縁側日記  林帯刀





2006年09月10日(日)  本。


今、家はとても涼しい。
夏の間でさえ、どこかから帰ってきて車から降りた途端、
「ああ涼しい」と思うくらいだったけれど、
それでもやはり汗をかくぐらいには暑かった。
九月になった途端、みるみるうちにそこらじゅうの夏が薄れていって、
湿った空気もじりじりした日差しもどこかへいってしまった。
家の中を風がとおって空気が軽いし、
二階と下の温度差もほとんどない。

そのせいか、ただ「本を読む」ということをしたくなって、
図書館で何冊か借りてきた。
なかでも、いしいしんじ「麦ふみクーツェ」がすごくよくて、
それを返してすぐ「雪屋のロッスさん」を借りた。
「クーツェ」は長編、「ロッスさん」は連載されていた短編をあつめたもの。
文章がかたすぎずやわらかすぎず、とても読みやすかった。
その他に、あちこちで名前を目にする作家の本も借りて、
そんなに人気があるなら読んでおこうと思ったわけだけど、
なんというか、肌が合わない感じがした。
他の作品ならどうだったんだろう。
それとも「いい」と思える時期がきていないのか。

昨日の午前中はそうやって活字を追って、
午後になってから車ででかけた。
特に買いたいものがあったわけではなかったので、
うんと遠回りをして(地図で道筋をたどったらたぶん三角形)
頼まれものの用が足りる、スーパーと書店が並んでいるところへ。

書店を長い時間物色していたんだけれど、
冷房がつよめに効いていて、
気の抜けた格好をしていたせいもあって、
なんだか体が冷えてしまった。
文庫のコーナーをぐるぐるまわっていたら、
同じくぐるぐるまわっているひとがいて、
結局私が会計をするまでそのひとはいたものだから、
ひとりで気まずくなったりした。
それから、仏壇の花と食パンを買って帰宅。
渋滞の長さも短くなっていた。

買ってきたのは梨木香歩「からくりからくさ」。
友だちがこのひとの本が好きなようだったから、
前にエッセイを読んだことはあったけれど、小説ははじめて。
買って正解。とてもよかった。
ひとのつながりに混乱しがちだったので、
次に読むときはメモを用意しておこうと思う。
その前に「りかさん」を買ってしまいそう。

「からくりからくさ」やドラマの「すいか」のように、
何人かが共同生活する話が好きだと思った。
あ、「LA QUINTA CAMERA」もそうか。
単に日常のあれこれだけでもおもしろい。
もちろん、そういう生活へのあこがれもあると思う。

そういうつながりで、
映画にもなった群ようこ「かもめ食堂」を探しているけれど、
図書館にも本屋にもない。
文庫になるのを待つしかないか。

それにしても「ロッソさん」の装丁はきれいだった。
凝っているのにさりげない。
最近、本を読む目のほかに、本の外側を見る目ができるのを感じている。


<< >>




My追加
[HOME] [MAIL]