空想世界。
ふとした時に、ふと思うってこと。

2001年03月20日(火) テレビ。

「テレビでも買うか。」
そう言ったのは食事を済ませた父親だった。しかし返事はなく、いつもの静けさが漂っている。

一家六人で食卓をかこみ、ご飯を食べる我が家の居間にはテレビがなかった。
テレビを置かず、かわりに会話をしようという父親の考えは見事にすべっていた。
「テレビでも・・買うか。」
再び声に出して言った。だが、今度も何の反応も家族は示さなかった。
そんな父親をかわいそうに思った僕は、なんか返事をしようと賛成することにした。
と思ったのも束の間、コンマ何秒かでやる気を失い半目で居眠りを始めた。

しかし実はそれはたぬき寝入りで、僕は半目で他の家族を見回した。
母は台所で食器を片付けるかたわら、なにやら豆腐を丸く切ろうとしている。
姉は漫画を読んではいるがくるぶしを必死にはたいている。
妹は・・・ストレートパーマだ。祖母は白目をむいている。
一体、いつからこうなってしまったのだろうか。いや、原因は分かっている。
それはテレビだ。

三年前のあの日、マンスリーパレスに泊まってれば出張費も浮いたのに。
「太郎が生きていたら・・・」
そう言ったのはストパーだった。ストパーの妹が正気に戻ったのかと思ったが、
太郎なんてもともといなかったので、やっぱりやつはストパーだ。
ふと気づくと姉は漫画ではなく広辞苑を開いていた。

こんな家族になったのもテレビがないからだ。とはいえ、後悔しても役に立たない。
『ポジティブに生きよう。』そう思ったら目の前が明るくなった。
そう、それは徹夜明けだった・・・


   もくじ  未来 >


きろく [メール。] [ひむか(BBS)]

My追加
エンピツユニオンです。