たりたの日記
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| 2008年02月20日(水) |
英語で読む百人一首 �� < かささぎの渡せる橋におく霜の・・・> |
英語で読む百人一首 第三回目
暦の上ではもう春というものの、2月はまだ冬のうち。暖かくなる前に、この歌を取り上げたい。
かささぎの渡せる橋におく霜の白きを見れば夜ぞふけにける 百人一首 、六番目の歌。新古今和歌集 巻第六 冬歌 に収められているこの歌。作者は中納言家持(ちゅうなごんやかもち)本名は大伴家持(おおとものやかもち)。奈良時代の公卿で歌人。三十六歌仙の一人で、『万葉集』の編纂にも大きな役割を果たしたと言われている。(718年〜785年67歳) 父は大納言大伴旅人、母は大伴郎女。叔母は大伴坂上郎女で、その娘が家持の正妻であり従妹でもある大伴坂上大嬢。ちょうど、今文学ゼミで読んでいる、折口信夫の「死者の書」の登場人物達の名前と重なる。この歌人やその周辺の事を調べていくと興味は尽きないのだが、ここではこの歌の英訳詩が、メインテーマなので、家持の事はひとまず置いておこう。
さて、まずこの和歌について見てゆく事にしよう。まず<かささぎの渡せる橋>だが、これは中国の伝説に基づく。誰もが知っている七夕の物語にかささぎが登場する。牽牛と織女の、年に一度の逢瀬を助けるために、かささぎが翼を広げ天の川に橋をかけるのだという。そして「宮中の階段」をかささぎの橋と呼ぶようになったらしい。
この歌の作者は夜更けに宮中の階段に立っている。その階段はかささぎが翼を広げたように白い霜が降りている。その霜を見て、夜がすっかり更けたことを知る。というのがこの歌の意味のようだ。
さて、ではポーター氏はどう、この歌を料理しているのだろうか。 When on the Magpies’ Bridge I see The Hoar-frost King has cast His sparkling mantle, well I know The night is nearly past, Daylight approaches fast. 今回は先にこの英詩を翻訳してみよう。 かささぎの橋の上でわたしは見る 白霜の王が、きらめくマントを投げかけるのを。 ああ、そうだ、 夜はほぼ過ぎ去り、 日の光が早足に近づいてくる。
英詩に忠実に訳せば、このようになるだろうか。 お気づきのように、ここには元歌にないイメージが加えられ、一見、様子の異なる詩になっている。 おもしろいのは、Magpies’ Bridge (かささぎの橋)とそのままに訳した上で、元歌にはない王を登場させている。これは、かささぎを白霜の王様(The Hoar-frost King)と擬人化しているのだろう。そのかささぎの王が投げかける(cast)キラキラ光るマント(sparkling mantle )と幻想的だ。 「雪の女王」というアンデルセンの童話があるが、「白霜の王」という言葉も寓話の響きを持つ。なるほど、この歌が中国の昔話に基づくことを意識してのThe Hoar-frost King なのだろう。そう考えれば、王が突然登場したかのように見えるが、訳者は、あくまでもこの歌の持つ世界に忠実だ。 そしてまた、かささぎが広げる白い翼と白霜の王が投げるマント、双方に、朝が訪れる寸前の、荘厳で先へと広がってゆくような、ひとつの空気を感じる。
霜が降り立つその瞬間を、家持はかささぎが舞い降りる様子にだぶらせているが、ポーター氏はそのイメージがよりはっきりと伝わるように、王が投げるマントのイメージを持ってきている。 ポーターはこの歌から<動き>を取り出し、それを英詩に仕立てた。言葉を右から左にに置き換えただけでは伝わらない元歌の持つ<動き>を再現した見事な翻訳だと思うがどうだろう。
そして和歌の<夜ぞふけにける>を The night is nearly past, Daylight approaches fast.
と二行にまとめ、英詩の持つリズムの美しさを発揮している。 ちなみにこの詩で韻を踏んでいるのは cast、past、fast。そして三つとも、投げる、過ぎる、速い、と動きを持つ言葉だ。
ついでにこの詩で最も大切な動詞 cast について見ておこう。 やや古風な文語、castの元々の意味は<注意深くねらって投げる>というもので、それが転じて、投げる(throw)、人が視線や非難などを投げかけるという意味で用いられる。 また魔法にかけるという意味もあり、・cast a spell upon a person とくれば、人に魔法をかける という意味になる。また芝居・映画の配役をするという意味も。すでに日本語になっているキャストやキャスティングはこれだ。役を投じる→配するという具合に繋がるのだろう。
・cast one's mind back to earlier days、
これは、過去に思いをめぐらすという意味。 奈良時代の歌と明治時代の英訳詩、古の詩人達に思いをめぐらすうちに夜もふけてきた。
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