るほど可笑しかった。「教えて教えて」ってくにゃくにゃ踊りを真似して踊ってたら「アンタ酔ってるの? 酔わないでよ?」ってジェニーに言われた。 カウントダウンが始まるころにジャックがテレビをつける。 タイムズスクエアの航空映像は、人が炊飯器の中の炊きあがったごはんみたいに見えた。 0になったところであの人に電話する。そのために今日仕事が終わってからコーリングカードを買いに行った。あの人の携帯は留守電になってて、「auld lang syne」の曲と人の歓声をテレビから入れて、大声で「ハッロオ〜。ハッピーニューイヤ〜。ハッピー2003〜。今カウントダウン終わったよ〜」って叫んだところで切れちゃった。思いっきりスマックしてキスも入れようと思ったのに。 ジェニーはおじいちゃんの癌の手術があさってだから、ひとり遊んでるわけにいかないって帰った。ジェニーの友だちもみんな一緒に帰った。女一人になっちゃうわたしにジェニーが言う。「間違い起こしちゃダメだよ。みんな酔ってんだからね」って。それからマジェッドに、「ちゃんとこの子のこと守ってやってね」って言ってる。「本気で心配してるの、もしかして?」って聞いたらほんとに心配そうな顔して「当たり前じゃん。心配だよ」ってジェニーは言った。 ジャックの友だちもポロポロ帰り始めて、マジェッドとわたしはうちの近所に踊りに行くことにした。この前マジェッドがカダーたちと行ったっていうグリークのバー。マジェッドは飲み足らなくてたくさん飲んで、ぎゅうぎゅうのフロアでふたりで踊りまくった。マジェッドって踊りが上手い。そこらへんの男みたいに派手に踊らないで、ステップが綺麗でおしゃれ。マジェッドらしい。ずっと一緒に踊ってくれてたし。カダーなんかその辺で踊ってる女の子に声かけてカッコつけて派手に踊るんだろなって思ってた。グリークの音楽がほんとによかった。「2階は普通のアメリカンの音楽だけど行ってみる?」ってマジェッドが手を引いて連れてってくれたけど、好きな曲がみんなつまんなく思えた。もう朝になってて、わたしは踊り疲れて、マジェッドは踊り疲れて飲み疲れて、ソファにしばらく座ってからお店を出る。 マジェッドはうちに泊まった。 あんまりくたびれてるみたいだから、わたしがうちで寝ればいいよって言った。 行く前にマジェッドが、運転出来なくなるくらい飲んじゃったらきみんちに泊めてよって冗談で言ってた。 「どうしようかな」ってマジェッドは言って、「ほんとにいいの?」ってそれから聞いた。マジェッドにベッドを半分貸すくらい、わたしは全然平気だった。 ベッドに入るなり、わたしの横でマジェッドは死んだみたいに眠った。 あったかすぎるっていうから窓を少し開けたのに、まだ暑いらしくてコンフォートもブランケットもマジェッドは蹴飛ばす。わたしは寒くて何度も目が覚めて、その度に足元にまるまったブランケットを引っ張りあげた。そしてこっそり窓を閉めた。 ふたりで目が覚めたのは、夕方の4時だった。マジェッドがわたしを抱き起こしてくれて、まだ目がちゃんと開けられないわたしのほっぺたに笑いながらキスした。 マジェッドがシャワーを浴びてる間にわたしはコーヒーを沸かして、わたしがシャワーを浴びてる間にマジェッドはコーヒー飲みながらテレビを見てた。 それからごはんを食べに行った。 前から行きたかったグリークのレストラン。お店も食器もちっともおしゃれじゃないけど、「本物のグリークだ」ってマジェッドは言った。マジェッドはグリーク・フードが大好きで、最初にカダーがマジェッドに会わせてくれたときも3人でグリークのお店に行った。あの時はカダーがわたしを恋人みたいに紹介してくれたのにな。 「あたしね、カダーのこと忘れることにした」。そう言ってから慌てて言い直す。「違う。忘れるなんて出来ないから、『あんまり考え過ぎないこと』にした」。「Good!」ってマジェッドが言う。「きみが思ってるような『友だち』として会えるって自分の中でほんとに確信出来るまで、離れてるほうがいいよ」って昨日言ってた。マジェッドの言うことなら、なんか素直に聞けそうな気がした。 「うん。カダーのことはもうあんまり考えないようにする。あたしの New Year resolution」。 「ジェニーはやっぱり僕に興味ないみたいだなあ」って、マジェッドはちょっと淋しそうに言った。 -
|
|