おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざ
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2007年04月05日(木) 岩波新書『日清・日露戦争』読了

 さて、本書。全体としては特に目新しいところは無い、と多寡をくくっていたのだが一箇所引っかかったのは清仏戦争において清はフランスに負けていない、という一文。
??清仏戦争において清はベトナムの宗主権を放棄しベトナムはフランスの植民地になったのではなかったのか?
 総務線の中で考えること15分。思わず「あっ!」と声をあげ、家に帰るのももどかしく近くの本屋で『世界史辞典』を紐解く。
そこには「1885年の清仏間で結ばれた天津条約において清はベトナムに対する宗主権を放棄、フランスの保護権・中国南部における通商、鉄道建設をみとめた」とある。
 案の定だ。つまり清はこのとき賠償金を支払っていない。つまり、国際的に敗北を認めていないのだ。
 嗚呼、日露戦争のポーツマス条約で賠償金の重みを知っておきながらこのときまでこのことについて考えもしなかったとは??
 一般に「日清戦争の敗北により清は列強に分割支配された」とある。なぜ、清仏戦争のときではないのか。つまり清は日清戦争の下関条約において賠償金支払いを約束したことにより始めて国際的に敗北を認めたのだ。
 ほんの一行が己の蒙を啓いてくれることもあるという一冊。


べっきぃ