無責任賛歌
日記の表紙へ|昨日の日記|明日の日記




ホームページ |プロフィール |掲示板「トーキング・ヘッド」 |メール
|藤原敬之(ふじわら・けいし)

↑エンピツ投票ボタン(押すとコメントが変わります)
My追加


2004年03月28日(日) 夢の中では生きられない。

 これも書く時間がなくなって省略してたことなんだけれど、昨日、しげと私はちょっとした「実験」をした。
 ともかくしげには記憶力がない。更には目の前にあるものすら見えなくなってしまうこともしょっちゅうだ。日常生活を営む上で、これはかなり困った状況を生んでいるし、私のストレスにもなっているのだが、何しろしげ自身に自覚がないので、改善の余地がないのである。記憶力のない人間に「記憶力がないぞ」と指摘しても、記憶力がないので、そう指摘されたことも忘れてしまうのである。全く、どうどう巡りだ。
 どれくらいしげに記憶力がないか、ものが見えていないかを自覚してもらおうと、こういう実験を思いついたのである。
 まず、本を10冊用意する。その本を、相手の“見ている前で”本棚に戻す。その直後に、相手に本を探させてもう一度取り出させる。これだけだ。本は本棚の裏に隠すようなことはせず、背表紙がちゃんと見えるように置く。
 ウチの中がいくら「本の山」だとは言っても、居間だけなら、それほどたくさん本棚があるわけではない。八段ほどの本棚が壁に五個並んでいるだけである。しかも「ここに置くよ」といちいち示しながら置くのだから、普通の記憶力の持ち主ならば、まず確実に10冊全部を見つけ出すことができるだろう。しげと比較するために最初に私も「実験」してみたが、30秒とかからずに全ての本を取り出すことができた。
 いくらしげの記憶力がないと言っても、こんなバカみたいに簡単な実験なら、全部分かるに違いないとお思いだろうか。私がしげのことを散々貶していたのは文章を面白くするための誇張だろうとお考えだろうか。けれど、私はしげの健忘症についてはこれまで少しも大袈裟なことを書いたことはないのである。
 実験の結果、しげが覚えていたのは、10冊中、わずか4冊だった。私はしげが不利にならないようにと思って、私のときと同じ場所にあえて置いた本もあったのに、それも見つけられなかった。焦ったしげは、当てずっぽうで本棚を探しまくって、なんとか9冊までは「偶然」見つけられたものの、最後の1冊はタイトル自体思い出せなくなって、全く別の本を取り出してしまった。そのときには所用時間も5分近くもかかっていた。
 これで、しげの記憶力が「ちょっと忘れっぽい」程度のものではないことが、一つの数値として証明されたことになる。しげには「人並以下」のレッテルを貼り付けた格好になって、いささか酷ではあったのだが、ともかくこれまでは自分の健忘症がどれくらいひどいものなのか、しげは自覚しようともしなかったし、その場限りの言い訳ばかりしていた。しげが「5秒前に話したことさえ忘れる」のを私は何度も目の当たりにしてきたのだが、その事実を本人に告げても一切信じようとしなかったのだ。
 人は、時として自身の記憶すら操作する。思い出はあるときは美化され、あるときは忘却され、その意味を自分の都合のよいように改変させていく。他者がそのような記憶操作を行うことは客観的に認知できても、自分にもそれが起こっていることはなかなか認めることが困難だし、認めたくもないことである。大なり小なり、人はそういう心の病気を抱えているものだが、程度がひどくなればそれは「妄想」としか呼べないものになる。
 しげはしょっちゅう夢と現実の区別がつかなくなってしまうし、記憶の喪失の度合いは私との生活を脅かすほどに最近とみにひどくなりつつある。しげの妄想に振り回されるのは、私だけではなくなっている。もはや、しげが自分の心の病気から目を逸らすことを、これ以上、許してはおけない状況になっているのだ。
 しげは自分がたった4冊しか本を見つけられなかった事実を、やはり認めたくはないようだった。しかし、事実は事実としてそこに厳然としてある。これはしげが人より劣っているということではない。自分を自分として定着させられない、心の病気なのである。しげ自身が自分の心と対峙する意志を持つようにならなければ、状況の改善はありえない。ここ数ヶ月、病院に通うようになったのも、自分を変えたいと思う意志の表れではあったのだが、この実験に賛同したのも、もし自分が本当に記憶を失いやすいものなら、それがどの程度のものなのか自覚したい、という前向きな姿勢が芽生えて来たのだと言えるだろう。この実験がすぐに「成果」に結びつくかどうかは分からないが、一歩は踏み出したのだと信じたい。


