| 2009年03月09日(月) |
ブレスト7:中山石井7 |
右となりの席では、カップルが神妙な顔で長い話をしている。別れ話かもしれない。 左となりの席では20代前半のOL2人が、上司の悪口と彼氏の話で盛り上がっている。
中山は大学卒業を控えた暇な頃、他の人が何でそんなにも色々と話すことがあるのかと猛烈に知りたくなり、それを確かめたいと思ったことがあった。そこで、中山は1人でカフェに入り、隣席のサラリーマンの会話を始めから終りまで盗み聞きしたことがあった。 でも、そこには新しいものは何もなかった。上司が自分の子供ことを話し、部下が自分の家庭の事を話し、もうひとりの部下が新入りで可愛い宮前さんを狙っているというどこにでもある話があっただけだった。結局みんなどこにでもあることについて何時間も話しているだけで、本当にためになることを誰も話してないのだと、中山は気づいた。 中山は心底肩の荷が下りた気がした。なぜなら、自分が知らないところでためになる話が繰り広げられていたら、自分は置いてかれるんじゃないかという焦燥感を常にくすぶらせていたからだ。中山は特に目指しているものなどなかったが、漠然とだが生き急いでいる感を常に感じさせる人間だった。
「では、話を戻そう。『メディア批判』の小説ってどんな感じになりそうかな?」 と、念のため聞いてみようという感じで、石井が尋ねた。
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