すっかり恍惚のひととなった、死に損ないだったので、思ったよりショックはなかったです。 諦めていたし、覚悟もしていた。 そういった意味では本当に、ファンに優しい爺だったと思います。
ただこの人は、生きているだけでいい。と思わせる。数少ない作家でした。 書かなくても良かった。生きてるだけで安心してました。 安心が終わったな、とそれだけを思っています。
2,3年前、知り合いと山風の話をしていて、知り合いが「え!? まだ生きてたの!?」と吃驚していた事がありました。彼女の言によると。 「みんな、もう死んだ人みたいに絶賛するから、とっくに死んでる人だと思った」。 作家としての冥利に尽きますね。生きて伝説でした。
私としては、生存している作家の中で、こんなに純粋な意味での小説家はいなかった。こんなに純粋で傲慢な才能はなかった。小説を書くための才能で、想像力でした。天才とはこういうものを云うのだと思った。100%の完膚無きエンターテイナーでした。話を面白くするための過剰なまでのサービス精神も、欠片足りとも読者に媚びを売らず完成していた。何をしても許される作家でした。 「山風だったらつまらないはずがない」 が合い言葉でした。 山風は「宝石」出身です。デビュー作を読んだとき、乱歩は山風を見つけたとき、どんな思いをしたろう、と目もくらむように思ったことがあります。 乱歩は本格の人ですが、そんな事は関係なく、叫びだしたい思いに駆られたのではないかと思った。鬼がかった、悪魔のような才能でした。
生協が筑摩文庫15%オフのときに、勢い込んで揃えた「山田風太郎明治小説全集」をぼうっと見上げています。
どれだけ長生きしたら、またあれだけの小説家が出て来てくれるだろう。
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