JIGOKUNOMISOGURA

2008年01月26日(土) 思い出し思い出し。

頭が真っ白だー。どうしようー。しかもじゃんぷはまた月曜に発売されるのであった。あああ残酷だよ残酷だよー。
さておき、ちょうど三年ほど前に日記にアップした小編を発掘(笑)。
もう誰も覚えていないと思うので。
当時、きちんと書けた私のゾロサン究極形態のひとつでしたが、かるーく通り過ぎていった原作の偉大さ。
ああ、あれに追いつきたいとは思わないけど理解したい。二人を。


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 サンジはゾロに対して何かをしてやろうと思ったことがなかった。
 それは仲間になった直後からそうで、時間が経ち、仲間として過ごした時間が長くなればなるほど顕著になった。
 ゾロに対して食事は作る。それは義務だ。サンジはコックとしてこの船に望まれ、ルフィに望まれた。コックであり、仲間の食事の管理はサンジの義務であり、意義だった。それ以上をサンジは望まないし、それ以外の必要性も感じない。自分はコックなのだ。一流の。世界でただひとりしかいない。偉大なる、誰にもなりえないコックであるのだ。それ以外の何を目指し、何を得ようというのか。サンジは自分が偉大なコックであることを知っているし、もっと偉大になれる種を持っていることを知っている。だからこの船にいるのだ。
 自分がその、誰にもなりえないコックである限り、サンジは食事を作るし、サンジの食事を望む人間がいる限り作る続ける。貴賎はない。王であろうと乞食であろうと、ひとりの偉大なコックの前ではおなじ、飢えを持っている人間に過ぎない。
 この船に乗っている限り、仲間に対して、という大いなる使命を持ってサンジは食事を作る。サンジはそれを誇りに思っている。
 その中に、実は余り優劣はない。
 だから、ゾロに食事を作っている、という感覚がサンジにはない。ルフィは別だ。サンジはルフィが海賊王になると信じている。海賊王の船だから乗ったのだ。でなければ自分が進んで海賊になる意味などあるものか。
 海賊王になると、自分に言った男がサンジだけを望んだからサンジは船に乗ったのだ。だからあの、ルフィが戴いた海賊旗を自分の存在場所とした。
 ルフィを海賊王にすることがコックとしての自分の仕事だ。自分の飯を食った男が海賊王になるのだ。
 他のクルーの野望も含めて、サンジはこれは、自分にしか出来ない仕事だと自負している。誰に譲るつもりもないし、自分以外が出来るとも思っていない。
 なのに、仲間に対してはそこまで思っているのに、その中からサンジはゾロの存在を除外している。常に。
 ゾロは世界一の剣豪を目指している。それは知っている。比べられはしないが、サンジが自分の仕事に対して持っているのと同じくらい、ゾロにとって強い意義であり、自負であろう。そのことに対して特に異論があるものではない。理解は出来ないが、大した仕事だ。そして世界一の大剣豪になる男に料理を作ってやるのも、客観的に見ればそう、悪い仕事ではないだろう。
 それがゾロでなければ喜んでサンジは当り前のようにそう思っただろう。自分以外誰が作った料理で、この男が大剣豪になれる、と思ったに違いない。けれどそのことをサンジはあえて斟酌しなかった。 理由はない。それを目指しているのがゾロである。というだけだ。
 他人から見ればどうしてそれが、と思えるような要因が、サンジにとっては充分な理由になりえたのだ。サンジは、自分自身に対して、ひいては、ゾロに対しても、お互いに関わる一切を無意識に、そしてある時期から意識的に交わりを絶とうとした。意識して、サンジはゾロのために動ける、「仲間としての」自分ですら排除した。
 おそらくそれは逆に、それを意識して始めてからは特に、相手に対するある種の特別性を与えていることを、むしろ客観としたときに明らかなくらいだったが、サンジはその事実に対しても極めて無関心だったし、無関心であろうとした。
 とにかく、ゾロに関わる自分というのが、サンジにとって排除すべきことだった。

 サンジはゾロの中に、サンジという自分の個性のような、存在のような、そのようなものが残る可能性を完全に拒絶したかったのだ。
 どうしてなのか、自分でも良く判らない。どんな人間でも、例え特に、友人関係のような、サンジとの間に特別な関係がなくても、長い間、共同生活を営べば、仲間の影響というのはそれなりに残るものだろう。食事を作る、という日常に欠かせない役割を得ていたら特に。
 現に、現在でも仲間はテーブルマナーなどはサンジの影響を受けている。果物や、魚、特殊な肉の食べ方、保存方法。サンジが暫くの間、この船からいなくなってもそれらが変わることはないだろう。サンジがこの船に残した影響は少ないものではなく、そして小さいものではない。
 それを自覚して尚且つ、出来るだけサンジはゾロと関わらないようにした。どんな理由であれ、どんな原因があれ、ゾロの中に自分が残るということが我慢できなかった。
 そして自分の中にゾロの影響が残るのが我慢ならなかった。

 その嫌悪感は何か、反射的なものだった。
 生理的なものとも置き換えていいくらいだった。ものの好悪の原因を、大抵の人間はあとからこじつけるが、サンジはこの原因が不明なこの感情に名前すらつけられなかった。
 ゾロから出会ってからこっち、ずっと無視し続けている感覚だった。けれど無視している、ということは、これが確実に存在していることも意味していた。
 この感覚がサンジからの一方的なものでないことは、サンジのその、一見、不審な態度に対して、ゾロから一度もアクションらしいアクションが返って来ない事からでも明らかだった。
 あの卑屈な所がひとつもない男が、普通、仲間から空気のような存在として接せられていたら何らかの反応を返すだろう。スルーはありえない。そして明かにゾロの態度はサンジに対しての静観ではなかった。サンジ自身に興味がないから察することはないが、明かにゾロも何らかの原因と理由を抱えて、サンジの存在をきれいに無視している。

 自分たちの間は、一緒に入っている機械は同じでも、まったく別の機能でまったく別の歯車で回っている部品のようなものだった。ルフィに自分たちは必要だろう。必ず。ふたりのうち、どちらが欠けても麦藁海賊団としての機能は成さない。けれど、どちらか片方が壊れたとしても、もう片方に影響はないのだ。異常がない限り動き、機能し続ける。
 自分たちがそうであることを、反射的にお互いは察していたのだ。だからあえてお互いをなるべく、そして徹底的に切り離そうとした。
 両腕をもがれれば、ルフィとしての致命傷になりえる。けれど片腕だけならば、ルフィであればどうとでもなる。影響がないとは言わないが、ルフィから全てを奪うものではない。
 自分たちはそれを知っているのだ。
 ゾロの存在感を、その意味を、知ってサンジは無関心でありつづける。
 きっとお互いいつか、致命的な影響を相手に対して与え得る、その可能性を知っているからだ。


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