もう誰も - 2002年10月24日(木) カダーのルームメイトが電話をくれた。 「約束だから、電話したよ」って。 それから、「もう大丈夫?」って。 大丈夫だった。昨日は。 なのに今日は大丈夫じゃなかった。 だからそう聞かれて、声がつまった。 「泣かないって約束したのはきみだろ?」って言われた。 話したいことを話しなよって言うけど、何も上手く話せなかった。 仕事の帰りに車の中から電話をくれて、うちに着いたところでわたしが何時まで起きてるか聞いて、またあとでかけるよって言った。 12時頃にまたかけてくれた。 ルームメイトの話し方は、ときどきカダーに似てる。 一緒に住んでると似てくるのかな。 初めて電話で声を聞いたときに、カダーとそっくりだって思ったけど。 だから悲しいとか辛いとか、そんなふうには思わなかった。 ただ、似てるのに、カダーに話すときみたいに話せなかった。 いつも普通におしゃべりしてたのに、なんでだろ。 電話だからかな。顔が見えないから、似てるとこが強調されちゃうんだ。 「聞いてるから話しなよ、話したいこと全部。」 「心理カウンセリングみたいだね。カウンセラーは上手く聞き出さなきゃだめなんだよ」って笑った。 話したいことも聞きたいこともたくさんある。 だけど、みんな喉から出る手前のところで止まってしまった。 「カダーはうちにいるの?」 「いない。どこにいるか知らない。」 「あたしわかるよ。」 カダーの名前を口にしたら、また涙声になる。 聞いたってしょうがないことなのに、一番知りたいことはカダーがどうしてるかってこと。 わかんない。 たくさんたくさん知りたいことも話したいこともあるけど、多分それはルームメイトにじゃなくてカダーにだ。だけどそんなこともうしないほうがいいに決まってるし、したくても出来ない。 「きみは楽天家だろ? 悲しい考え方するなんてきみらしくない」。 「先のことを考えなよ。過去に戻るのは嫌いだって言ってたじゃないか」。 「新しい生活を始めなきゃいけないんだよ。ちゃんと上手く行くから。今より幸せになれるから」。 みんな正しい。だけど違う。なんでそんな正しいことばっかり言うの? わかってて出来ないときがあるんだよ。だから悲しいんじゃん。 「あたし、大丈夫だよ。心配しないで。だけどときどき誰かに話したくなるから、助けてくれる? また電話してくれる?」 なんだか矛盾したこと言った。 わたしね、ドクターのときみたいに打ちひしがれてるわけじゃないんだ。 カダーにカダーの人生をいつもハッピーに生きてて欲しいんだ。 だから、カダーが自分の幸せのために選んだことを応援したいの。 カッコつけてるんじゃなくて、なんでかわかんないけどカダーのことはそう思う。 ううん。なんでかわかってる。 ただね、ただ今は淋しいだけだから、淋しさを紛らせて欲しいだけ。 カダーのルームメイトがわたしを支えてくれるのが嬉しい。とても嬉しい。だけど、 カウンセリングの真似ごとはいいんだよ。 ね、だから今度どっか遊びに行こうよ。 それがいい。そういうのがいい。そういう支えがいい。 「ずっと友だちでいてね」。 また言っちゃった。 わたしだって、わたしだって、もう誰も失いたくない。 今はそれだけ。 -
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