先日4回ほど、バッハの音楽について書いてみたのだけれど、 バッハで1番好きな曲は? と尋ねられたりしたら、迷うけれど、 結局「マタイ受難曲」と答えるだろうな、と思う。
それでも、「ブランデンブルク」を聴いてる時には「最高!」と思うし、 グールドの「ゴルトベルク」を聴いてる時にはそれが最高だと思うし、 「ヨハネ受難曲」を聴いてる時には「マタイ」よりいいじゃんと思うし、 それがまた「音楽の捧げもの」のトリオソナタだったりもするし、、、 それほど微妙なランキングなのだが、こうして冷静に判断を迫られると、 たぶん、「マタイ受難曲」と答えそうな気がする。
この10年ほどかそれ以上、クラッシックからは遠ざかっていたけれど、 年に1〜3回は聞き続けていた曲だ。「ヨハネ」もだけれど。 もうちょっと若かったころは、各地で盛んな「第九を歌う会」が 「マタイ受難曲を歌う会」だったら、頑張って参加するのに、、、 と真剣に思ってた。
もうとにかく、最初のオーケストラが鳴り始めると、 そしてさらに合唱が最初の一声を発して歌い始めると、 そのたびに、ジーーーン、、としてしまうのだ。 そして、合唱が「Wohin? Wohin? Wohin?」と歌うあたりになると 思わず目頭が熱くなってしまう。 合唱はこう歌っているのだ。
「見よ」 「どこを? どこを? どこを?」 「我らの罪を」 「すべての罪を負いなさった。でなければ我らに希望はないだろう」 「見よ、彼は愛と哀しみゆえに、十字架を自ら背負って行く」 「我らを救いたまえ、イエスよ」
もちろん、終曲もこの長い物語を締めくくるすばらしい合唱である。 物語中のアリアも合唱もいい曲が多く聴けてうれしい。
細かく書き始めたらきりがないけれど、 物語の中で、音楽的に私が最も好きなのはペテロの否認の場面である。
ペテロが2度「イエスを知らない」と歌った後、 合唱(その周囲にいる人々)が歌う。 「確かにお前も仲間だ。国訛りもその正体を現している」 からかうように脅かす群衆。。。。 しかし、ペテロは断固としてこう歌う。
「Ich kenne des Menschen nicht!」
そして福音史家が「その時鶏が鳴いた」と告げる。 「ペテロはイエスの言葉を思い出し、外に出て泣いた」 と歌うときの福音史家のメロディーは、ここだけ悲痛で情緒的である。 (しかし、感情を抑制して歌わなきゃいけないそうだ)
そして、ペテロの涙を表現するようなヴァイオリンソロが流れ、 アルトの歌声がこう歌い始める。 「神よ、憐れんでください。したたり落ちる私の涙のために。。。 見てください、私の心も目も、あなたの前で泣いています。。」
カラヤン盤、リヒター盤、ガーディナー盤、、、 生演奏で聴いたのは聖トマス、、、かな? どれも好きだ。 ガーディナー盤は、軽すぎるという批判も出そうだが、 物語に入ってからの合唱のテンポがよく、 たたみかけるような合唱がドラマティックに全体を展開させている。 「ヨハネ受難曲」になると、 リヒターよりガーディナーに軍配を上げたくなることもある。
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