詩のような 世界
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温い雨に打たれて、少年は心で泣くのだった。
彼は馬鹿な子だと笑われているが、 何も考えていないから、始終ぼうっとしているわけではない。 彼にとって全ての事象は複雑すぎて、 あらゆる人間は生々しすぎて、 処理しきれず口が利けなくなるだけなのだ。
彼は胸のズキズキを、左の拳でとんとんと叩いて抑えようとする。 皆が楽しそうに騒ぐ中、瞼の痙攣を止める方法を必死で探す。 ボーダーライン上で呼吸をし、彼は空より地を見て歩く。
雨の匂いを感じる時のみ景色が優しく変わるのだった。
濡れながら彼が目にしたものは、 外れた天気予報に文句を言う口、口、口。
今日1日、雨はきっと止まないだろう。 彼は嬉しくなって唇を少し歪めた。
傘なんて差すものか。 傘なんて差すものか。
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