Allyssa
Dad
人気ブログランキングへ



 芥川賞受賞作、西村賢太「苦役列車」を読んで




芥川賞受賞作である西村賢太さんも「苦役列車」を読んでみた。感想は読後一言、貧困層出身の私も以ってしても「酷い」としか言葉が見付からない。決して作品が酷いわけではない。この本は私小説であり作品の主人公は西村賢太さん本人の実体験9割であるわけだが、受賞時に「自分の傷しか書かない」という全てを曝け出した本書に、とにかく驚嘆だった。これは金を出して買っても惜しくない書籍だ。
2011年01月18日(火) 芥川賞受賞の西村賢太さんの「苦役列車」を読むべきか、読まざるべきか?(笑)

あらすじは(と、ともに筆者のプロフィールにもなるから楽だが)

両親から虐待を受け続け、自身も激情型な子供だった主人公が十歳のときに実父が性犯罪を犯し逮捕。十五の時に実母から十万円を奪って家出。その後、中卒という学歴に社会生活の壁がたちはだかり、苦労するが、日当5500円の日雇い仕事を見つけ、木賃宿でその日暮らしをする19才の主人公、北町貫多。

「これがいけなかった」

この一文とともに、貫多のどうしようもない生活が描写される。父親が性犯罪者であるため、夜逃げのような生活を母と姉で続けた結果、友人も居なかったが、日下部という日雇いで知り合った同い年の人間に初めて友情を感じる。しかし、彼は家賃6万円のワンルームに住み、専門学校生で恋人も居る。かたや主人公は無学で酒と風俗に金を使い家賃一万二千円〜二万円の三畳間の部屋の支払いさえ滞っている身分。次第に高まる不満や妬みは、せっかく築き上げた友情さえも壊していき、日雇いの仕事の中でさえも生まれた環境によって(いや、人間的な問題で)格差を作り出す・・・



読まないようにしようと思ってましたが、書店で捜し歩く俺。やっと今日見つけたが平積み残り二冊。めちゃくちゃ売れてますね。その横に山積みの「KAGEROU」(涙)何も考えずに買いました。

個人的に衝撃的だったのは、ここまで自分を曝け出すかという心理描写や自己嫌悪描写。特に友人の彼女を思い浮かべながら自慰行為を行い、終えた後の恐怖感の副旋律に「・・・の血」の文章の描写は恐怖感と同情を併せ持つ不思議な感覚を感じた。これを文章化する私小説へのこだわりと固執は凄いものを感じる。

「苦役列車」の最後は絶望感で満たされる。だが、同書掲載の「落ちぶれて袖に涙のふりかかる」は、その後、小説家として芥川賞候補になったり川端康成賞になるまでになっている40才の貫多の話に飛ぶ。ほっと安堵するが相変わらずの怠惰な生活。ただ、験を担ぐ描写、それにこだわる描写は同じように古本マニアである私も「分かるなーーー」と思ったりもした。

ただし、19歳の頃の彼はよほど、心が荒んでいたんだろうな、と可哀相に思った。もしも、こんな奴が「呑みにいこうぜ」「遊ぼうぜ」なんて近寄ってきたら拒否るわ(笑)

しかし、百円、二百円が無くて困る描写や、小銭に苦労する場面など、小銭小説好き(笑)には、たまらない作品であり、また現代劇を旧文章で書くという斬新過ぎる作りは正に「書籍は新世界である」を見た。

この作者の次回作に期待したい。芥川賞受賞インタビューで「実父の・・・」の言葉が気になって仕方が無い。こんなに曝け出している作者がそれでも、まだ書けないという作品を早く読みたい。また、何故、荒んだ少年時代を歩んだ人間が、ここまでの本を書けるのか詳しく知りたい。どうしようもない側で生きている若い連中に希望を与える書ではないだろうか?ある意味、現代の「蟹工船」のような気がします(ベクトルは全く違いますが)





数日後、俺は母親に会いに行くために独りで故郷に帰る。この本を往来の時間つぶしに再度読もうと思って買った本だが、是非、嫌味の意味で母にも読ませたい。本書ではシラフでも激情型の両親に虐待を受け、人格形成をされたと自己分析している背景があるが、うちの両親も一滴も酒を飲まなくても激情型だった。これが酒乱よりタチが悪い。

「苦役列車」のラストは、






↑(押すと文章の続きが見られます)

My追加



人気ブログランキングへ

2011年02月01日(火)
初日 最新 目次 MAIL


My追加

爽快ドラッグ

クリスタルガイザー(500mL*48本入)

クリスタルガイザー(500mL*48本入)

1,298円1,248円

(2011/09/13 02:08 時点の価格)

クリスタルガイザー(Crystal Geyser)の一覧はこちら

DMM.com DVD通販