実音て知ってます?
はっきりいっておれはあまりよく知らない。 知らないことは言わない方がいいとは思うのだが、 強く思うところがあるので聞いてほしい。
「ドはB(ベー)」
これはおれが常日頃口にする言葉である。 しかし、どうやら間違っているらしい、いや間違ってるという人が多い。 実際は間違っていないのである。そう信じている。
おれが何故こんなに頑固に「ドはB」にこだわるのかを説明する。
小学校でトランンペットをやっていた。そして中学校でも続けることにした。 入部すると、同じトランペットに一つ年上の男の先輩がいた。 名前をツカピンという。この人は小学校の時も先輩であり、ラッパで男は おれとツカピンの二人だけだったこともあり、いろいろとよくしてくれた。 小学校の時のなごりでおれはツカピンと呼んでいた。 (後に女の先輩たちに「ちゃんと先輩と呼べ」と注意されることになる)
入部したばかりのころツカピンは、
「中学校では実音を覚えないといけない。例えば合奏の時にしても、 先生は実音で指示するから分からないと話にならない。」
とおれに教えてくれた。 そしておれに運指とともに半音階でおしえてくれた。
「ベーハーチェーチェスデーエスエーエフフィスゲーアスアーベー」
おれはこれを完全に丸暗記した、というかさせられた。 ツカピンはおれを見るたびに「はい!」と合図をかける。 そしておれは何度も復唱するのである。「ベーハーチェーチェス・・・」
どういう意味かは全く教えてもらわなかった。ただ丸暗記である。 発音はチェー、チェスでいいのか(多分だめ)デスとかゲスとかはいいのか など今となっては気になるのだが、当時は疑うことなく受け入れた。
おれの頭の中ではこう理解していた。 今までドレミと呼んでいたが違った読み方もあるんだな、と。
ド → ベー レ → チェー ミ → デー ファ→ エス ソ → エフ ラ → ゲー シ → アー ド → ベー
日本語で犬は英語でドッグ、猫はキャット。 これと同じようなもんだと理解していた。
時は流れ、おれもいろいろと分かってきた。
・「ドはベー」は一般的ではない。むしろ「ドはツェー(チェー)」 ・そもそもドレミでいうときはある一つの音を示さない
しかし、そういった無駄な情報は全て排除して、おれはこの先も信じ続ける。 やはりドはベーなんだ!! まさにコロンブスの卵、コペルニクス的展開。(違う)
天動説を唱えたコペルニクスも初めは馬鹿にされたりしたのだ。 おれも同じ気持ちである。人に話しを合わせて、
「やっぱドはツェーだよねー」
「チューニングはラで合わせますよねー」
と言いつつもおれは心の中でつぶやく。
「それでもドはベーなんだ・・・!」
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