詩のような 世界

目次


2003年09月02日(火) 感受性


温い雨に打たれて、少年は心で泣くのだった。

彼は馬鹿な子だと笑われているが、
何も考えていないから、始終ぼうっとしているわけではない。
彼にとって全ての事象は複雑すぎて、
あらゆる人間は生々しすぎて、
処理しきれず口が利けなくなるだけなのだ。

彼は胸のズキズキを、左の拳でとんとんと叩いて抑えようとする。
皆が楽しそうに騒ぐ中、瞼の痙攣を止める方法を必死で探す。
ボーダーライン上で呼吸をし、彼は空より地を見て歩く。

雨の匂いを感じる時のみ景色が優しく変わるのだった。

濡れながら彼が目にしたものは、
外れた天気予報に文句を言う口、口、口。

今日1日、雨はきっと止まないだろう。
彼は嬉しくなって唇を少し歪めた。

傘なんて差すものか。
傘なんて差すものか。


My追加
しえり |MAIL