非日記
DiaryINDEXpastwill


2003年12月27日(土) 感想2。

今日の思い出し二つの塔感想>

最後に丘上に出てくるガンダルフは、まるで月光仮面のように白い。
そして何度見ても、鵯越えの逆落しじゃ。
やだ恐ろしい!私ならあんなところは断固として馬でなんか降りないよ!
「鹿も四つ足、馬も四つ足、者ども続け!」って、馬鹿野郎ッ!馬と鹿では生息場所がエライ違いで、蹄の形から適性が違うじゃろうが!アバウトに無視するな!
いや、物理的に無理が。「鵯越えの逆落し」の絵を見た事もあるが、あれはイメージ画像であって、実際はもうちょっと傾斜は緩やかだったんじゃないかと思うわよ。
いけるかいけないかギリギリ、安全を考えれば止めておく程度の。二三十度もあれば、相当のの急勾配だ。それをあなた、あんな七十五度ぐらいもあったら死んじまうよ。降りるんじゃなくて落ちるよ。馬が足の骨を折る。未来少年コナンかパズーしか走れないよ。

セオデン王が討って出る決断をした直後に、アラゴルンが朝焼けに聞く、ガンダルフの愛の幻聴はなんだろう?あれで何を思った(感じた)事になってるんだろう?
よくわからないんだけど。

「探索が上手くいけば、わしは五日後の朝に東から戻る」とかなんとか言って出て行く時(五日では早すぎる気もするが)、
「上手く行かなかった場合は西から?てゆか、上手くいかなかったら、もう戻ってこないツモリなの、ガンダルフ?はっきり言ってちょうだいガンダルフ」
と思ってしまうが、アラゴルンのこの時の応答は、字幕では「待ちます」だが、原語では「行ってください」っぽいのよな。顔色を見ると、「こっちの事は要らん心配して言訳しなくて良いので、はよさっさと出発してください」みたいに見えるんだが(苦笑)人にはアレが、「必ず戻る」という確信をもって待ってるように見えるわけか。
しかし少なくとも、ガンダルフを待つとは(原語の英語では)明言していない。

そのへんを考えれば、「必ず援軍を連れて戻ってくれ」とは、なっていないきがするんだが。どだい、五日間もちこえたえるとは限らないのだ。仮に援軍を引き連れて戻って来たとしても、間に合わないかもしれないんだぞ。
だがここで意味があるのは、ガンダルフがあまりにも勝因の薄い戦地から一時離脱するという点にある気もする。

「サルマンは本来こうあるべきだった」とガンダルフ自身が言ったように、今や彼は白の賢者であり、失われたサルマンにかわり、中つ国においてモルゴス(?だった?)の残党であるサウロンへの敵対勢力を束ねる頂点にあるという事だ。ガンダルフが生還させられたのは、ただその為であり、つまり中途で誰が何が失われようと、ガンダルフは残された対抗勢力を集めて奔走し続けるだろうし、自分一人になっても目玉大王に反旗を翻すだろうって事だ。
たとえここでマーク勢が(アラゴルンら他二名など含めて)全滅しようと、援軍を呼ぶ為に戦線を一時離脱しているそのガンダルフは、ヘルム峡谷の戦いをは生き延びる。たとえ援軍が間に合わなくても、ガンダルフはそれを率いてゴンドールへ向うだろう。ヘルム峡谷は、マークにとって最後の砦であっても、ガンダルフにとってもアラゴルンにとっても本質的に最後の戦場ではない。
そのへんがあって、「行ってくれ」になるんじゃないかってきもしたのよな。

だがそうすると、進言が受けられ、死ぬ覚悟の特攻がここでの総統であるセオデンによって決断された直後に、ガンダルフの言葉を思い出すのはなんだろう?その言葉があっての、援軍を期待した上で特攻を進言したわけではないだろう。思い出したのは、決断した後になっている。
「あなたは間に合わなかった」という感慨かと思ったんだが。
しかし顔色爽やかなので、絶望感ではないのよな。
それはガンダルフという希望が残されているという事かもしれないし、あるいは、もしも間に合うならば、奇しくもちょうど約束の五日目の朝だ。ガンダルフが今、東から援軍をつれてくるならば挟撃できる。
勝ったも同然と勝利に酔っているところで、予想もしない反撃を受ければいささかでも怯むだろうが、そこをありえない背後から突かれれば咄嗟の事とて動揺は難くない。仮に軍勢に大差があっても、敵はこちらが内にどれだけ生き延びているかなど、知らんのだろうからな。こうなれば脱兎の勢いであまりにも尚早に都を捨て、ヘルムに飛び込んで立て篭もっていたのが、かえって功を奏す。
反撃に出るのは勝てる見込みがあるからだ。一度も戦う事無くヘルム峡谷に真っ直ぐ逃げ込んだのは、そこに初めから軍勢が配備されていたからではないのか。さらに敗色色濃く見せて実際は援軍が来るまで引きつけたのかもしれないと、現場では普通は判断する可能性が高い。騎士道のなんたるかを知らんところへ向って、あの勢いで突っ込めば。
しかもヘルム峡谷は南北に細長い。挟撃され仰天すれば、泡を食った軍勢は流水のように南北に逃がれるだろう。そうとなれば勝ったも同然だ。一度敗走にうつった軍勢を立て直すのは容易じゃないだろう。
逃げるのを負い討つ必要はない。当面、エルフは違うが(だから映画ではエルロンドの決断が早すぎるのではないかと飲み込み難い)、人間は生き延びる為の戦なので勝つ必要はないんだ。負けなければ良いだ。

