無責任賛歌
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藤原敬之(ふじわら・けいし)

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2001年12月24日(月) イブの焼肉/DVD『三毛猫ホームズの推理』/『シベリア超特急』ほか

 休日でも真っ先に早起きするのは私だ。
 しげもよしひと嬢も、昨日の『009』マラソンで疲れたのか起きて来ない。
 一人で購入したばかりのDVD『三毛猫ホームズの推理 ディレクターズ・カット』をかけていると、少しずつゾンビが蘇えるようにしげもよしひとさんも起きてくる。

 『三毛猫ホームズの推理』は、もちろん赤川次郎のシリーズものの中でも第一等の人気を博しているものの第一作で、途中からこのシリーズを読み始めた人には、片山義太郎兄妹に、こんなハードな過去があったとは信じられないくらいであるかもしれない。
 ミステリ界に留まらず、小説、映画を含めたエンタテインメントの世界は80年代以降、どんどん軽く、薄くなっていった。赤川次郎はそういったライト・ノベル作家の旗手のような言われ方をされることが多いが、大ブームを呼んだ『セーラー服と機関銃』にしたところで、決して、軽い内容ではない。
 女子高生が殺人事件に巻き込まれたり、女子高生が麻薬密売に巻き込まれたり、女子高生が遺産相続争いにまき込まれたり、女子高生が実は吸血鬼だったり、女子高生がヤクザの親分になったり、多少、突拍子もない設定ではあっても、そこにはオトナになることの「痛み」が描かれていた。でなきゃここまでヒットはしませんって。
 ところが、赤川原作の映画化作品は数あれど、作者本人が納得したものはほとんどないのが実状だった。
 相米慎二、根岸吉太郎、井筒和幸、崔洋一、澤井信一郎、金子修介といった、錚々たる監督たちは、よく言えば個性的、悪く言えば一人よがりな連中で、「赤川作品の魅力は何か」と言うことに全く興味も関心もなかったのである。赤川次郎が認めた監督が、岡本喜八と大林宣彦という「職人監督」であったことには注目していい。
 大林に関しては異論もあろうが、「アイドル映画」を撮ることに全く躊躇していない点で、他のええかっこしい監督とは一線を画している。だからこそ『ふたり』を見て、赤川次郎は『あした』も、そして秘蔵っ子とも言える『三毛猫ホームズ』の映画化を許可したのだ。
 主演の陣内孝則、正直な話、彼については、ハデでワザとらしい「濃い」演技しか出来ないと世間は思いこまされているんじゃないだろうか。いや、私も、この『三毛猫』を見るまではそう思ってたのだ。
 だって、片山義太郎って、血を見ると貧血起こす「お嬢さん」って仇名がついてるくらいの小心者って設定なんだよ? 陣内にそんなん出来るなんて思わないじゃん。
 ところが、初登場シーンからして、彼がまあ、実に繊細なのだよ。
 「お嬢さん!」と声かけられて、「……はい?」と振り返る表情の情けないこと!
 う、うまい! これぞ片山義太郎! 石立鉄男、どっか行け!
 役者として評価されていない人間に息を吹きこむ演出の冴えを見せられる監督が、今、どれだけいるというのか。まあ、さすがにここまでたくさん映画作られると、ちょっと閉口気味ではあるのだけれど、大林映画、まだまだ捨てたものじゃないですよ。
 栗原警視役の役者さんが実にイイ感じだしてんだけど、よく見る顔なのに誰だかわからないんだよなあ。誰か教えてくれ。

 密室トリックについて、よしひとさんが鋭いツッコミを入れるが、丁度二十年前、大学の推理研で先輩と論争したことがあったのを思い出した。
 私は「肯定派」だったんだけどなあ。やっぱりビジュアルで見せるとムリっぽく見られちゃうかなあ。チェスタートン式の「現実には起こりえないけれども虚構の上ではリアリティがある」トリックとしては許容範囲だと思うんだけれども。


 しげたち、芝居の小道具の猫耳などを作っているので、側で『マジンカイザー』『キカイダー01』『ナジカ電撃作戦』などをかける。
 ところがつい、調子にノってとんでもないものをかけちゃったのがウンの尽き(^_^;)。


 DVD『豪華愛蔵仕様 シベリア超特急 特別編集版』。
 製作・監督・原作・脚本、マイク水野。
 そう言えばアメリカじゃそう名乗ってたんだよなあ、水野晴郎。
 もしかして、ハーフかクォーター? 単にそう名乗りたかっただけ? ほぼ99.999%、後者って気はするが。
 なんで「特別版」かっていうと、反戦色の強いダブルマーダーバージョンと、ラブロマンス中心のハンガリーバージョンとどんでん返しが二つあるアップテンポのアメリカンバージョンの三つを全部収録してるからだと。
 水野晴郎のコメントに「みなさまのおかげで大評判の」とか「どうか三つとも見比べてください」とか書いてるが、そんなに自信があるのか(^_^;)。 全部はとても見切れないので、アメリカンバージョンをかける。

