無責任賛歌
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| 2003年02月07日(金) |
ベスト?/『赤ちゃんをさがせ』(青井夏海)/『じつは、わたくしこういうものです』(クラフトエヴィング商會)/映画『白夫人の妖恋』 |
朝、いきなりしげから叩き起こされたら、動悸が激しくなってナマ汗が出てきた。私の具合が悪いときに看病しないだけならまだしも、悪化までさせるか。 時々マジで夢に見るんだけどさ、夜、私が寝ていたら急に頭痛がして、「あ、頭がイタイ!」って叫ぶのよ。そしたらしげが、「どしたん! だいじょぶと!」と言うやいなや、私を揺さぶって振り回すのな。 「アンタ起きりー! 寝たらいかんちゃー!」 それは雪山の遭難だ(-_-;)。で、私の脳の血管がプツッと切れてオダブツ。 ……なんか現実にそうなりそうでシャレにならんぞ。 仕事に出かけても頭痛と動悸が激しく、便所でもちょっと吐いちゃったので、半日で帰宅して寝る。しげも昼間なので当然寝ている。だからメシはやっぱり自分で作るんだよ(T∇T)。
『キネマ旬報』2月下旬号で、2002年度のベストテンが発表されている。 こういったベストテンと興行収入のそれとは無関係、というのはわかっちゃいるんだが、それにしても選考委員たちのアニメ無視の傾向は目に余るほどである。 以前、ニフティのオタアミ会議室で、私が「『キネ旬』はアニメを無視している」と書いたら、「昔に比べればよくなってる」と反駁された方がいた。そりゃマシになってることは私もずっと読んできてるから分ってるんだが、例えば、57名の選考委員のうち、『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ! 戦国大合戦』に投票したのはわずか5人である。 0が5に増えたからって、アニメが許容されたとは言えんてば。しかもこれが32位で、昨年のアニメの最高位だよ。 ついでだから、昨年のベストテン、及び、アニメ・特撮作品の順位がどうなってるか、書いておこう。これでもアニメが映画として認められたと言えるかどうか。
1、たそがれ清兵衛 2、刑務所の中 3、KT 4、OUT 5、AIKI 6、笑う蛙 7、阿弥陀堂だより 7、ごめん 9、ピンポン 10、とらばいゆ 11、青い春 12、Dolls 13、助太刀屋助六 14、害虫 15、UNLOVED 16、ラストシーン 17、海は見ていた 18、なごり雪 19、元始、女性は太陽であった 平塚らいてうの生涯 19、突入せよ! 「あさま山荘」事件 …… 32、クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ! 戦国大合戦 36、千年女優 47、WX�掘ゝ‘扱抻.僖肇譽ぅ弌治� 55、リターナー 61、ゴジラ×メカゴジラ 61、仄暗い水の底から 76、恋に唄えば♪ 76、名探偵コナン ベイカー街の亡霊
私もベスト20の中で見てる映画が『OUT』と『ピンポン』と『助太刀屋助六』しかないので(福岡未公開のものも多いし、ともかくしげがこういうベストテンに入りそうな作品を毛嫌いするのである)、たいした比較のしようもないのだが、少なくとも『青空侍』がこの三本に負けているとはとても思えない。 それに、お気づきだろうか? 昨年、興行収入トップだった『猫の恩返し』がただの一票も入っていないのである。『恋に唄えば♪』ですら一票入れたアホがいるというのに。 もっとも、読者選出ベストテンでも『猫』は全く票が入っていないから、『キネ旬』読者の満足度は相当低かったらしい。けれど、アレはそんなに『悪い』映画だったか? とかく教訓臭くなっていた最近のジブリ映画と違うものを作って見せたことはまさしくジブリの可能性を広げたことに他ならない。作画レベルも第一級だ。ところが『キネ旬』本誌では、例えば山根貞男が「宮崎駿のマネ」と的外れな批評をして、続く批評もほとんどそれに追随するような形になっていた。選考委員たちのほとんどにアニメを見る目などカケラもないと断じてよいと思う。 野村正昭も「『猫の恩返し』+『ギブリーズepisode2』の功績を忘れてはなるまい」なんて書くんだったら一票くらい入れろよ(-_-;)。 映画に「教訓」を求める人たちばかりだと、どうしてもこうなってしまうのである。たわいない映画を丹念に作ることがどれだけ凄いことか少しは気づけよな。
