- 2007年10月29日(月) わたしはもう眠っている。 太陽は高く、陽炎はゆらゆらと平原から立ち上っていた。その向こうからあざやかな緋色の格子縞の雌ライオンがわたしの方に歩み寄ってきた。身の危険を覚えなかったわけではない。しかし彼女の歩みはゆったりと落ち着いて、きめの細かな赤茶けた砂塵にはひとつひとつの足跡が刻印のように深々と捺されていたから、わたしはあわてるのをやめた。 彼女は果たして礼儀正しく長い尾をひとつ振ると、穏やかなまなざしで私を見上げ、旅の方がわれらの貧しい王国において不自由なされませんよう、と謙遜をこめた挨拶をした。そこで私も頭を下げて、この美しく果てしない空虚の砂漠の女主への挨拶が遅れたことをわびた。 わたしと彼女は互いの礼儀正しさに良い気持ちになり、彼女はさらに丁重に言った。子供たちが遠来の客人の祝福を受ければ、生涯にわたって栄えるといわれております。偶然にもわたしには一子があって、まだ模様もない幼い子供です。よろしければ、あなたさまを我が家の客としてお迎えする光栄を与えていただけませんか。 -
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