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2007年01月25日(木) 朝鮮高級学校の高体連加盟問題に関する人権救済申立事件(勧告・要望)

抜粋

日弁連 人権侵犯申立事件 警告・勧告・要望例集『日弁連 人権侵犯申立事件 警告・勧告・要望例集』
1992年10月28日朝鮮高級学校の高体連加盟問題に関する人権救済申立事件(勧告・要望)


調査報告書4(10)より


 A,日本国政府は、一九五二年サンフランシスコ講和条約締結まで在日朝鮮人(現在の大韓民国籍者を含む)については日本の公立又は私立学校において就学するものとしており、特に一九四八年一月二四日付けにおいて文部省学校教育局長は「学齢期児童又は学齢生徒の教育については、各種学校の設置を認めない」との見解を出して、事実上学齢期の児童生徒の教育を目的とする各朝鮮学校の認可申請を受理しないよう各都道府県を指導した。

 ところが政府はサンフランシスコ講和条約の締結により、一転して在日する韓国・朝鮮・中国・台湾出身者について、日本国の各公立学校に就学する権利と義務が無くなったと判断する一方において、これに対応する教育について何らの処置もなく、基本方針も持たなかったので、朝鮮人等在日外国人の教育は法律上の根拠を失うことになった。

 このため全国知事会議は、一九五三年六月、政府に対して、教育現場をあずかる立場として、在日朝鮮人文教基本政策の早期確立を求める要望を決議している。
 この時点で学校法人として認可を受けていたのは一校にすぎない。

 B,日本国政府は、各朝鮮学校等外国人学校について、学校教育法第一条に該当する学校と認めるには同法に基づいた基準を満たすことを必要とする見解で一貫してきた。同法に基づく第一条校の基準は、在日する外国人の自国ないし民族文化の教育を認めていないし、何ら配慮もしていない。
 したがってこれを満たさない各外国人学校が学校として認可を受けるにしても各種学校としての認可に止まることになり、その所轄は各都道府県知事であるとして現在に至っている。


 C,最初に朝鮮学校が設立された一九四五年から現在(一九九一年四月現在)に至るまでの各朝鮮学校の年別設立数は下記のとおりである。(略)・・・
 全ての朝鮮学校が法的認可を受けるまで二六年を要しており、各種学校として認可を受けることさえも容易でなかったことが推認される。


 D,当委員会の政府の所轄官庁である文部省に対する訪問調査及び資料による調査結果は概ね下記のとおりである。

 文部省は、朝鮮民主主義人民共和国・大韓民国・台湾の人民に対して、かつての日本国の植民地政策により朝鮮・韓国・台湾の人民に日本国の教育を強制して各民族文化の承継を妨げた観点から、現在においても何らの対策を立てていない。・・・

 また同省は、朝鮮高級学校の高体連加盟ないし大会参加についても、高体連が各朝鮮高級学校の参加を認めないことについて特に是非の判断すらしていない。
 同省は、校体連が自主的に判断すべきことであって、同連盟に対して各種学校・専修学校の参加問題としての検討を指導し、校体連もこれを受けて規約改正等各種学校・専修学校等の参加・加盟を検討している。・・・



5、認定した事実に対する判断(4)より


 A, 日本国は、国際連合の加盟国であって国連の定める国際連合憲章、世界人権宣言、二つの人権規約等を誠実に守りその実現に努力する義務がある。

 国連憲章は、第一条二項で人民の同権及び自決の原則を掲げ、世界人権宣言は、第二条において「何人も、人種、皮膚の色、性、言語、宗教、政治上その他の意見、国民的若しくは社会的出身、財産、門地その他の地位又はこれに類するいかなる事由による差別をも受けることなく、この宣言に掲げるすべての権利と自由とを享有することができる」と定め、その第二六条で「何人も、教育を受ける権利を有する」と定めている。したがってすべての人民が民族教育を受ける権利が保障され、かつそれ故の如何なる種類の差別も受けないとされているのである。

 この世界人権宣言を受けて国連は二つの人権規約を制定し、日本国はそのいずれをも批准している。・・・
「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(B規約)第二七条は「種族的、宗教的又は言語的少数民族が存在する国において、当該少数民族に属する者は、その集団の他の構成員とともに自己の文化を享有し、自己の宗教を信仰しかつ実践し又は自己の言語を使用する権利を否定されない」と定めている。
 国連人権委員会では「本条がカバーすべきであるのは、一国の領域において十分に明確かつ長期にわたり居住する、分離別個の集団のみであることにつき合意された」。したがって本条は「少数民族」の権利としてのみ解すべきではなく、国籍の如何にかかわらずわが国に長期滞在する在日朝鮮・韓国人についても適用されると解すべきである。

