2000年01月02日(日)
 

部屋に戻ってきて、お茶を入れようと急須を取って
そしてわたしはとつぜんとそのことに気づいたのだ。

もう、なにもなくなってしまった、と。

それは「あ、この壁の染み、人の顔みたいだね。」とか
そんなふうにあっさりと、何事もなかったかのように気づいてしまった。
わたしは空っぽだ。何もない。


泣こうとした。
けれど悲しくはなかった。
悲しくなかったので、悲しいことを次々と思い浮かべていった。
そこそこに悲しい気持ちにはなったけれど、涙は出ない。にじみもしない。
目頭は冷めたまま、涙すらも枯れてしまったかのようで。

泣く理由がないことが、いちばん悲しくて。
けれど泣くにしては莫大な悲しさで、涙が出なかった。

吐き出すものもないのだ。




このアパートの部屋を引き払って
新しい生活を始めようとまでは思わないけれど
近所のスーパーで、生野菜でも買って来ようかと
のんびりとわたしは思ったのだ。





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