ゆうじの日記

2004年12月31日(金) 世紀の6分間と呼ばれる演説

独裁者ヒンケルが迫害するユダヤ人たちの中に、ヒンケルとそっくりな床屋(チャップリンが独裁者と床屋の一人二役を演じる)がいた。
ヒンケルの気まぐれな政治に抵抗したシュルツは床屋のもとに身を寄せる。逃走の途中、独裁者と間違われた床屋は兵士たちの前で演説をしなければならなくなる。

申し訳ない 私は皇帝にはなりたくない

支配はしたくない
できれば援助したい ユダヤ人も黒人も白人も

人類はお互いに助け合うべきである
他人の幸福を念願としてお互いに憎しみあったりしてはならない

世界には全人類を養う富がある
人生は自由で楽しいはずであるのに
貪欲が人類を毒し 憎悪をもたらし 悲劇と流血を招いた
スピードも意思を通じさせず 機械は貧富の差を作り
知識を得て人類は懐疑的になった
思想だけがあって感情がなく人間性が失われた
知識より思いやりが必要である
思いやりがないと暴力が残る

航空機とラジオは我々を接近させ
人類の良心に呼びかけて世界をひとつにする力がある
私の声は全世界に伝わり失意の人々にも届いている
これらの人々は罪なくして苦しんでいる
人々よ 失望してはならない
貪欲はやがて姿を消し
恐怖もやがて消え去り
独裁者は死に絶える
大衆は再び権力を取り戻し
自由は決して失われぬ!

兵士諸君 犠牲になるな
独裁者の奴隷になるな!
彼らは諸君を欺き
犠牲を強いて家畜のように追い回している!
彼らは人間ではない! 心も頭も機械に等しい!
諸君は機械ではない!
人間だ!
心に愛を抱いてる
愛を知らぬ者だけが憎しみ合うのだ!
独裁を排し自由の為に戦え!

”神の王国は人間のなかにある”
すべての人間の中に!諸君の中に!

諸君は幸福を生み出す力を持っている
人生は美しく自由であり素晴らしいものだ!
諸君の力を民主主義の為に集結しよう!
よき世界の為に戦おう!
青年に希望を与え老人に保障を与えよう

独裁者も同じ約束をした
だが彼らは約束を守らない!
彼らの野心を満たし 大衆を奴隷にした!

戦おう約束を果たす為に!
世界に自由をもたらし国境を取り除き貪欲と憎悪を追放しよう!
良心の為に戦おう 文化の進歩が全人類を幸福に導くように
兵士諸君 民主主義の為に団結しよう!

ハンナ 聞こえるかい? 元気をお出し
ごらん 暗い雲が消え去った 太陽が輝いている
新しい世界が開けてきた
人類は貪欲と憎悪と暴力を克服したのだ

人類の魂は翼を与えられていた 
やっと飛び始めた
虹の中に飛び始めた 希望に輝く未来に向かって
輝かしい未来が君にも私にもやって来る 我々すべてに!

ハンナ 元気をお出し!


これはチャップリンの『独裁者』のラストシーンでの演説である。チャップリンとヒトラーはわずか4日違いで生まれた。差別主義者やナチス信者の多かったアメリカで彼は『独裁者』を撮影中に何度も脅迫を受け、周囲にも「殺されるかもしれない」と話していたという。演説の中に出てくるハンナとは劇中でのヒロインであるとともに、チャップリンの亡くなった母親の名前でもあるところから彼の覚悟が感じられる。
「動きで表現できるのに声を出す必要はない」と言ってサイレント映画にこだわり続けたチャップリンは、しかしとうとうこの作品で吠えた。
映画というものを超えてチャップリンは母親に、独裁者に、兵士に、子供に、若者に、老人に、男性に、女性に、そして全人類に語りかけ、公開から60年以上経った今でも僕たちはそのメッセージを受け取り続けている。


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ゆうじ