お犬様,coccolo, 中島義道著『私の嫌いな10の人々』,金子國義展『アダムの種』,Wendy's,映画『ジョージ・マイケル〜素顔の告白〜』 |
遅刻して慌てて家を出たら、マンション入口のガラス扉の向こうに犬! オートロックが開いてもう一匹小さな犬が入ってくる。 「キャー!」と叫ぶ私。驚く犬。近寄って来る。 「きゃー!きゃー!」 「騒がないで」と女性の飼い主。 「怖い!」と私。 女性飼い主が、小さな犬を抱えて「どうぞ」と不機嫌そうに言う。 「スミマセン」と言って、狭い入口を最大限犬との距離をとってすり抜ける私。
なんでやねん!「犬は繋いどけ!放さず抱いとけ!」と言うべきだった。 なぜ私が謝る?クソ腹の立つ!貼紙してやろうかな。
自由が丘『coccolo』に着いたのは約束の13時を大幅に過ぎていた。 グルメサークル主催者だったMさんに「お犬様」の話をしたら「はあ、それで30分遅れたわけですか」と言われる。 誠に申し訳ございません。
グルメサークル元会員で『coccolo』オーナーのKさんも仕事をしながらいろいろ話す。
Mさんが「将来のことはどういう風に考えてる?10年後はこうしたいとかある?」と私に聞く。 「ほとんど考えてません」 「それはいつから?何かきっかけがあって?」 「阪神大震災と地下鉄サリン事件。人は蚊のように簡単に死んじゃうんだ、と思った。先の計画立てるより今好きなことやらなきゃと強烈に思った。あとは今読んでいるんだけど、中島義道という哲学者の影響が大きい」
リュックの中から中島義道『私の嫌いな10の人々』を取り出し、読み聞かせる。 読みながら噴出してしまう。MさんとKさんも笑う。
特に好きなのが「卒業生へのはなむけの言葉」。 大学の学科長にされた中島義道は卒業生へのはなむけの言葉を書かざるを得なくなった。そんなものは大嫌いなのに。 嫌でたまらないが、普通のはなむけの言葉に「どうせ死んでしまうのですが」と付け加えることによって中島義道の気持ちにかなり近くなる、らしい。
そして他の先生が書いたはなむけの言葉を「修正」してみせる中島義道先生。
「ご卒業ご修了おめでとうございます、どうせ死んでしまうのですが。みなさんはこの人生の新しい展開に、やや不安を抱きつつも、大きな希望に胸膨らませていることでしょう、どうせ死んでしまうのですが。(中略)……社会に出ると、かつて経験のない困難に遭遇することもあるでしょう。そういったときこそ、みずからの個性を見失うことなく、困難を糧として、大きく成長する機会にしてほしいのです、どうせ死んでしまうのですが。何年かの後に、逞しく成長した皆さんの笑顔に会えれば、これほど喜ばしいことはありません。今後の検討を切に祈ります、どうせ死んでしまうのですが」
ぎゃはははは。ホント大好き!中島義道。会いたくないが。 極めつけは「恋の深入りを押しとどめようとする人々」について。
「それにしても、なんで世の人々はこうも『あきらめる』ことを勧めるのか、私にはわかりません。もし私が恋愛相談を受けたら、人生そんなにおもしろいことはなかなかないんだから、どんなに可能性が少なくても、ずんずん突き進み、相手も自分もぼろぼろになり、お互い人生を棒に振り、まわりの人をも巻き込み、みんなに迷惑をかけ、警察沙汰になってもいいから、どこまでもどこまでも貫き通しなさい、と助言しようと思うのですが、それと知ってか、誰からも恋愛相談は受けません。」
「私もこれで行く!って決めたの」などと言っていたら 「あれ?その哲学者って、中島って言ったっけ?」とKさん。 「中島義道」 「そうだよね。騒音がどうとかいう本書いた?」 「そうそう。『うるさい日本の私』。メチャクチャ面白い。私は彼の本ほとんど読んでます」 「友達の弟だ」 「え?!中島義道のお姉さんとお友達なの?この本にもお姉さんの事書いてありますよ」 「そう。聞いたことある。それで本読んだの」 驚いた。
16時ぐらいに渋谷着。Bunkamura Galleryにて金子國義展『アダムの種』を見る。 大先生もいらっしゃる。金髪のクルンクルン頭で素敵。
油絵が素晴らしい。 特にダ・ヴィンチの「最後の晩餐」をモチーフにした大作はきれいな身体の男子たちワンサカで圧倒される。
「これね、車の振動が…」とバタイユ『マダムエドワルダ』の挿絵を、教え子らしき若者二人に解説する大先生。 激しくエロティックで春画のようなデッサンに目と心を奪われる。 この絵のポストカードが欲しい!と思ったら、1500円のアルバムになってて、興奮して購入。
サイン会は別の日だが「サインを頂けないでしょうか」とスタッフに聞いてみる。 「多分大丈夫ですよ」と言われたが、大先生はライティングや、届いた花や、ショウケースの上に置かれた花瓶の位置をチェック、細かく指示を出したり自分で直したり、とても忙しそう。
かなり待って、スタッフに手招きされる。「先生、サインを…」とスタッフ。 「サイン会のときにしてもらって」とすげない大先生。 「あちゃー、ダメかぁ」と声には出さず、顔を見合わせる私とスタッフ。 「嘘嘘。お名前は?」と大先生! 「桜井です。真理です」 耳に挟んでいた鉛筆で「à Mari」と書いて下さる大先生。ああ嬉しい。 本当は写真集のモデルをやった冴島奈緒さんの事などいろいろ話したかったのだが、遠慮する。
『東急百貨店本店』で布団カバーを選ぶ。 私が測ったカバーのサイズは143×200cmだが、シングルは150×210cmが基本サイズだと言う。疑いながらもそれしかないので買ってみる。 帰宅後掛けてみたら案の定ブカブカじゃないの!もう! (と思ったら、その後一回洗濯するとピッタリサイズになった。そんなに縮むものかとビックリ)
19:40からの映画まで時間が余って『Wendy's』。久し振りにチリを食べてみる。
映画『ジョージ・マイケル〜素顔の告白〜』は素晴らしいドキュメンタリーだ。
ジョージ・マイケルには、公衆トイレでの猥褻行為で逮捕されたゲイ・スキャンダルの後、それを自らネタにしたPVでぶっ飛ばされた。 金ピカの男子トイレ、警察官姿のジョージ・マイケル、ゲイ・カップルがあそこにここに……。 ああ素敵!とそれからかなり気になる存在になったものの、あまり多くを知らなかった。
しかし、今聞いてみるとワム!の頃から曲も歌も才能に溢れていて、アーティストとして偉大な存在だったことに気づいた。 そして実に正直で誠実で、繊細だけど強い、真剣なのが可笑しい、期待した以上に魅力的な人物だった。
レコード会社と長く争っていたことも知らなかったし、特に9.11テロ以降痛烈にブッシュ批判をしていたことなど全く知らなくて、申し訳なく思う。 そうだったの、ジョージ!偉いじゃん!!!
アメリカではジョージ・マイケルの作品も言動もメディアに黙殺されているらしいので、アメリカのポチである日本でもこのことは知らされていなかったのかもしれない。
そして先々週『TABOO』で見たボーイ・ジョージがこの映画にも出ていて、大変いい味を出している。 もう彼は本当にリー・バウリーになっちゃってるみたいなメイクで 「同じジョージだけど、アタシとは違うわね」って、違いますっ!
ああいい映画だった。
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2006年01月29日(日)
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