sasakiの日記
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| 2009年07月08日(水) |
そろそろ、話でも書き始めようか? |
僕にはまだ午後一番、最後の授業が残っていた。通常の授業ならサボることも可能なのだが、退職間際の老教授と一対一の講義だった。いつもサボろうと思うのだが、学生が僕一人だけの授業なので黙って休むわけにはもいかない。 授業はお互いにとって退屈でわびしいものだった。老教授は教員生活最後に、よりによって一番たちの悪い学生を神様が用意していたことに抗議をするかのようにため息混じりで授業を始める。まるで詩の朗読をしているのでは、と思われるように得たいに知れないモノローグを80分喋り、10分残して授業を終える。そして必ず最後に「火の用心をして帰りなさい。」、と小学生に言うようなことを毎回ブツブツつぶやいて帰っていく。 僕は年老いた教授と若い学生の間に年齢を超えた友情が芽生え、退職の日に人生のやり過ごし方を教え、木立の向こうに去ってゆく、という場面を夢見ていたわけではない。お互いの意志をはかろうとする唯一のヒューマニなスティックな言葉が「日の用心をして帰りなさい。」じゃあまりにもノンポリ過ぎると思った。 僕ははっきりと目的があって大学に入った訳じゃなかった。背中を押されるようにただ人の後ろに並び、その僕の後ろにもまた人が並ぶ、といった程度の認識しかなかった。 何度か学校をやめようと思ったが、次は誰の後ろに並べばいいかがわからず、だらしなく大学に席を置いてしまって随分たった。
郁子に返事を出した。
元気ですか?札幌は夏が余韻も残さずに猛スピードで通り過ぎ、朝目が覚めたら、とたんに秋です。 僕は相変わらずの生活です。火曜日と金曜日は喫茶店のバイト。そして喫茶店には郁子も見た、あの気障なウンチク野郎が相変わらず靖子さん目当てに毎日6時半きっかりにやってきて、カウンターにへばりついている。うんちく野郎はきっと、6時半、というのに何か特別な作戦だとでも考えているのかもしれないけど、靖子さんが気味悪がっているところを見ると、明らかにうんちく野郎の作戦ミスだと思う。一旦撤退するか、じゃなければ、作戦を練り直したほうがいいと思うんだけど、これから先が面白そうなのでとりあえず、このまま、バカ作戦で突き進んで欲しいと思っている。あとは、バンドの練習で一週間が過ぎる。 学校には行ってるからそんなに心配しなくてもいい。もっとも、行ってるったって朝、掲示板にその日の休講を確認しに行くだけにしか過ぎないけど。一日じゅう休講が続いたり、歯の抜けたような時間割でもって、まあ、そっちと似たりよったりです。このまま卒業できたらいいなあ、などと考えたりするけど。何時までも大学が封鎖されたままということもないだろうし、授業遅れたぶんどこかで過密スケジュールが組み込まれるという噂もあるのでぶらぶらしているのも今のうちだ。 この間紹介された「緑色革命」という本、結構つまらなかった。付き合ってる奴が悪いんじゃないか?時々ピンとはずれなものに夢中になる癖があるので注意しろよな? それと、寮のおばさん相変わらず電話の取り次ぎ感じ悪い。男は大抵似たような目にあうということだけど。興信所出身か?
郁子からは一週間に一通の割合で手紙か葉書が届く。習慣になってしまっているのか、それとも手紙を書くのが好きなのか3年を過ぎてもペースは変わらなかった。そして僕は彼女の尽きないおしゃべりに本当に感心していた。 時々、返事を催促されるのだが僕には郁子のような才能はなかった。
路面電車の通過音、遠くから聞こえるアジ演説 「Nostargia ‘70」 フェード イン
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