台風が来る前の 心地よい風に吹かれていたとき ふと、あの日の歌を思い出した。 薄暗いホールで、千人ほどのひとたちが心を合わせて 動き、声をあげていたことを。
あの日は朝からカラリと晴れていた。 白い雲が微かにあるだけで 空色に埋め尽くされていた。 刺すように厳しい日差しと、不快指数の高い湿気帯びた空気。 掛けているメガネフレームの温度は徐々に上昇し、 額の汗は密着して剥がれない。 けれども、そんなものはものともしない私がいた。
看板や案内を頼りにたどりついた場所は、 あまりにも近代的なビルが立ち並んでいるので 圧倒されてしまった。 見あげるだけで首が痛くなる。 会場も黒い壁に被われたふしぎな建物。 渋谷のセンター街や表参道を歩いているカッコいいひとが似合いそうだ。 要するに、私にははまっていない。 適当にひっつかんできた服に身を包んだだけだから、 当然カッコいいとは無縁。 私は、雰囲気に気圧されながらも、 チケットを手に建物の中にはいっていったのだった。 体から流れ出る汗は暑さだけによるものではなかった。
スイッチが入った。 『きっとやさしくなれる つよくなれる……』 自然に体が動き出す 曲に合わせて腕を突き上げ、声を張り上げる、歌う。 普段の私がウソのようにエンジン全開。 メガネも揺れて、一緒に楽しんでいるみたいだ。 (明日、どんな疲れが残るのか不安はあるけれどw) ついには、天井に近づかんとジャンプ。 現在の垂直跳び最高記録をだしたんじゃないかと思うくらい高く。 視界を上下するものも大きくジャンプ。 跳び上がると、いつもとちょっと違う空気が見えた気がした。 (気持ちいいなぁ) 私は壊れたオモチャのように動き、いや暴れ回ったw 今思えば、私はどのように見られていたのか考えると少々恥ずかしいが。
はぁ。 ため息と共に会場を後にする私。 コンサートは楽しかった。 でも、ある事件が私をブルーにしてしまったのだ。 原因は握りしめているメガネ。 レンズが外れ、フレームが歪み、 メガネとしての機能を果たせなくなっていた。 実は、跳び上がったときに、メガネを発射してしまったのだ。 降下した私がしっかりと踏んづけちまった。 じわりと伝わるフレームの曲がる感触。
楽しいコンサートの代償はあまりにも大きかった。 被害総額○万○千円。 はぁ、今月も赤字決定だ。 見あげた空の澄み切った青が恨めしかった。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− フィクションですw 最近メガネが壊れたのは本当ですが 無料修理でなんとかなる範囲だったので損害はありませんでしたが。 さて、今回は以前いってきたコンサートの思い出を 自分のやりたいように創作してみました。 文章を面白くするのってむずかしいですねぇ。 なにが面白いのかがわからなくなりますし。 面白さを感じるセンサーをいつも磨くことを再確認したのでした。
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