ちなみに、読者選出ベストテンでは上位はたいして変わらないが、『青空侍』は13位に、『千年女優』は23位に食いこんでいる。少しは洗脳効果があったと見るべきか。
青井夏海『赤ちゃんをさがせ』(創元推理文庫・672円)。 『名探偵コナン』なんてミステリでもなんでもない、ただのクズじゃと散々罵倒してるから、だったらオマエの考えるいいミステリってのはどんなんだよってツッコミたがってる人は結構いるかもしれない。 そういう人に一度読んでもらいたいのがNHKテレビ化のこの作品。 あの『スタジアム虹の事件簿』で、虹森多佳子というおばあちゃん名探偵を登場させた青井夏海さんが、またまたおばあちゃん探偵を創作。 しかも今度のおばあちゃんは元助産婦にして完全なる安楽椅子探偵! あ、ここで「安楽椅子探偵(アームチェア・ディティクティブ)」について説明しておくと、事件を実際に捜査するんじゃなくて、人から事件の話を聞いただけで見事な推理力を発揮して真相を見抜いてしまうっていう、天才型の探偵の総称なのね。その元祖はバロネス・オルツィの『隅の老人の事件簿』。日本でも都筑道夫の『退職刑事』シリーズなどが有名。純粋にデータのみで推理するってところがまさしく本格ミステリの神髄。 さて、物語の主人公は、見習い助産婦(今は助産師というようになった)の亀山陽奈。主役だけれども、後ろに探偵役の推定70歳・明楽知代(あきら・ともよ。なんだか名前が乱歩の明智文代夫人に似てるねえ)先生が控えているから、陽奈ちゃんは「走るワトソン役」というわけ。ワトソンというより銭形警部じゃないかってくらいにトンチンカンなことしまくってますが(^o^)。 助産婦っていうのは昔の産婆さん。つまりは自宅出産を希望する人のためのちゃんとした職業なんだけれど、病院で子供を産むことが普通になった現代では、かえって偏見の目で見られることも多い。そのせいで現実にトラブルもいろいろ起こってるみたいだけれども、この物語では一風変わったトラブルに陽奈たちは遭遇してしまう。 第一話『お母さんをさがせ』。 どうしても跡継の息子がほしい大富豪の苦肉の策とは、なんと妊娠した三人の妻(そのうち二人はニセモノ)のうち、誰か一人でも男の子を産んだらその子を自分の実子とする、というもの。そんな女性を子供を産むためだけの道具とするなんて、と怒り心頭に発した陽奈ちゃん、ホンモノのお母さんは誰だ? と探し始めるが……。 第二話『お父さんをさがせ』。 イマドキの女子高生、理帆は友達の透くんと「できちゃった婚」をすることに。でもカタブツの両親はとても許してくれそうにない。そこでわからずやの両親にナイショで子供を産む決心をする。 ところがそこに現われた二人の男は、まるで「赤ちゃんの父親は自分だ」と言わんばかりの行動を取り始める……。 第三話『赤ちゃんをさがせ』。 一番サスベンスフルな一編。陽奈の同僚、聡子が最近沈んでいるわけは、別れた元夫、宝田につきまとわれているから。折りしも自宅出産の依頼が続々とキャンセルされる。これも宝田のいやがらせのせいなのか……? 事件は、信仰宗教もからんで赤ちゃん拉致事件にまで発展してしまう。 毎回毎回、殺人の復讐の、とギスギスした物語展開が鬱陶しい最近のミステリマンガに比べて、青井さんの小説のなんと爽やかで清々しいことか。ミステリ読むなら、こういうのから始めましょうよ。
クラフト・エヴィング商會著・坂本真典写真『じつは、わたくしこういうものです』(平凡社・1995円)。 いわゆる「企画本」ってやつである。 体裁は、いろんな職業の人に取材して、その特徴を語ってもらう、という形を取っているのだが、もちろん、“そんな職業はない”。