 それにしてもウワサには聞いてたが、聞きしに勝る出来だなあ。
 出来がいいとか悪いとかじゃなくて、壮大な勘違いで出来ているとしかいいようのない作品。もしかしたら、どうせ何作ったって貶されるんだから、最初っから「怪作」にしちまえ、という開き直りで作ったんじゃないかって穿った見方すらしたくなってくる。
 一応、パッケージに、「この映画の結末は決してお友達に話さないで下さい」と書いてあるので、伏せとくけどね、伏せる価値ないぞ、このどんでん返しは。
 じゃあ、そのどんでん返し以前がミステリとして出来がいいかというとさにあらず。

 あのね、ぼくね、ばかだから、よくわかんないんだけど、れっしゃのなかでひとごろしがあります。
 どんどんひとがしぬけれど、これはこうかんさつじんだということがはじめからばれてました。
 で、どんどんひとがしんでいって、のこったようぎしゃはふたりだけなんですが、それじゃあ、このふたりがはんにんってことなのかなあ、とおもったら、そのとおりでした。
 これがみすてりってことなんですか?

 だいたいなあ、密室列車で交換殺人やる意味がどこにあるんだよう。
 遠距離で、時間もずらしてなきゃ、意味ないだろうがよう。
 『オリエント急行殺人事件』と『見知らぬ乗客』を合体させたらミステリになると思ってんのか。
 『オリエント』が名作たりえたのは、犯人が限定されやすい状況にもかかわらず、あえて列車内の殺人を選んだところに犯人の動機が隠されてたんであって、ボンクラにそうそう作れる設定じゃないのだ。何を血迷った水野晴郎。
 しかもなんだよ、あの真犯人の挙げ方は。
 脚本以外にもセットのしょぼさとか役者の未熟さとか、いくらでも欠点は挙げられようが、とても書ききれるものではないし、何より、水野御大の棒読み大根演技の前には全てがかすむのだ。


 結局、よしひと嬢に、「ミズノ、何か勘違いしてるよ〜」と頭を抱えさせてしまった。今度来られたときには、黒澤の『野良犬』でも見せて、口直ししてもらおう。


 夕方、よしひと嬢が帰られるのと入れ代わるように、ぴんでんさんからが連絡があり、パソコンを設置してもらう。
 これでしげと私と、交代せずにパソコンが扱えるようになったのだ。ありがたやありがたや。
 ウチに来るなり、ぴんでんさん、本棚を眺めて「オタクの部屋ですねえ」と仰るが、あまりレアものはないのでお恥ずかしい限りである。
 で、いきなり『シベ超』やら『八俣大蛇の逆襲』を手に取られるのは、人間としていかがなものか(^o^)。
 「玄関先にまで本が!」と笑われてしまったが、ベランダにも洋画ビデオがはみ出ていたことまでは言い忘れたのであった。


 その場で誘われて、天神まで出かけて行って、エロの冒険者さんを交えて飲み会。
 着替える間もなく、普段着の作務衣のままだったのでさすがに寒い。ジャンパーだけを羽織って、下はサンダルで、という格好なので、天神をうろついてる時はさぞや浮いてるように見えるかもしれないが、天神にはヘンな人も多いので実はさほど違和感はないのだ。
 仕事で付いて行けないしげから、「エロさん、お見合い相手のMさんとどうなったのか教えて!」とウルウル目で頼まれていたが、そんな人のプライバシーについて突っ込んだことなんて聞けないので、ちょっとだけ訊く。
 どうやらアレがアレしてああなったらしいのだが、ホントはアレをああしてああすればよかったんじゃないかとか、もしかしてアレをああしてああなってるのかも知れないけどそのへん隠してんじゃないかとかいろいろ想像するが、まあ、エロさん自身が日記に書いてること以上のことは書けないので、あとは勝手に想像するように。

 店の名前は失念したが、七輪の炭火で肉を焼く店で、肉の質も悪くなく美味い。
 気がついたら、やっぱり「今度のゴジラはね〜」なんて話になる。正直な話、オタアミ会議室にだって、余りこき下ろした書き方はしたくなかったんだが、あんまり絶賛が多いと、バランスとるのに逆の意見ももっと書かなきゃならないなあ、という気がしていたので、結果的に、エロさんの意見を否定するようなかたちになってしまい、まずはそのことについて謝る。
 エロさん、「有久さんの意見はいいんですよ、○○○○○○○○が『○○○○○○』と比較して○○○○○なんて言いやがるのが許せなくて」と、激烈なことを仰る。
 まずはやはり、どんな映画でも「語られる」ことにこそ意味がある。
 語られもしない映画は「存在しない」のと同じだ。

 「有久さん、今日は語りますねー、いつもはやっぱりセーブがかかってんですか?」と聞かれるが、言われてみて初めてそうだろうなあ、と思う。
 いつもはしげが隣にいるので、二つの意味でセーブがかかってしまうのだ。一つはしげをほったらかして自分ばかり楽しく喋ってたらあとでヤキモチ焼かれるなあ、という自己保全と、しげが飲みすぎてぶっ倒れないようにという監視の意味とである。
 だって、宴会の時のしげって際限ないし。
 しげが加わってから、AIQの会合でワリカン代が1割くらい増してんじゃないかと心配なのである。

