おぼしきこと言はぬは腹ふくるるわざ
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| 2006年10月31日(火) |
遅塚忠実『フランス革命』読了 |
電車読書も疲れたので軽いのを一つ 岩波ジュニア新書はかなり玉石混交なのだが、いや作品内容は平明にかくことを心がけられているのだが、読み手である中高生の視点を忘れてしまった年寄りの研究者が書いてしまうと肝心の若者への啓蒙書としての位置が宙ぶらりんになってしまうものが多い。(『映画で見る世界史』なんてのは酷かった。映画評の本なのに歴史の話ばっかして映画の入手方法・上映時間などまったく書かず中には日本では入手不可能の作品まで。どうしろというんだ一体)本書はそこまでいわんがその嫌いもあらず。何しろ後書を見ると高校時代アナトール・フランスを読んだ自分を想定してるんだから、国立大学が「4年で100冊(誤字ではない)読もう」キャンペーンをやっているこのご時世、時代錯誤もはなはだしい。 そういう点で高校生へのフランス革命への理解を深める参考書としての評価は低い。 だが、副題でもある「歴史における劇薬」としてのフランス革命の捉え方は面白い。著者は理想と理性を目指したフランス革命がなぜ恐怖政治に結びついたかを、フランス革命が大衆、いや都市下層階級と貧農の不満をブルジョワが巻き込んだことに複合革命であったことにその一因をおく。その結果王政廃止後、ブルジョワと大衆の利害が衝突した時にジャコバン独裁が生まれ恐怖政治があけ狂う。世界最初の社会権・生存権の理解者の一人であったロベスピエールが恐怖政治の主役とならざるを得ない皮肉もそこに見出す(これは別書で得た知識だがロベスピエールは死刑廃止論者でもあった)「富の新しい配分が権力の新しい配分を生み出す」(本書157pバルナーブの言葉)のである。そのためフランスの社会を根底から揺るがしたフランス革命はあらゆる階層に一度は権力を与え、そしてギロチンの露と消してゆく。この解釈には一目置く余地がある。 しかし日本の明治維新を単なる侍の革命としているところは平田国学などに根ざした草莽の志士達、「夜明け前」に描かれた教養を身につけた豪農達といった当時のブルジョワ階級の役割を無視しているあたり著者の日本史に対する認識の薄さが見えて残念である。 どうしても辛口の評価にならざるを得ない一冊。
べっきぃ
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