たりたの日記
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2008年02月09日(土) 英語で読む百人一首 �◆ 稈淒販罎痢(�より落つる男女川 ・・・>

 英語で読む百人一首の二回目です。
今回はバレンタインデーも近いので恋の歌から。恋の歌といっても山ほどあるのですが、ポーター氏の訳詩で好きなものを選びました。
百人一首13番目。良く知られている陽成院のこの歌。


筑波嶺の 峰より落つる男女川 恋ぞつもりて 淵となりぬる 

<つくばねの みねよりおつる みなのがは こひぞつもりて ふちとなりぬる >
 


 この歌の作者、陽成院(868-949)は第57代天皇なのですが、この天皇は9歳で即位したものの、乱暴な行いが過ぎたという理由で、17歳で退位させられています。
この歌は後撰和歌集に選ばれ、その歌には「つりどのの皇女につかはしける」という言葉が添えられています。いったいこの歌を捧げられたつりどのの皇女とはどういう人なのでしょう。これが何と、前回に扱った歌の作者、光孝天皇の皇女で、その後、陽成の后となる人です。つまり、陽成院がここで歌った恋はめでたく成就したわけです。

 この歌の意味は筑波山の頂から流れ落ちる、男女川(みなの川)、その名のように、蜷(みな)が棲むような泥水が積もって、深い淵となった。そのように私の恋心も積もり積もって、淵のように深くなってしまった。というものですが、小さな流れがいつの間にか、そこで溺れてしまうほどの深い淵になるというのは、恋というものの本質を見事に捉えていますね。

 ところで余談になりますが、わたしはこの男女川を実際に見ました。2ほど前、ひとりで筑波山に登ったのですが、その途中、この歌で歌われている男女川(みなのがわ)の源流に行き合い、あぁ、これがあの淵となる川の始まりなのかと感慨深く、そのチョロチョロと流れる小さな流れに手を浸した事でした。
 
 さて、この歌を ポター氏はどのような英語を持って再現したのか興味深いところですが、さっそくご紹介しましょう。

 
The Mina stream comes tumbling down

From Mount Tukuba's height;

Strong as my love, It leaps into

A pool as black as night

With overwhelming might.
 


 まず、韻を踏んでいる単語から見ていきましょう。
height(高み・嶺 )night( 夜) might( 力)の三語が韻を踏んでいます。この三つの言葉は言葉の響きも力強いですが、意味も、強さを持った言葉です。それで、詩全体が強い印象を帯びています。実際、元歌にはない、Strong as my love 「わたしの愛のように強い」というフレーズが加えられています。この訳詩が「恋の力」を主題にしているのは疑いようのない事のようです。
 他にも効果的、また印象的な言葉がいくつか使われているので見てゆきましょう。

 tumbling down は転がり落ちるという意味ですが、tumbleの原の意味は跳ぶとか踊るといった意味なので、このフレーズには躍動感が漂っています。
つまり水が踊りながら落ちてゆく、そんなイメージです。またtumble into love というイディオムがあるのですが、これは「恋に陥る」という意味で、よく知られているfall in love よりも強烈な印象がありますね。

 leap into は  急に(ある状態に)なるという意味で、leap into a pool と 元歌の「淵となりぬる」、そのままなのですが、leapという言葉も走るとか跳ぶというのが原義にあります。例えば、 こんなことわざ。Look before you leap.跳ぶ前に見ろ。これは日本のことわざの「転ばぬ先の杖」に当たることわざでしょうか。水がほとばしり落ち、それが淵となっていくという、動きのあるイメージがここにも見られますね。

 またpool という単語ですが、我々が使うプールという言葉はここから来ているのですが、pool の元々の意味は「穴」で、一般には 流れのない水の溜まったところを言います。a pool of blood ( 血の海 )という言葉のように。
 さらには単に液体が溜まる状態だけではなく、意識・記憶・静けさなどのたまりや深みという意味もあります。ですからこの英詩は水が積る淵という意味と同様、恋の想いが積る意識の深みという意味を元歌と同様に持たせる事に成功しています。

 最後にこの詩の中で最も強い意味を持つ言葉、overwhelming という言葉に触れておきましょう。
 この単語はover(超える)とwhelm(圧倒する、押しつぶす)という二つの言葉から成り立っていますが、圧倒的なとか、抗し難いといった強い意味を持つ言葉で、今でも日常的に使われる言葉です。
例えば、an overwhelming majority=圧倒的多数。

 このように、ポーター氏の訳詩は強く、躍動感溢れる印象の英詩となっています。
 それでは前回のように、今度はこの英詩を日本語に置き換えるという作業をしてみましょう。





みなの流れは踊りながら落ちてゆく

    筑波山の高みより

わたしの愛のように強く、それは積りゆく

    夜のように黒い淵へと

    このうえなく強い力で
 
    


日本の和歌の訳詩は、英語という言語で置き換えられる時、やはりシェークスピアの舞台で、役者が語る愛の言葉といった印象になりますね。
それではまた次回をお楽しみに。


          *

ボイスブログの事を考えながら書いたら前回とは違ってトーク調になってしまいました。悪しからず。
このトピックのボイスブログ、アップしました。

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