ううん。グリマは知っていたかもしれないが、だが戦場にはいないし、一声で浮き足立った軍勢の動揺を抑えられるだけの器量も無い。だいたい真っ最中に、あんな風に群れてる状態でマトモな指揮系統があるとも思えない。むしろ、パランティアなんてスンゴク便利なものをもっているサルマンが何故気付かなかったかの方が不思議かもしれないが。
自身が戦場にいるか、直接指揮をとっていれば、何故相手方にガンダルフがいないのかを気にかけるだろう。
だがやっこさんは安全な塔に相変わらず篭っていて、しかもガンダルフが白の賢者になった事にキィィイーッ!!とかなり自尊心を傷付けられ興奮気味だったから、故意に無視していたかもしれないな。それとも、時間軸がイマイチよくわからないが、ちょうどその時幸いホームホムの襲撃にあっていて、連絡するどころではなかったかもしれないし。


ともかく、仮に援軍が来なくても、王によって既に決断はされたのだ。僅かでも(女子供が)逃がれる時間を稼げれば良い、砦の正面に暫く視線を釘付けに出来ればそれで良い、という心積もりなんだろうし。

こうなっては、「来なくともヨシ、来れば尚ヨシ」という感じで、アラゴルンとしては「…ウフ☆」という気持ちなのか?
思い出したとて、「ひょっとするとガンダルフが来るかも知れませんよ?」とはセオデンに言わんのだものな。言ったとして、「いっしょに死んでくれ」に「うん」と頷いたのに、この期に及んで生き残る事をまだ考えているのがバレてはセオデンの機嫌を損ねるかも(苦笑)
わからんが、「ガンダルフはわしらを見捨てて一人逃げたのじゃ!そんな奴の肩をもち、あのような奴に期待するか!?」とオークに殺される前にセオデンに斬り殺される可能性も無きにしもあらずだ。セオデン、気昂ぶっとるからな。
それにセオデン自身、期待すればより多くが生き延びる可能性を考えてしまい、「それまでいま少し待とう」となっちまって、かえって機を損じかねない。来るかもしれないが、来ないかもしれないのに。来るにしても来ないにしても、この短期間でそれほど多勢を掻き集められるとも思えない。

…思ったより多かったが。実際はあれほどの壮観な多勢でなくても事は足りたかもしれない気もするが。映画として全体を見てる側には納得しにくくても、戦場で実際に戦っている側としては、挟み撃ちをされたという動揺は足を乱す。それで充分な気もするけど。
そこはガンダルフの器量というよりエオメルの気合かもしれない。北へ向うと言って去った後、エオメルが残党や在野の無所属なんかを掻き集めて回っているところにガンダルフが追いついたのではないかという気もする。五日という時間を考えると。
「あそこに(おまえの)王が一人でいるぞ」とわざわざ言うのも。エオメルには、その軍勢を率いて自分を謂れ無く国外追放した(言うなれば自分の忠誠を裏切った)セオデン王に背く事も、今まさに死にかけているところを傍観する事もできるのだから、「選択せよ」という事だろうきもしたのだが。

ともかく
後がどれだけ生き延びるか天運にまかせて女子供だけでも砦から逃がすにしても、挟撃の可能性を考えるにしても、どちらにしても、チャンスはこの一度きりが最初で最後になり、もはや限界なんだからな。後が無い。
なにを死んだらそれまでよ、何もせんでも殺されるんじゃという破れかぶれの感じで、「死ぬ瞬間まで、一匹でも多く殺す。たとえ一人残らず殺されようとも、このヘルム峡谷で何をしたのかを未来永劫に刻み込んでやる。貴様等をも無傷ではけして終らせんぞ」というレッドドーン、血染めの夜明けの気迫だし(苦笑)

エゲツナイ視点で見れば、アラゴルンがヘルム峡谷で死んだとしても、全くちっともカスも意味がないわけでもないしな。ゴンドール側の人間がマークを守って死に、マークの民を一人でも(多く)逃がす事は、ゴンドールにとって意味がある。
マークが落ちた時、生き延びた者の殆どがゴンドールに流入するだろうと思われるしな。その時、自分がアラソルンの息子であると名乗っておいた事がいきてくるかもしれない。少なくとも還る場所を失ったエオメルらは、自国の王とともに死んだ者の国にいき、そしてそこを砦として命懸けで戦う事に躊躇わないだろう。
この点はあまり期待できないかもしれないが。しないよりマシ程度かな。

しかしそう考えると、奴は内心はどうあれ、外観上「すごく良い人、思い返すだに良い人、どこまでも良い人」でないといけないのよな。「ゴンドールには優れた貴人がいて、その人はマークの為に死んだ」という外観をつくりあげなければならない。ゴンドールの世継ぎという肩書きを負い、イシルドゥアの後継者という貼り紙を背中に貼った以上は、誰の目にもわかりやすく、だ。
うおう、労苦が忍ばれるね(苦笑)

ガンダルフは、「ヤンキー、母校に帰る」風(ドラマも原作も見てないが)


やぐちまさき |MAIL