終わらざる日々...太郎飴

 

 

- 2007年09月01日(土)

 王は微笑して座し、だが傍らに置かれた雪花石膏の花瓶よりも色を失っていた。わたしは玉座へ続く階段をゆっくりと上り始めた。
「汝はここまで来た」
 王は言った。その言葉はどこか遠くから響いてくるようだった。
「遠い旅路でございました。また険しくもありました」
 わたしは言った。王の青味がかった目がわたしを見た。
「然り、七つの王国と三つの山脈、二つの大河がある。よもや邂逅するとは思わなんだ。然り、そのようなことは望みもせなんだ」
「三年の月日がありました。ですが参りました。ここに、御前に」
 わたしは王の前に立ち、落ち着き払って言った。
「参りましょう。そう申したはず、あなたを連れに行くと。最前に」
「さよう、汝は申した」
 王もまた間をおかず答えた。だが鋭い葛藤がそのうちにあるのは明白だった。その手は細かに震え、その目は空に向けられていた。
「参りましょうと申し上げまする。世界の果てを超え、世紀の垣根を超えてともにと申し上げまする。されど強いることはできませぬ。行けばあまたの災い、氷雪と炎と鉄の惨禍はわれらの運命のうちに定められましょうゆえ。そしてこの身はあなたをそれらすべてから守るとは申せず、ただお側にあることをのみ約しうるにすぎませぬゆえ」
 王は目を閉じた。ガラスの器の中の炎の燃えるよう、王のうちに揺らぐものは目に見えるようだった。永い沈黙のあと、王が再び目を開いたとき、一切の不安なものは跡を絶っていた。王は笑った。明るい笑いであった。
「拒むことはできる。だが拒み得ぬことを予の心は知っている。去ることもできる。だが去り得ぬことを予の心は知っている。予はすでに汝の前に開かれ、汝の手は触れるより先に予の心を得ている。汝の申し出は言われる先に予の心を肯わせている。然り、運命は汝に予の鍵を与えた」
 わたしは答えた。
「あなたを愛しているのです」
「然り、それこそが鍵だ。そして予の心は汝の言葉に先立ってこう言っている。予もまた汝を愛していると」
 王は答えた。そしてわたしは手をさしのべ、王は取った。


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