 さらに、「経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約」(A規約)第一三条は「この規約の締約国は、教育についてのすべての者の権利を認める」と規定しているが、前記の解釈からしてこの「すべての者の権利」のなかに、在日朝鮮人による民族教育の権利が含まれることは当然である。
 ところで、B規約第二六条は、「すべての者は、法律の前に平等であり、いかなる差別もなしに法律による平等の保護を受ける権利を有する」と定めている。したがってA規約第一三条に定める教育権の実現過程において、差別的な取扱いをなすことはB規約第二六条違反となることはいうまでもない。・・・


 「子どもの権利条約」はその第二条、第二九条において、すべて子どもはその属する民族の家族・集団の中において育てられる権利を保障され、したがってその所属する民族文化の中で育てられること及びこれがために何等の不利益を受けないことが保障され、第三〇条において、すべての子どもはその民族としての文化による教育を受ける権利を護られ、民族的文化の享受・承継を尊重されるとしている。

 さらに、「あらゆる形態の人種差別の撤廃に関する国際条約」第二条は、「締約国は、人種差別を非難し、また、あらゆる形態の人種差別を撤廃する政策及びあらゆる人種間の理解を促進する政策をすべての適当な方法により遅滞なくとることを約束する」と定め、「教育における差別を禁止する条約」第五条は、「国内の少数民族の構成員が自己の教育活動(学校の維持及び、各国の教育政策によっては、自己の言語の使用又は授業を含む)を実施する権利を認めることが不可欠である」と定めている。

 日本国憲法は、第一四条において「すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない」とし、第一九条において思想及び良心の自由を保障し、第二三条において学問の自由を保障し、第二六条において教育を受ける権利を保障している。
 さらに第九八条において憲法の最高法規性と国際法規の遵守を宣言している。


 したがって国際連合憲章、世界人権宣言、国際連合の二つの人権規約及び日本国憲法に則り、文部省には以下の義務がある。

 すなわち、文部省は、単に日本人のために設置された各種教育機関を利用するうえで在日朝鮮人を差別しないというだけでは不十分である。
 さらに、民族教育を実施するために設置した朝鮮高級学校について、公私立の法人が、学校教育法第一条に該当する学校及びその生徒に比較して、一切の差別的取扱いをなしたりまたはなす恐れがある場合、文部省は、それを排除する処置をとることにより、この分野における内外人平等を実現すべき義務がある。

 B,文部省は、社団法人全国高等学校体育連盟の監督官庁であるところ、本件朝鮮高校の加盟拒否による人権侵害状況が生じていることについて、これを解消させる指導及び監督をすべき責任があるものと認める。
 しかるに文部省は単に各種学校の加盟問題としての検討を指導しているので、かえって全国高等学校体育連盟の判断を混乱させている。

 C, 以上の事実に基づき、文部省については、各朝鮮学校の加盟ないし大会参加について、高体連に対しその加盟ないし大会参加を承認するよう指導すべき義務が発生していると判断し、上記のとおりの処置を講じられるように勧告することを相当とした。




6、勧告、要望の趣旨について(2)文部省に対する勧告について

 文部省は、学校教育の所轄官庁であり、全国高等学校体育連盟の監督官庁であるところ、既に認定してきたとおりの人権侵害の生じていることを放置してきた責任は重大である。

 日本国の教育の本旨は、単に高度の知識・技術を発展させることに止まらず、すべての人類相互の間において、困難と苦痛、悲しみと苦しさに対決する努力を理解して、その克服に力を合わせて、この地上から悲惨と戦争を放棄し、共に幸福を享受する栄光を獲得する精神と技能を目指すものでなければならないはずである。

 日本に滞在する外国人の教育に関する所轄官庁である文部省の現在に至るまでの政策は、前記の国連憲章と各国際法規による義務に違反し、教育の本旨に反し、日本国の教育としても好ましからざる影響を生じさせているものと言わざるを得ない。

 本件の申立の趣旨は、申立人等の関係する朝鮮高級学校のサッカー部の高体連加盟と試合参加を求めるものであるが、これが実現していない最大の原因は、前記のとおり日本国政府の外国人学校に関する政策に基づく高体連に対する前記指示によるものであり、政府の政策において改善されれば自ずから申立の目的は達成されるものである。
 
 よって文部省に対しては、別紙のとおり勧告することが相当であると判断する。



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