西日が差したら枇杷の実を食べよう
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| 2001年12月03日(月) |
全編、「人生とは何か?」を語る濃厚エキスが滴ってます。『カノン』 |
『カノン』と、その前編にあたる40分の短篇映画、『カルネ』を、 続けてみた。ギャスパー・ノエづくし。
映画を娯楽というスタンスでみる(私は殆どそうだけど)と、 カウンターパンチをくらいそうなくらい、濃い映画。 こういう作品をみると、映画って、娯楽であるとともに、 「人間を語る芸術なんだ」という、当たり前な事実を思いしらされる。
『カノン』。脚本、監督、ギャスパー・ノエ。 男手一つで育てた娘に、近親相姦願望を持つ、 社会からドロップアウトした元・肉屋のものがたり・・・、
ではあるけれど、映画は「ものがたり」を語るというより、 最初から最後まで、この主人公である、 元・肉屋の精神状態(てめーら、皆、馬鹿野郎だというボヤキが殆ど) が、彼自身のモノローグによって 延々と語られる。あらすじは、ほとんどオマケ状態。
それでも2時間弱の映画として成立しているのは、 タイトでキレのいい映像表現の巧さか? はたまた肉屋のオヤジのぼやき芸!?の巧さか?
ラスト近く。 タイトル通り、パッフェルベルの「カノン」が流れる、 この映画のメインテーマともいえる重要なシーン。
あそこは、ちょっと泣けた。 大げさだけど、「人生とは何か?」という、問いに対する答えが、 ほんの一瞬、ほんの一欠片だけ、みえた気がして。
正直、それまでは、いかにもフランス映画といった感じの、 シニカルな理屈っぽさや、オヤジの無茶苦茶な強引さ(みればわかる)に、 ちょっと息切れ気味だったけど、あそこまできて、やっと、 「この映画、みてよかった」と思えたもの。
人生は、シンプルだけど、濃い。 そんなことを教えてくれる、 濃厚なブイヨンでつくったスープみたいな、映画です。 ギャスパー・ノエ、愛と刃の才人。
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