単純に数えて寝てしまってもいいのだが、それでは結果が残らない。 次の日に起きても数えた過程など忘れてしまっているからだ。
柵に入れた数や毛をそった数やジンギスカンで食べた数など到底解らない。 ましてや泣いた回数など解るはずが無い。 もしかするとヤギの鳴き声も入っているかもしれないのだ。
私はその結果を残すためにペンと紙を用意した。 今日は初日であるから、柵に入れた羊だけ数えるとしよう。 ヤギは入れちゃ駄目だ。彼らは眠りの妨げになる。 彼らは眠るために必要な紙を食べるからだ。
人間は眠くなると頭蓋骨と脳の間に、ある程度の面積を持った紙が増殖する。 大きさは大体1cm四方である。 結婚式などお祝いにまく四角の紙を思い浮かべていただければ間違いは無い。
増殖した紙は脳にへばりつき脳の筋肉の動きを止める。 脳は内部でゆっくりと呼吸をしながら、筋肉を使わなくなる。 それから深い眠りが訪れるのだ。
ところがどっこいヤギはその紙を食べてしまう。 ぐっすり眠りたいのならヤギを入れていい訳が無い。 しかしこれは学校では教えてくれない事である。 ほんとうに今の教育はどうかしてる。
私は布団の中に入って仰向けになった。両腕を掛け布団からだした。 右手にペンを握り締める。黒のハイブリッド。
電話料金引き落とし明細の裏面に羊の数を書くことにする。 その紙をおなかの上に置く。天井を見上げる。
準備は整った。 そして僕は数え始めた。
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