終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2007年11月29日(木)

 楽しく抜き放たれた白刃の刃こぼれが陽光にさっと輝いた。
 「続け、雑兵ども!」
 若い長の叱咤に、軍勢の笑いがどっとあたりをどよもした。そして馬蹄の響きはさらにその歩みを強め、険しい崖を矢のごとくに走り下りていった。
 金髪のその一団は笑いつつ殺し、歌いつつ殺した。血煙りは太陽を陰らせ、切り落とされたひとの手足や首は枯れ葉のように大地を覆った。

 それはその幾世紀にわたって北の海の沿岸に見られた光景だった。かれら金髪碧眼の蛮族たちは一帯を恐怖に陥れ、いかなる王もかれらを手なずけることはできなかった。和平を結ぼうにもかれらは寸豪の地も支配しようとはせず、またどれほどの宝物もかれらを満足させはしなかったからだ。そして死の恐怖もまたかれらを後へ引かせることはできなかった。

 このような記録がある。
「殺せ、死ね。老年は恥辱ぞ」
 岬に追い詰められた兵団は笑いながら戦い、四方八方から射かけられる矢の中で笑いながら一人残らず殺された。一人たりとも投稿をよしとせず、敵に背を向けて海に落ちたものもまたいなかった。
 そして次の冬には殺されたものに倍する兵団が押し寄せて、また歌った。
「戦士の死をよこせ、さあ俺たちにもよこせ。今日という日、俺たちは戦士の死を死にに来た」
 恐れた人々は四散し、町は皆殺しの憂き目にあった。わずかに逃げ延びた修道士によると、かれらは住人を殺しつくした町の中で歌い、泣いたという。
「こいつらは物惜しみした。俺たちに戦士の死をくれなかった。先に来たものたちにはよこしたのに、俺たちにはくれなかった」

 歌いつつ進軍するかれらに、沿岸の王国はなすすべなく震え、殺され、またときに撃退に成功して、数世紀は瞬く間に過ぎた。かれらはのちにケルトと呼ばれた。いまなおその名は狂気の語源として残る。


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