つらつらきまま


2006年11月22日(水)
末廣亭まで残り9ポイント


珍しく仕事終わりに新宿まで出ようという気になり、ふらっと新宿へ。
 2丁拳銃が出番ならルミネに行こうかと思い、ケータイで空席チェックをしたら生憎と出番日ではなかった。
 どうしたもんかなぁと思っていたが、紀伊國屋書店の2階は割と落語のCD・DVDが充実していたような覚えがあったので、試しに覗きに行くことに。

 行ってみたら、まぁ。
 そない、とどころか落語に全く興味が無かった頃ですら、“充実している”ように見えたのだから、にわかとはいえかなり興味がある今となっては、その一角はまるでディズニーランドであるかのように、ワクワクする場所だった。
 関西に行くか取り寄せるしか無いだろうなぁと思っていたある上方落語家さんのCDやDVDも現品限りとはいえ置いてあり、灯台下暗しとはこのことだ、と痛感。
 紀伊國屋書店を甘く見てはいけなかった。

 丁度お金を卸していたこともあったので、桂吉朝師の「おとしばなし 『吉朝庵』その2 たちきり/つる」のCDを購入。
 上方芸能に造詣が深いブログを書いてらっしゃる方が吉朝師の落語を好きだとよく書いてらっしゃるので興味を持っていたことと、吉朝師が「『たちぎれ線香』といえば米朝か文枝」といわれる桂米朝一門であるため、吉朝師がやる「たちきり」を聞いてみたかったため。
 ちなみに「たちぎれ線香」は「たちぎり」または「たちきり」とも呼ばれる。

吉朝師の「たちきり」を聞いて思ったことは、女性の艶を嫌らしくなく演じる噺家さんだったんだなぁということだった。
 女将も若旦那も小糸も番頭も当たり前ながらお一人で演じられている訳だが、凛とした女将や初々しい小糸の姿が声を聞いているだけでも浮かんでくる。
 自分のせいで大事な小糸が死んだと号泣しながら謝る若旦那と、姿なき愛娘が想いを込めてかき鳴らす三味線を見ながら、「小糸ちゃん…」と呼び掛ける女将の画を想像するだけで涙がほろほろと流れる。

 米朝師匠との2人会を2005年10月27日に務め上げた12日後の2005年11月8日、胃がんのため50歳という若さで吉朝師は死去されたため、高座を生で見ることはどうあがいても出来ないことが非常に残念。

小朝さんの本を立ち読みしていたら、11月によみうりホールで行われる東西落語研鑽会に向けて鶴瓶さんは春から「たちぎれ線香」を稽古していたと書いてあり、青山円形劇場で見たあの気迫がこもった落語の理由を知る。
 円形劇場に行く前にこの本を見なくて良かった、とも思った。
 このエピソードを事前に知っていたら、私は“春からこの噺を稽古していた鶴瓶さん”という思い入れを持ちながら見ていただろうから。
 ドラマは後から知る方が余計にぐっと来る。

 「鶴瓶ねぇ…」とか「分から〜ん、あの人の何がそんなに良いと?」と冗談交じりとはいえ訊かれることが多く、こちらもへらへらしながら「え〜、私のセンスはそんなにダメなんかね?」なんて答えているが、(あの落語を見たら分かるって!)と声を大にして主張したい。
 とはいっても、鶴瓶さんは自分の落語をソフト化して残すことにまったく執着が無く、出すことがあってもそれは死んでからにしてくれと言っているらしいので、私の今のハマりようを分かってもらうには非常に困難な状況。
 どんなに自分が聞いた落語が素晴らしかったかを力を込めて説明しても、やっぱり百聞は一見に如かずだ。
 あぁ、歯がゆい。
 落語を見に行くようになって、自分のプレゼン能力の低さに地団太を踏むことが多い。
 ちなみに「鶴瓶って、落語を途中で忘れたり間違ったりしたらすぐ裸になりそうじゃない(笑)?」とか言われたが、そんな本業に愛情が無い行為をする訳が無かろう。
 真顔で「いえ、全然思いません」とお返事。
 大人気なかった。

題名の「残り9ポイント」というのは、紀伊國屋書店で落語関連商品を買うと1回ごとにスタンプを押してくれ、半年以内に10個たまると末廣亭寄席か紀伊國屋寄席のどちらかに招待してもらえる仕組みになっており、今日早速1個押してもらった。
 さて、来年の5月までに私が末廣亭デビューを果たしているかどうか。
 それは神のみぞ知る。



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