サイキックパワー - 2002年11月16日(土) つかまったのは、前とおんなじとこだった。 角を曲がったところでおんなじ白い紙を差し出されてた。だけど違う女の子だった。 それだけで信用できなかったから、パスしようと思ったのに、つきまとわれる。 「あたしはサイキックパワーを信じてるけど、あなたが本物かどうかなんかわかんない」とか「どうせそういう組織でしょ? ついこの間もおんなじこと言われておんなじ紙もらったのよ、違う人に」とか「だから。あたしは何にも知りたくないの。あなたに何にも話したくないし」とか「ビジネスじゃなけりゃ、なんで誰にでもそうやって声かけまくるわけ?」とか、言っても否定されるに決まってるようなこと言ってきっちり否定されて、とにかくドラッグストアで買うものがあったから、それを買いに行かせてよ、ってお店に飛び込んだ。それから巻こうと思ったけど、ドラッグストアの出口はひとつしかなくて巻けるはずもなく、出口で待ってた彼女に「Are you ready?」って言われて観念してついてった。 ドラッグストアの中で、でもホントはもう行っちゃえって思ってた。母と父のことと、妹のことと、あの娘のことを言い当てられたから。 ダークネスの話をされてから、「Make a wish」って言われた。「何について?」って聞いたら「何でもいい。望んでることひとつ」って女の子は言った。 目をつぶるわけでもなく、ぼんやりと「I wanna get him back to me」って3回心でつぶやいてた。それが正直な気持ちなんだって、自分でもびっくりした。そしたら彼女はそれから突然、カダーのことを話し始めた。なんであの人のことを思わなかったんだろって考えたけど、あの人とこのまま想い合えることはもうとっくに信じてる。望みなんかない。でも、もしあの人のことを思ったとしても女の子はおんなじことを言ったんじゃないかってくらい、カダーの話はなんとなくあの人にも当てはまるような気もした。 「ダークネスからあたしは抜け出せるの?」「そう」「どうやって?」「それを私が助けてあげるの。大丈夫。抜け出せるから。あなたは抜け出さなきゃいけない。幸せになる方法を見つけなきゃいけない。私のことを信じられるなら、明日ここに電話して」。 電話番号を受け取って、「わかんない。悪いけど、まだ信じてないから」ってそう言った。 帰り道で思ってた。 ダークネスが嘘であろうと、女の子が偽物であろうと、それは幸せになれることを信じなさいってことなんだって。サイキックパワーを信じるのでもなくて、女の子を信じるのでもなくて、幸せを信じるってことなんだって。それは、自分ひとりで信じるのを挫けそうになったときに、手助けしてくれるものなんだって。神さまを本当に信じてる人がいつも心穏やかなように。 いつだっけ。アニーが言ってた。「毎晩、『神さま、わたしを救ってください』ってそれだけお祈りして眠るんだよ。そしたら絶対幸せになれるから」。幸せになれることを、アニーは「神さまに助けてもらって」信じるんだ。多分それと同じこと。 カダーはシティからの帰りの車から電話をかけてくれた。 優しくなかった。意地悪いっぱい言われた。「怒ってるの?」って聞いたら「きみが誰と何しようと構わない」って言った。「そうじゃなくて、今怒ってるの?」って聞いたら「怒ってない」って言った。途中で切れたから切られたのかと思ったら、すぐかけ直してくれた。 「あの日言ってくれたことは本当のことじゃないの?」 「何言ったか覚えてない」 「あたしのことを本当に好きだって気がついたって」 「わからない」。 それからもずっとなんだか冷たかったけど、話をしたくないわけじゃなくて話したいんだってわかった。それでも今度いつ話せるのかも、また会えるのかも、わかんなかったけど、電話を切ってももう痛くなかった。 -
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