終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2008年09月14日(日)

神々とて殺戮されたことはある。
ただ殺されたままではいないだけだ。

メドゥーサとアルテミスを見た。
彼女たちはいずれも古いローマの生きた神だった。
メドゥーサは神聖怪物として壮麗な聖堂の柱頭を飾り、
そこで行われたすべての合議と争いの証人であった。
人々は言葉を翻そうとする都度に、この恐るべき怪物を思い出しただろう。

アルテミスは崇められる女神として神殿の奥に秘められていた。
あらゆる狩人がその無限の生み育てる原理である女神に額き、
祭礼においては己が精液の袋をちぎり取って捧げた。
その石の冷たい、凄まじい眼差しで、女神はそれ以上のものも見たであろう。

聖堂はいまはすでになく、アルテミスが立つのは博物館だ。
かれらを殺戮したのは誰であったろうか。
襲いきた異邦人かもしれず、ただ時であったかもしれず、
忘却やそのほか無限に等しい人間のこころの動きのどれかだったか。
いまは誰も覚えていない。だというのにかれらはいまもある。

ローマよ、とわたしは呼びかけない。
女神よ、怪物よ、とも呼びかけない。
わたしはただこういうのだ。
あなたがたはまだ生きている、ここに生きている!


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