混乱してしまった回路をひとつひとつ組み立て直すには、 彼が本田さんに言われたのと同じように 僕も深い井戸に降りるべきなのかも知れない。 あまりに濃い暗闇に身体を置けば、 今よりは幾分楽に何かが見えるのではないだろうか。 自分の指さえ見えない濃い暗闇で、何かが。
現実の光の届かない、現実とは呼びがたい奇妙な場所で 僕はゆっくりと思い出さなくてはならない。 きっと、僕にもそうゆう時間が必要なんだ。 それが良い結果を導くかどうかは、理解らない。 けれど、今、僕はとても混乱していて、何をどうして良いのか 検討もつかないのだ。 だからまず、思い出そう。 そして、初めから組み立てるんだ。
しかし、残念な事に(あるいは理解りきっているが) 僕の家の近くには、枯れた井戸も、もちろん水のある井戸も 存在しないのだ。
さて、まず僕は何処へ向かえばいい?
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