一つめの職業。 「月光密売人」である。 小栗六郎・58歳。背広を着た目つきの悪い男が、空を斜めに睨んでいる。あの月の光を昼の日中に売る。夜売るのではないから「密売」と洒落た。そう小栗氏は語る。 シャミッソーの『影をなくした男』に登場する「七里靴」。あれを小栗氏は手に入れた。そこで思いついた「月光売り」。地球の裏側にひとっ飛び、中国の故事にあるがごとく、「杯に月を充たして」、瞬時に注文主のもとに戻ってくる。 「どなたにでもお売りします」 もう一枚の写真の小栗氏の手には、白く光る杯が。
二つ目の職業。 「秒針音楽師」。 世界で一番小さな音楽を作る人。 若林弓子さんは28歳、楚々とした美人が、木漏れ日の森の中で、小さな小さなバイオリンで曲を奏でている。 『一枚の落ち葉のための音楽』。 『一本の煙草のためのワルツ』。 ほんの数十秒、あるいは数秒で終わってしまう音楽。どうしてそんな短い局しか作らないのか? 彼女は言う。 「この世って、みんな小さな『かけら』でできていると思いませんか?」
三つ目の職業。 「果実勘定士」。 果物の品質を鑑定する人? いえいえ、「鑑定」ではなく「勘定」。 この木にはいったいいくつの果実が実るのか。 冬のさなか、一本の枯れ木を見ながら半年後の果実の数をピタリと勘定する。それが幸田紺さん、37歳の仕事。穏やかな顔の、ヒゲのおじさんである。 枯れ枝に優しく触れる幸田さんの横顔はなんだかあの宮澤賢治みたいだ。
四つ目の職業。 「三色巻紙配達人」。 三つの巻紙はそれぞれ、「過去」「現在」「未来」のためのもの。 坂口杏さん、24歳は、人の、言葉にできない思いを、赤・青・黄色の三つの巻紙に写し取り、その思いを過去のあなたに、今のあなたに、未来のあなたに届ける。 時はどうやって遡るのでしょう? 「遡る」とは「坂、登る」と書きます。そうです、そういう坂が昔から、ずっと昔からあるのです。 あなたも坂口さんに手紙を届けてほしいですか? けれどそのためには一つの条件があります。「赤巻紙青巻紙黄巻紙」って早口言葉を、スラリと言えないといけないんです(^^)。
こんな変わった職業の人が、全部で18人。 残りの人の職業だけを紹介すると、「時間管理人」「チョッキ食堂」「沈黙先生」「選択士」「地暦測量士」「白シャツ工房」「バリトン・カフェ」「冷水塔守」「ひらめきランプ交換人」「二代目・アイロン・マスター」「コルク・レスキュー隊」「警鐘人」「哲学的白紙商」「シチュー当番」。 さて、どんな職業か、見当がつくでしょうか?
この中には、確かに変わっているけれども現実にありそうなもの、現実にあってほしいもの、ちょっと現実的には無理だけれどもなんだか可笑しいもの、などなど、いろんな職業が考えられている。 でも、中でもやはり心惹かれるのは、「ホントにこういう仕事、あるんじゃないか」って思わせてしまうもの。現実から離れ過ぎてしまったら、面白くはあるけれど笑って楽しむことしかできない。 ちょっと浮世離れしてはいるけれど、ホントにありそうなもの、そのバランスが取れているのが一番面白い。
私が特に好きな職業は最後の「シチュー当番」。 名前の通り、「シチューを作る当番」なのだけれど、働いている場所が問題。 羽深月子さん、36歳のお勤め先は「冬眠図書館」。冬の間だけ開いている図書館。しかも開館時間は夜の8時から朝の8時まで、夜の間だけ。 この図書館を作った人たちは本当の本好き。けれど、仕事が忙しくてなかなか本が読めない。ついに冬の間だけ、仕事をすることをやめて、みんなで本を持ち寄って、回し読みするためだけの「図書館」を開設してしまった。 でも食事はどうするの? 寒さに震えたら? というわけで、できたのが、「コーヒー当番」「コッペパン当番」「ブランケット当番」「シチュー当番」。羽深さんは司書兼、「シチュー当番」なわけ。 実は羽深さんの当番は交代制。だってそうしないと、羽深さんの本を読む時間がなくなってしまうから!
