たりたの日記
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2002年11月14日(木)

あるとき道は現れた
目の前に開けた道をわたしはおそるおそる歩き始めた
美しい花が咲いていたり心地よい小川のせせらぎが聞こえてくる
歩いたことのない道を歩きながら
知らない自分にも出会っていく
道はいつの間にかごろごろした石ころだらけになり
つまずいてころんではすりむいたひざに血が滲む
それでも道は前に続いているから歩いていく
もっときれいな花が咲いているかもしれない
美しい草原へ誘われるのかもしれない
その道の向こうに何があるのか知らないままに

しかしその道へ深く入っていくほどに現実の世界の音が遠ざかっていく
ひとりで、たったひとりでこんなに遠くまで来てしまった
いったい花や小川はそこにあったのだろうか
あれは幻想ではなかったのか
気がついてみると切り立った崖の上を歩いている
ここを踏み外してしまえばもう元の世界へ戻ることはできない
孤独と恐怖とで緊張が極度に高まった時
パンと何かが割れる音がした。
見るとわたしのこころが破れている
その破れ目から後から後から血が流れ出す
いつの間にか崖は消えてしまい
わたしは呆然と血の海の中にいる
なすすべもなく
血を流しているのはわたしのこころなのに
体中の力が抜けていく
気が付くと歩いてきたはずの道が
すこしづつ消えていっている
この血がすっかり流れ出してしまうとき
この道が消えてしまうのだということが分った

わたしはこの道が好きだった
いつまでも歩いていたいと思っていた
すばらしい場所へ繋がると信じていた
でも、もう道は消えていく
こころの破れ口を自分の力で合わせることはできない
「誰か来て、助けて」
わたしは夢の中で叫ぶ
誰にもその声は届かない
そもそも誰もいない場所をわたしはひとりで歩いていたのだから


夜中、自分の叫び声で目を覚ます
夢から醒めても血はまだ流れ続けていた




たりたくみ |MAILHomePage

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