 エロさんから、今日はフランスのオタク、セバスチャンがテレビに出る日ですよ、と教えられたが、うっかり失念して、ビデオを仕掛け忘れていた。
 オタクに対して偏見の念を抱かせるようなものじゃなきゃいいがなあ。


 ぴんでんさんにウチまで車で送って頂いたが、車中のふとした会話で、ぴんでんさんがまだ『ガンドレス』を御覧になってないことを知る。
 知ってる人は知ってるが、士郎正宗キャラデザインという振れ込みで劇場公開された本作、封切日に作画が間に合わず、線画に色塗っただけの状態のカットがてんこもりだったのだ。
 一応、後で完全版が作られたのだが、DVDはその劇場版と完全版を両方収録しているというもの。……笑ってもらおうということか?
 スタッフも随分途中で逃げたらしく、パンフレットにはスタッフ表のところにシールが貼ってある。
 「ウチにDVDありますが、御覧になりますか?」ということで、またまた、とっ散らかった部屋にぴんでんさんをご案内(^o^)。

 結婚当初は、部屋に人が来るたびに、「なんだこの汚い部屋は(と言っても今よりはずっとキレイだったが)」と思われるのが恥ずかしくて、しげに「どうして片付けないんだ!」と怒鳴りまくっていたが、今やもう、私は枯淡の境地に入りつつあるのである。
 ああ、しげはこの先一生、私がどんなに怒っても悲しんでも苦しくても辛くても、それでも家事はしないやつなんだなあ、と悟ってしまったからだ。
 誰か時給千円でウチの部屋、片付けてくれる人いないか。

 せっかく来て頂いたのだから、と、押入れの奥から、秘蔵のソノシートなんかを取りだし、お見せする。親に相当数捨てられているので、秘匿して残っているものはごく少ないのだけれど、今見るとこりゃレアだな、と思えるものも結構ある。
 アニメ化以前のプロモ版『タイガーマスク』主題歌は、さすがのぴんでんさんもご存じなかったようだ。
 「猛虎のマスクに光る目は〜、悪役ど〜もを一握り〜、リング狭しと荒れ狂う〜、岩石落としだ飛行機投げだ〜、タイガーマスクに〜、敵はな〜い〜、僕らの夢だ、チャンピオーン、僕らの夢だ〜、チャンピオーン♪」(記憶だけで書いてるので、細部に多分間違いあり。「一握り」ってことはないよなあ。「ひと睨み」か?)
 という歌なんだが、知ってるやつはそうそういまい。いかにもバチモンな歌詞だが、作詞はちゃんと梶原一騎なんである。つまりは梶原一騎自体がバチモンだったなによりの証拠という価値があるわけなのね(^o^)。
 ともかく当時のソノシートには必ずドラマが付いており、私が持ってるのでも、『鉄腕アトム』『宇宙少年ソラン』『ビッグX』『ゲゲゲの鬼太郎』『ウルトラQ』『ウルトラマン』『ウルトラセブン』ほか、テレビの再編集もの、新録ものが数十枚はある。
 ぴんでんさん、「こういうのこそ、MDに落として保存しておかないと!」と仰るが、さて、今でも聞けるものがどれだけあるだろう。
 けど、ふと思いついたのは、当然こういうドラマには絵が付いてないのである。マッドテープよろしく、適当な絵をこちらででっち上げて、もとアニメとは似ても似つかぬ絵で紙芝居風に仕立てたら、結構笑えるものができるんじゃなかろうか。音がちょっと割れてる方がかえってレトロな感じが出るだろうし。
 AIQのみなさんの秘蔵のものを集めて傑作選作ったら、結構面白いものができるんじゃなかろうか。そのときは『日本語版モスラのテーマ』も出しますよん。

 『ガンドレス』には、ぴんでんさん、充分堪能していただけたようである。
 このように、劇場公開に制作が間に合わなかった例というのは、あと高畑勲の『火垂るの墓』ってのがあったが、あれは線画であったにもかかわらず、絵として見られた稀有の例であった(高畑作品は好みじゃないが、その作画レベルはやはり評価せねばなるまい)。
 『ガンドレス』はその完成版ですら演出が凡庸以下である。『ダーティペア』の新シリーズOVAを演出した時は、矢田部勝義監督、結構いい出来のもの作ってたのに、どうしちゃったのかなあ。
 しかし、こんなどーしょーもないアニメまでわざわざ購入してるもんだから、ぴんでんさんには「幅広過ぎですよ」、なんて言われちゃうのだ。
 ……でも、クズをクズとして評価していく、あるいはクズの中にほんのかすかな宝石を発掘する、そういう姿勢こそが、我々の文化の意味を、人類の行く末を望見する基本的な態度と言えるのではないか。
 とか言い訳してるのはなんだかんだで自分のオタクとしての薄さを誤魔化してるだけなんだよね、どうもすみません。

 しかし、クリスマス・イブが男3人の飲み会とは侘しいなあ。
 おおっと、これは禁句だったかも。

2000年12月24日(日) 昼寝したので今日の休日は短かった/『ルパン三世』7集(山上正月)



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