なんだかこの一つ一つの職業をもとにして、小説か戯曲が一本書けそうだよなあ(^o^)。
CS日本映画専門チャンネルで、『白夫人の妖恋』を見る。 中国民話『白蛇伝』に取材し、林房雄『白夫人の妖術』を原作とした日米合作のこの映画、ラストの大津浪のシーンなど、円熟期の円谷英二のハデな特撮で有名なのだが、実は今回が初見。 以前から見たい見たいと思ってたんだけど、ビデオ発売もなかったし、テレビ放映もあったんだかどうか。以前、ZUBATさんに「意外に有名なのを見てないんですね」と言われてしまった。こういう「見逃し」があるから「特撮ファン」とも名乗れない。……オレ、何かのファンだって名乗れるジャンルがあるのかな(ーー;)。 映画について語る前に、ちょっと気になることがある。というのがこの映画のタイトルの読み方である。 日本映画専門チャンネルのホームページでは、これを「びゃくふじんのようれん」と読ませているのだが、李香蘭……ああ、いやいや、山口淑子の演ずるヒロインの名前は、劇中では「白娘(パイニャン)」である。だとすると、このタイトル、「ぱいふじんのようれん」と読むのが正しいんじゃないのか? 私はずっとそう読んできたのだが。 不思議なことに、劇中でちゃんと中国語で名前を呼ばれているのはこの「白娘」だけなのである。お付きの「小青」はそのまま「しょうせい」だし、主人公の「許仙」は「きょせん」である。劇中、やたら「キョセン」、「キョセン」と呼ばれるものだから、そのたびに大橋巨泉の顔が浮かんで困った。 三年後にリメイクされた東映動画版『白蛇伝』では、「許仙」は「しゅうせん」、「小青」は「しゃおちん」とちゃんと中国語読みされている。なんでこんないい加減なことしたのかなあ。 映画自体は民話が現代的なドラマとして再生されたとは言い切れず、名匠、豊田四郎の演出もなんだか大雑把である。 なにより、白娘を演じる山口淑子が既にトウが立ち過ぎている上に、やたら眉間にシワを寄せて勘定的な演技ばかりするものだからまるで美しくない。戦前の『支那の夜』のころの方がずっと美しかった。もしかして、また「中国人」を演じさせられることに内心で反発でもしていたのだろうか。 白娘に比べると、小青役の八千草薫のほうが、ちょっとロリコン入っちゃいるけどずっと可憐だ。許仙と白娘を結びつける小悪魔みたいな役割(『白蛇伝』では魚の精だか、本編では小蛇の精。原典の民話自体にその二通りのものがあるようだ)を、楽しげに演じている。恐ろしいことに小青、東映動画版とは違って、最後には主人の白娘を裏切ってしまう。愛ゆえにどうしても許仙を殺せない白娘に愛想を尽かしてしまうのだ。……って、この二人を結びつけたのオマエじゃん(^_^;)。最後まで面倒見ろよ。 他の出演者も演技派揃いで豪華絢爛。 法海禅師(徳川夢声)、宿の亭主・王明(上田吉二郎)、許仙の姉・<女交>容(清川虹子)、その夫・李公甫(田中春男)、茅山道人(東野英治郎)、役人(小杉義男・沢村いき雄)、油売商人(谷 晃)、仙翁(左卜全)。 それからクレジットになかったので驚いたのだが、ほんのワンシーンのカメオ出演で、森繁久彌が露店商を演じている。ということは、森繁、実写とアニメの両方の『白蛇伝』に出演していることになる。「白蛇伝俳優」と呼んで差し支えないのではないか(^o^)。 ただ物語はヒドイ。 白娘が白蛇の化身と知った許仙が逃げ惑って、というパターンはこの手の物語の定番なのだが、最後にこの二人は和解する。ところが和解した途端に、法海禅師に殺されてしまうのだ。殺すくらいならなんで助けたかな。で、二人は手を取り合って極楽に向かうのだけれど、これっていったい、ハッピーエンドなのかアンハッピーエンドなのか。 理解に苦しむ映画だったなあ。(2003.3.8)
2002年02月07日(木) びっくりにびっくり/アニメ『七人のナナ』第5話/『なんだかコワレ丸』1巻(矢也晶久)ほか 2001年02月07日(水) ♪それ行け、不倫不倫不倫、どこまでも♪/『萩原朔太郎写真作品 のすたるぢや』ほか
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藤原敬之(ふじわら・けいし)
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