| 2001年07月29日(日) |
だから試験勉強しなさいってば・・・。 |
一日にレポート提出なので学校の図書館に行く。 暑さに倦みつつ、帰りに古本屋に寄っていては意味がなし。 性懲りもなく4冊・・・。 山本夏彦『私の岩波物語』 車屋長吉『業柱抱き』 車屋の本はずっと読もうと思っていた。期待の、そして偏屈代表の平成文士(笑)。 けなしているひとを見たことがない。でも、このひとはある意味、けなせない人なのかも知れない(苦笑)。私は、初めて読む作家は大抵、随筆かエッセイから入る。『業柱抱き』はずっとどうしようか悩んでいた。いい機会。 とっとと帰って勉強せねば、と思いながら、つい目に留まったのが『「本の雑誌」傑作選』 400円だったら買っちまうだろ? なあ!? と誰にともなく言い訳しながらいそいそと懐へ。 私は「本の雑誌」ほど、慈しんでいる雑誌はないのです。これはじっくりまったり大事に読むのです。 がつがつ読んではまったく意味がないのです。ああ楽しみ。私の夏の愛しい本だ。この本バカ不良中年どもはまったくもってスバラシイ。
そしてラスト一冊。やまだ紫『ゆらりうすいろ』。 見つけたとき、実はちょっと迷った。けれど引力に抗えず買ってしまった。 読んでしまった。 私はこの漫画家からタイトルを二つほど失敬している。「しんきらり」と「空に落ちる」。 好きとというより、ぞくぞくと怖い漫画家。 こんなに怖いものを描くひとはいない。 買うのを悩んだのは、時期を悩んだから。私にはまだ早いと思った。 このひとの本は10代の頃に読んで好きだと思った。そのとき読んだのは『性悪猫』と『しんきらり』。20代になって『空に落ちる』を読んで、上記二冊を読み返した。 10代の頃に読んで好きだと云った自分を恥じた。 10代の小娘の分際で、好きだと云える漫画家ではなかった。怖かった。 この人は、普通の女では怖くて、とても武器に出来ないありとあらゆるものを武器にして描いている。 女であること、女の子であったこと、妻であること、子供を産んだこと。母であること。 きれいごとではすまされない、全ての部分を武器にして描いている。 女にしか、とうてい描けないものを、芯を見据えて描いている。 怖い。 10代で、この人の世界を好きだと思えたのはこの世界がまだ私にとってお伽噺だったからだ。20代で読んで、この世界がとてもではないけれどお伽噺では済まないと知った。けれどまだ架空だった。見え隠れする容赦のない世界に脅えた。 30になって読むやまだ紫はどうだろう。 そう思う。数少ない漫画家。 20代の前半に読むのだとしたら『性悪猫』『しんきらり』よりも『空に落ちる』がお勧め。 とてつもなくいい。 河出で出てましたが絶版になってます。けどやまだ紫の作品は、ちくまで全集として出ているようだからまだ読めます。興味のある方は是非。 妻であることと、母であることは、自分で望んで、そとして縁と運があれば、人生の半分以上、継続できる。だから、母であることと、妻であることを体験した人は、その立場はそんなに忘れないのではないかと思う。 けれど、女の子であれる瞬間は一瞬だ。 しかも意識せず、瞬く合間に終わっている。気がついて、振り返って、ああ、少女だったのだと思い出す。『空に落ちる』を読んだとき、まだこの感覚を覚えていられるのかとぞくりとした。 「小さいぐみ実」なんか、おそろしく秀逸。 やまだ紫は実際、二人の女の子を育てている。こんな、どんな意味でも怖い母親を持った娘は母をどう見るのだろうかと、丁度、この人の次女は私と同世代であることを知って呆然として見たが、収録作品の「コウノトリはういない」でやまだ紫は、子供の成長と共に、当たり前のように飛び出す性の質問に淡々と答える。 「ーーーーーー(前略)いたずらに利口ぶった親をしたくてそうしたのではなく女の子を持った故の怖さ故にあらかじめ白状した」 女の子を持ったことを「怖い」と思ってくれる母親を持てるなら幸福だろう。 女の子は、女の子であるという性ゆえに傷つくことがある。 初潮が来て傷つく子は傷つくだろう。 性を意識して、男の子は悪気ない悪意で女の子をからかう。 からかわれた娘を見て「痛ましい思いがする」と紫は云う。 痛ましい。と云う。 「女の子達は皆 好奇の目にさらされ 人波にもまれ 時に道具になりもし 怒ったり泣いたりを繰り返し 傷つくことで自分というものを 少しずつ取り戻す 幸福の湯船に浸ったままでは 永遠に自分をつかめないなんて」 (『空に落ちる』「コウノトリはもういない」) 解説、佐野洋子。 「生のタラコのうす皮をはぎ取られた様な気がする」 きたきたきた。と思わず、にやりとしてしまった。 やまだ紫に、真っ向から勝負を挑んだ解説。 このタイトルは女にしか付けれまい。 女にしか持てない感性で、真っ向からの直球勝負。 この本の解説は疲れたろう。 いい解説です。
「空におちる
水溜まりをのぞき込んでいるうち 頭がくらくらして 危うく空におちるところだったよ」 (序文)。
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