 早朝、4時頃であったか、仕事帰りのしげがいきなり私を叩き起こした。
 「見て見て♪」と喜色満面で差し出したのは、しげの携帯である。「何だいきなり」とまだ視力の戻り切らない眼をこすりこすり見てみると、携帯の表にも裏にも、ブルース・ブラザーズのエルウッド・ブルースこと、ダン・エイクロイドの写真が貼り付けられている。しげがキャナルシティの屋台に注文していたやつだ。
 「あれ? いつ取りに行ったん?」
 「夕べ、仕事行く前。シール貼ってもらうのに1時間くらいかかったんで、仕事に遅刻しそうになって焦ったよ。職場に『もしかしたら1時間くらい遅刻するかもしれません』って連絡も入れて」
 「で、遅刻したの?」
 「ギリギリ間に合った。もしホントに遅刻したら、なんて言い訳しようか悩んだと」
 「お前はあほか。別に昨日やっさ(=無理に)取りに行かんでも、今日でもよかったやろう」
 「だって、あんたから『もう出来てる』って聞いてたから、待ち切れなかったんだもん!」
 そう言ってしげは、別に頼みもしないのに「ホラ、窓にもダン」とか言いながらまた携帯を見せびらかす。屋台のご主人からは「ブルース・ブラザースですね。こんなの世界にただ一つですよ」とか言っておだてられたそうで、すっかり舞い上がっているのである。
 30年くらい前、まだ海外旅行に出かける日本人の数が少なかったころ、クラスに一人くらい「夏休みはパパとハワイに行って来たんだ」なんて言って、鼻を尖んがらせて威張ってたスネオみたいなやつがいたものだったが、今のしげはあれにソックリである。たかが携帯一つでそこまで有頂天になれるのかと思うと、全くみっとも恥ずかしいんだけれども、熱に浮かされてるアホウに何を言ってもムダである。しばらくはしげの周辺で「被害者」が続出すると思うが、犬に噛まれたと思って諦めていただくほかなさそうである。


 昼間はせっせとコンテンツの更新。けれど朝早く叩き起こされたので、急激な睡魔に襲われて、パソコンの前で口開けたまま眠ってしまった。ふと目が覚めるともう夕方。今日は劇団の練習にも顔を出すつもりだったのだが、もう間に合わない。慌てて千代町のパピオまですっ飛んで行ったが、ちょうど其ノ他君、鴉丸嬢、しげが外に出てくるところだった。
 出かける時、あまりに慌てていたので、玄関から飛び出した時、ズボンを履き忘れてトランクス一丁だった、と話すと笑われた。当たり前だが。
 「で、どこまでパンツ一丁だったの?」
 「玄関の外までだよ。エレベーターに乗る前に風で下半身が寒いのに気づいて、引き返したから」
 「じゃあ、風が吹かなかったらそのまま外へ……」
 吹かなくても気づくって。念のために言っておくが、こういうドジはたまにしかないのである。しげじゃないんだから。
 パピヨンプラザのホームセンターで、しげから「キーホルダーにできるプレートを探して」と頼まれる。「普通のキーホルダーじゃいかんの?」と聞いたら、「ダンのシールを貼ると!」と力説される。作ってもらったシールがまだ余っているのだとか。どうやらしげは身の回りの品を全てダン・エイクロイド一色に染めたいらしい。今年は珍しくダン・エイクロイドの出演映画が2本連続して輸入される予定なので、しげのダン熱はますますエスカレートしそうである。残念ながら手頃なプレートは見つからなかった。結構大きめの写真なので、それを貼れるものなんてそうそうないのである。
 結局しげはプレートは諦めて、職場のトイレで使うというブラシだけを買っていたが、なんでそんなものをと聞いてみたところ、店内改装の時に、間違えて掃除道具を全部捨てられてしまっていたのだとか。誰がそんなアホなことしたのかね。でも、てことは今現在、トイレは掃除されないまま放置状態になってると言うことか。ばっちくないのかなと思いはしたが、まあ、一日二日でそうすぐに汚くなるものでもなかろう。でもあまり聞きたくない話ではある。
 其ノ他君たちとはそこで別れて、そのあと「八仙閣」で食事。
 会席料理を頼んだのだが、しげが皿の料理を結構残したので、いつもより多めに食べることになってしまった。でもこれを予想して今朝は食事を抜いておいたので、カロリー的には一日トータルで1200kcalを越すことはないはずである。明日は久しぶりの検査なので、この一ヶ月の成果がどの程度のものか、ちょっとドキドキものである。


 そのあとキャナルシティに回って、しげ、またプレートを探すが、アクセサリーの屋台はやたら出ているのに、やはり手頃な大きさのプレートは売ってない。道すがら、例のダン・エイクロイドシールを作ってもらった屋台に立ち寄って、しげ、そこのご主人と売り子のねーちゃんに、「昨日はありがとうございました」と挨拶をする。「昨日は嬉しくて一睡もできませんでした」とか言ってたが、そこまで嬉しさを強調せんでもよかろうに。相手のねーちゃんも「わざわざご丁寧に」としか言いようがないのである。
 そのあとAMCで映画『ドッグヴィル』を見る。3時間の大作、静かな映画であるにも関わらず、全く時間を感じさせないくらい、ずっとワクワクのし通しだった。コケオドシのCGや空疎なだけのアクションなどなくとも、アイデアに富んだ映画というものは、それだけで人の心をつかんで離さないものなのである。
 しげも満足そうだったので、今日は気分よく帰れるかと思ったら、帰り道でまたしげが無意味な妄想発言を始めたので、一気にぶち壊しになってしまった。「誰とでも寝る女がいて、アンタだけ相手にされなかったら、やっぱりそいつを犯したいって思う?」とか、いったい何が言いたいのか。「別に思わんよ」と言っても、「ウソだウソだ」と言って信じないのである。あまりにしつこいので、「お前は喋るなバカ」と一喝する。自分の亭主をなんでそんなに変態扱いしたいのか、わけがわからないのである。男を見る目が歪んでいるのだろうか。もっとも「歪んでる男」が世間には馬に食わせるほどいるのも事実ではあろうが。

2003年03月28日(金) メモ日記��
2001年03月28日(水) 悪役NO.1/映画『隠密剣士』/『名探偵コナン 科学トリックBOOK』ほか



↑エンピツ投票ボタン
日記の表紙へ|昨日の日記|明日の日記

☆劇団メンバー日記リンク☆


藤原敬之(ふじわら・けいし)