終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2008年06月25日(水)

サナギの中で

あの乾いた、小さな角のような殻の中で、
モンシロチョウと青虫のどちらでもない生き物は、
いったいなにを夢に見るのだろう?

かれはもう青虫ではない。
そしてまた、チョウでもない。
記憶が夢を産むなら、かれは青虫であったころの夢を見るだろう。
ホルモンやそのほか、体と小さな脳の機構そのものが夢を産むなら、
多少なりチョウじみ、多少なり青虫じみた夢をみることになるだろう。

それともあの眠りは、あの死に近いような深い眠りは。
体の根本から作り変えられるあの変身の眠りは。
チョウでも青虫でもその中間段階などというものでもまったくなく、
むしろ一個の小さな生き物の夢というよりは、
生命のすべての根源に根差す、大きなものの夢なのだろうか。

ああした眠りを人間は知らない。
日ごと夜ごと育つ赤ん坊さえ、あのような死と再生の眠りを眠りはしない。
その眠りから目覚めたときにこれまでの人間でない何か、
たとえば惑星や夜明けや土星の淡い輪になっているような、
それとも一羽の烏か、目には見えないミジンコになっているような、
ああそんな眠りの中に私はいる。

目覚めはどこだろう。


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