sasakiの日記
DiaryINDEX|past|will
「一目盛りでは変わりませんね?明日からもう一目盛り増やしましょうか?」、動物病院の女の先生は検査結果を前に告げた。
先週から水を飲む量が急に増えて、その結果尿も多量になり、こりゃ尋常じゃないな、と思い勇気を振り絞ってスポ太郎は動物病院に行くことになった。 まず、猫を入れるケージを購入。 ゆとりを持って犬用の大きいやつにする。 入れてみるとすごくゆったりすると言うことはなかった。 何度か本人も出たり入ったりして、新しく家に運ばれてきたものをしきりに点検する。この段階ではまだこれが何をするもので、最終的には自分がどういった状況になるかまでには想像が出来ていない。 朝、9時、動物病院開院の時間めがけて準備する。 初回と言うこともありケージには素直に入る。そのあとが大変。 ケージの戸を閉めロックしたとたん、地獄の絶叫。 どこからあんな声が出るのだろうと言うような声で必死に叫ぶ。ここに至ってようやく気がついたみたいだった。 呼んであるタクシーに突っ込み、出来るだけ優しい声でなだめようとするが本人は最早イッテしまってて聞く耳もたん。 この声は聞いたことがない人はわからないかもしれないが、とてもせつない。 飼い主を責め立てる百万語の言葉が入っている。 失恋で悩んだ三日目の朝、に近いものがあるほど疲れる。
朝一番、なのにもう早、患蓄(患者の動物用用語らしい。)が犬2等、猫1匹が待合室で待っていた。 そこでもスポ太郎は一番声がでかい。 受付を済ませて待つ。
ケージを風呂敷で包んでいるおばあさん。多分猫が入っているんだろう。 タオルを椅子に敷き、ぐったりした犬を寝かせている20才くらいの子。 ドアが開いて診察室から大きなマスチフが男の人を引っ張って帰ってくる。どこが悪いのか分からないほど元気がいい。スポ太郎のケージに興味があるのか盛んに吠え掛かる。びっくりしたが、うちのスポ太郎はその先をいっていて、自分の不遇を嘆くのに忙しくてその犬も見えていない。
さていよいよ自分たちの番だよ。
診察台にあげられるともう観念したのかピクリとも動かず、泣くこともしない。 血液検査と尿検査。 5分もしないうちに結果が出る。 いろんな数値の説明を受けるがあまりうまく入っていかない。なんかどきどきしてしまい、情けない。 それでも、それぞれの数値はまあまあ、範囲内であったり、幾分高いとかいった無難なものだったため、あとひとつの難関さえ潜り抜ければ無事帰れるかもしれないと思ったが矢張り甘かった。多飲多尿と言うのはそんなに簡単なものではなかった。 「グルコースの量がかなり多いですねえ。おそらく糖尿病だと思います。それと軽い腎盂炎になっています。こっちのほうは投薬でなんとかなると思いますが。」 いろいろ情報を集め検討していて、罹患するとしたこれしかないだろうなあとは思っていたのだが、いざきっぱり言渡されるといいしれずショックだった。 「どうしますか?糖尿病の治療しますか?」 最初は不思議な質問のように思えて聞き返したが、選択しなければいけないらしい。人にはそれぞれ色々な理由が着いて回る。治療しませんと言い切るのも勇気だと思った。僕はそうしたいと思ってもそう言う勇気はなかった、そのときは。 僕はこれから毎日スポ太郎の皮膚に注射針を刺しインスリンを打ってる姿を思った。かなり憂鬱な光景に思えた。 しないと言う選択肢も動物病院にはあるということだった。そのまま連れ帰りその病気を運命と考えて余生を終らせるということだ。 それもありだということはうちに帰ってつくづく考えると納得できる。結局飼い主がすべての責任を負ってるわけだから他人がとやかく言っていいことではないのだろう。
しばらくは朝と夕方2回通院しないといけないらしい。 はああっ。あいつの地獄の叫びを一日2回聞かないといけないんだと思って瞬間に気持ちが萎えた。病気にかかっている本人はもっと大変なんだろうとは思うんだけど、こっちはこっちで相手に同情できるところにはいない。 色々整理をつけなければいけないんだけど、まだ、53歳の男は一日の中でパニックを起こしている。 インスリンを打つ量を決めるために1目盛りずつ打ち、グルコースの量がどこで安定するかを見極めるということなのだそうだ。
6時が近くなり僕はそわそわする。 またあいつをケージに入れてタクシーを呼び、あの声を道すがら聞かされるんだ。 まあ、どっちにしても長い道のりになりそうだ。 どのくらいでお互い慣れるんだろう? 病院の年齢表を見ると13歳は67〜72歳となっていた。 じいさん。がんばれよ! 今日は5日目。 最初のときよりほんの少しだけ生活っぽくなってる。 注射もう少しうまくならないといかん。どうもちくっとするらしい。 もうすこしじっとしてろよな。
T氏から電話。元気ないね?と開口一番。げっ!声に出てるんだろうか?やばい。 6日のリハーサルどうするかという件。30日と4日が開いているということで30日でやってみて4日を予備日にしてもらうことにする。 O氏のカラオケCD、コーラス、楽器オーバーダブしたものを再度送付。もう言うことは聞いてあげない。面倒くさいからジョニーのところに振り込んでもらうことにする。 目黒君、電話が来ないので催促の電話を佐々木にしたらしばらくして携帯なる。「あれ明日じゃなかったですか?」。 言われてみれば28日だった。すまん。心の中で謝っておこう。
sasaki

|