幼稚園に入る前、家庭の事情で母の実家に一月預けられた。 覚えているのは。 おばあちゃんのたまごやき。 おじいちゃんの仕事場。 ニュース・競馬・時代劇。 おじいちゃんのバイクで、送り迎えしてもらって。 おばあちゃんと銭湯にもいった。 新聞をさかさまに持って、お向かいのおじさんに笑われたりもした。 楽しかった。 お父さんやお母さんがいなくても。 寂しい記憶が、ちっともない。 おもちゃといえば、トランプと花札。 賭け事はおじいちゃんに習った。 文鳥好きも、時代劇も、プロレスも。 それから、ハーシーのミルクチョコも。 おじいちゃんの与えた影響は、きっと大きい。
入院してから、初めてのお見舞い。 おじいちゃんは、静かだった。 歳をとると、透き通っていく。 そんな言葉を思い出した。 耳が悪く、喋りも上手くいかないおじいちゃんは。 それでも、はっきりと。 きてくれて、嬉しい。 孫に会えて、嬉しい。 そう、言ってくれて。 あと何回、会えるのかな。 できるうちに、孝行しておかなくては。
おじいちゃんは、とても生命力が強い。 死を望む今、それは只の拷問でしかなくて。 後数日の命、なんて冗談を言うから。 つい、がんばってね、なんて言ってしまって。 もう、いっぱいがんばってるのにね。 ごめんね、おじいちゃん。 だけどやっぱり、生きていて欲しいの・・・
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